日常 球技大会
果実好樹高校、グラウンド。
白球が宙を舞い、校外まで飛んでいく。
それを見つめる、各守備。
それをよそにダイヤモンドベースを回る華。
…只今、球技大会、女子ソフトボール、試合中。
ホームベースを踏んだところでクラスメイトが集まってくる。
「凄いじゃん華!!どうしたの!?」
「まぐれだよ、まぐれまぐれ、ははは…」
(…なんでホームランなんて打ってんだろう?上半身使うスポーツは得意じゃないはずなのに…神憑になったから?)
バットを次のバッターに渡し、ベンチに戻る。
ベンチには柚留がいた。
「凄いね華、ホームランなんて」
「あ、柚留、うん、自分でもびっくり」
「…あのさ、華」
「ん、何?」
「最近、水野君と仲いいね」
「え!?そんなこと!?…」
(あるかもしれないけど…)
一呼吸置いて。
「…別に普通だよ」
「そう…」
(やばいなぁ…柚留、誤解してそう…)
「本当に普通の友達だよ?」
「友達…それでも私よりは…」
「柚留!」
「…ごめんね、変な事言って、別に水野君と付き合ってるわけでもないのに」
「柚留…」
「もしかしたら、嫉妬してたのかも、水野君と仲がいい華を、そして…華と仲がいい水野君を…」
「え?」
『アウト!チェンジ!』
「あ、チェンジだ、行こう華」
「…うん」
…その後、華の活躍で、あれよあれよと勝ち進み、ついに決勝戦。
(トーナメント形式です。)
「今年はうちのクラスが優勝できるかも!?」
「それもこれも鏑木さんの意外な運動能力のおかげだね」
(意外って…)
クラスメイトの言葉に心の中で小さく突っ込む華。
「でも次の相手が…」
「ねぇ…」
口々に言いながら、トーナメント表に目を向けるメンバー。
2―Bの決勝の相手、現女子ソフトボール部の部員でほとんどのメンバーが構成された優勝候補、3―E。
「あら、貴方達が決勝の相手?」
今では漫画でもあまりお目にかかれない、縦ロールの髪型、手には扇子を持った女性が、お付きのような人を数人引き連れ、2―Bの前に現れた。
…瀬条薫子、生徒会副会長兼、水野君ファンクラブ会長。
名家のお嬢、人呼んで平成のお〇夫人。
『出た…』
その場にいた、3―E以外の生徒全員が同時にそう思った。
「あらあら、よく見れば水野君のクラスじゃない?」
「どうもこんにち…」
「どうしましょうか?水野君のためにわざと負けてあげるのもいいんですが…」
あいさつは聞いてなく、なにやら一人ぶつぶつと考え始める。
「そうですわ!こちらが勝ったら水野君を今日一日預からせていただきましょう」
『はあ?』
なにを突然馬鹿を言ってるんだこの縦ロールばばあは。(2―B女子一同)
「そうですわ、それでいきましょう、ねぇみなさん?」
『ナイスアイディアですわ』
『さすが薫子さん』
お付きの方々が次々と賛同する。
「ではそういうことですので」
おーほほほ、と高笑いをしながら薫子プラスお付きが去っていく。
「あのくそババァ!なに勝手な事言ってんのよ!」
「しかもこっちには了承とってないし!」
「負けられない、負けちゃいけない!」
一気にヒートアップする2ーB女子。
(恐ろしい、水野君効果…)
唖然とする華、その手をがしっと掴む手が。
「絶対勝とうね!華!」
柚留だった。
(柚留まで…)
場所は変わり、体育館。
こちらは、男子バスケ、現在準決勝。
(右!)
「阿呆、左だ」
迅は複数のフェイントを使い、ディフィンスを抜く。
そのまま、ゴールに向かって飛ぶ。
「「させるか!」」
二枚の壁が迅の行く手を阻む、が、迅は後ろにボールを投げる。
そのボールの先には戒。
「ナイスパス、迅」
戒はお手本のようなフォームでシュート。
ボールはリングを綺麗にくぐった。
『ピー!』
「試合終了、18対2で2―Bの勝ち」
「うっし、勝った!」
「やりましたね」
「本当にあいつら、全員バスケ部か?弱すぎる」
迅の言葉を聞き振り向く、バスケ部で固めたのに負けた3―A。
「お、おい、やめろ平。すんませんでした!!先輩方!!」
止めに入る男子。
加藤智成、2―Bのクラスメイト。
バスケ部所属。
「たくっ、お前には先輩を敬う気持ちはないのか?」
「…ないな」
「はぁ…見ろ、先輩方を」
智成が3―Aメンバーを指す。
「…俺達弱いのか?」
「…言うなよ、次の大会、不安になるだろ?」
「…いいよ、所詮いっても予選二回戦止まりだし…」
見るとくら〜いオーラをかもしだし始めている。
「あれでは一回戦で負けるな」
「あのな〜」
「まあまあ、それより次は決勝戦ですね」
「これで勝ったら俺の人気がうなぎのぼりだな」
ちなみに2―B、メンバー。
水野戒、雨宮蕾、平迅、高枝亮、加藤智成。
「つーかお前ら、うまいからバスケ部入れよ」
「うーん、いろいろ用事があるから…」
「右に同じですね」
「団体行動は好かない」
「馬鹿だなぁ、脳ある鷹は爪を隠す的な格好よさが使えないだろ」
「…お前らみたいな奴が運動部に入れば、この学校もそっちで有名になるのにな」
「それより、決勝はどことだっけ?」
「うちのクラスだ」
突然、話に介入する金髪鼻ピアスの男。
「竜助?じゃあ2―G?」
「おうよ、今年は真面目に優勝狙いだ」
「へぇ、お互い頑張ろうね」
「ああ、じゃあ試合でな」
竜助は自分のメンバーの元に戻っていく。
「おいおい、2―Gかよ!」
「ん?どうしたの亮?」
「ふ、この馬鹿は2―Gが恐いんだそうだ」
「馬鹿って言うなや!」
「恐い?なにがですか?」
「ああ、お前は転校してきたばかりだからな、見ろ!あの集団を!」
と、2―Gを指差す。
「金髪、ピアスはスタンダート。リーゼントやそりこみは当たり前。まさに不良の典型ではないか!」
「は〜、背ぇ高いですね、これはマッチアップ大変ですよ」
「注目するとこ違う!!」
「確かに、全員185は越えてる、こちらの平均身長を軽く上回っているな」
「2―Gは意外と大きい人いるからね」
「あの身長…うちのバスケ部に欲しいな」
「え!?俺の意見全面無視!?」
「う〜ん、ここは迅のドライブを中心に中重視でいってみる?」
「いや、水野の3Pで外を主にしたほうが…」
「どっちにしろ速攻は大事ですよね」
「ふ、所詮は素人だ、相手にならん」
「もしもし?俺の存在消してる?」
「まぁ、このチームならそうそう負けないですよ」
「本当、お前らとでたら地区大会も楽勝だよ」
「それは言い過ぎだよ、智成」
「確かに楽勝だがな」
「おーい、聞いてるかい?」
『決勝、2―B対2―G、でる奴はコート中央に整列しろ』
審判こと、小津先生の号令がかかる。
「よし、行こうか」
五人はコート中央に向かう。
内一人は落ち込みながら。
…コートには2―B、2―Gのメンバー、審判。
そして周りにはギャラリーが集まっている。
『水野君頑張って〜!』
『てめぇら!!負けんじゃねえぞ!!』
『迅様〜!!』
「…あー、決勝は十五分、フルコートで行う、なんか質問は?…ないか?じゃあ試合を…」
「ちょっと待ったー!!」
全員、声がした体育館入口付近に目を向ける。
そこには、白髪をたたせた男。
『…し、し、白鬼だ〜!!』
男に気付いたギャラリーの一人が、悲鳴のように叫ぶ。
『白鬼って、ここらへんの不良を三日でシメたってあの!?』
『俺は五十人の暴走族を一人で潰したって聞いたぞ!!』
『つか、意外とちっちぇ〜』
『馬鹿!聞こえたら殺されんぞ!!』
「ふっ、俺も有名になったもんだ」
周りが畏怖の声をあげるたび、満足げな顔をする、白鬼こと風見優(身長159cm)。
「知りませんでした、優って有名な不良なんですね(小声)」
「うん、まあ、ほとんどの噂に尾ひれがくっつきまくりだけどね(小声)」
戒と蕾がこそこそ話してると、優が小津に近付いて行く。
「審判、選手交替、こいつと俺」
と、一番近くにいた2―Gの男子を指差す。
「てめぇ!!なま言ってんじゃねえぞ!!この…!!」
『ゴシャ!!』
音ととも優の拳が指を差された男子の顔面にめり込む、男子は鼻血を噴き出しながら倒れる。
それに近付く小津。
「あー、こりゃ駄目だな、うん、交代だな」
淡々と語る教員、小津春子。
こらこら、アンタ本当に教師か。(良識ある生徒一同)
「って、交代はねえだろ!!」
高枝が突然叫ぶ。
「何故だ?」
「何故って!そいつうちの学校の生徒じゃ…」
「生徒だぞ、2―Gの」
「は?いや、でもバスケに…」
「登録してあるな、バスケの登録人数は最高七人だし」
「え?いや、だけど…」
「うるせえ奴だな、ぐちぐち言ってっとツめるぞ」
睨みをきかせて言う優。
その眼光で全身の血がさーっとひく感じがした高枝。
(…ツめるって…あれをですか?…)
「そろそろ試合始めていいか?高枝、風…」
風見と言いかけた小津の口を瞬時に塞ぎ、そのまま体育館隅に小津を連れていく優。
「先生よ、俺の髪が白い時は名前で呼ぶなって約束したよな?(小声)」
「したかそんなの?」
「しただろ!!なんのために数学で学年トップをキープしてると思ってる!?(小声)」
「ああ、ああ、そんな約束してたな、確か数学で学年トップになったら名前で呼んじゃいけないんっていう、すっかり忘れてたよ」
「忘れんなよ!!」
「すまんすまん、気を付けるから許せ」
「たくっ、そんなんだからいまだに独し……すみませんすみません、ごめんなさい許してください、お願いですからこのアイアンクローをはずしにぎゃああぁぁぁぁ!!!!」
小津先生の手によって、メリメリと優の頭が軋む。
これと優の断末魔を聞いた生徒達は思った。
ああ、この人の悪口は言っちゃいけない、と。
……二分後。
それぞれのメンバーがコートに入る。
コートの中央には迅と優。
その身長差、約20cm。
「ほう、その身長でジャンパーか」
「へっ、跳ぶことに関しちゃ負ける気がしねえんでな、つか話しかけんな、こっちはまだ頭がガンガンしてんだ」
「ふっ、それは自業自得だろう」
「うるせえよ」
「あー、始めるぞ」
ボールを持ち二人の間に入る小津。
ボールは空中に高く放たれる。
優と迅は跳ぶ体勢を取る。
ボールが落ち始めた瞬間、二人はほぼ同時に跳ぶ。
先にボールに触れたのは優の手だった。
「なっ!?」
優はそのままボールを後ろにはじく。
そのボールを取ったのは不良A。
「ふはは!ボールはこの高橋が取った!」
…もとい高橋。
高橋は相手陣地へドリブルを始めた、がそれを蕾がすかさずすりとる。
「しまっ…!?」
「馬鹿!!俺が跳んだ意味ねえじゃねえか!!」
「ああん!?」
互いにガンを飛ばしあう優と高橋。
「お前ら!言い争ってねえでディフィンスに…!!」
竜助が言いかけた瞬間、蕾は電光石火の速さでレイアップシュート、ボールはリングをくぐる。
「ナイス、蕾」
「やるじゃん、かま転校生」
「だから、おかまじゃないですって」
和やかなムードの2―B、それに対して2―Gは…。
「お前のせいで先取点とられたじゃねえか!!」
「ああん!?調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
いきなり崩壊。
「てめぇらやめろ!!」
竜助が一喝する。
「一応、優勝狙ってんだ、最低限のチームワークをだなぁ…」
「ちっ、わかってるから竜助、ボールよこせ」
「…ほらよ」
竜助は優にパス。
と同時に優は一気に2―Bの3Pラインまでドリブル。
「…俺はイケてる、俺はカッコいい、俺は凄い、俺はモテる、俺は恐いものなんてない…」
そこに立ち塞がるのは自己暗示中の高枝。
「…うっしゃあ!!来いや!!」
威勢良く声をあげる高枝だったが、するりと抜かれる。
しかしすぐ後ろに智成が控える。
体勢を低くし、抜かれにくくしている。
それを見た優は右の方に追い付いていた味方、不良Bにパス。
不意にパスをされ、少し驚いた不良Bに優は
「シュートォ!!」
と、叫ぶ。
不良Bはすぐさまシュート、しかし、あせってやったため、フォームがバラバラである。
コート上の全員は、誰もが入らないと思い、ゴール下に急ぐ。
が、優ただ一人はそのままゴールリングにジャンプ。
優は有り得ないくらい跳び、リングに当たってはじいたボールをそのままダンクする。
優はかなり得意気な表情をうかべてた。
そんななか、戒はのほほんと、落ちてきたボールを取り、2―Gの陣地におもいっきりぶん投げる。
そこにはいつそこに居たのかわからない、迅。
気付いた時には遅く、迅はボールを取り、お返しと言わんばかりに豪快なダンクを決める。
迅は振り向き、優を指差す。
「調子に乗るな」
…時間を少し遡り、グラウンド。
私、鏑木華、高校二年生です。
今は球技大会の真っ最中。
私が参加したのはソフトボール。
なんと、決勝戦まできてしまいました!
でも、相手ピッチャー(瀬条薫子先輩)の球が速すぎて、仲間はみんな打てず、一回の表はノーヒット。
(ちなみに私は五番バッター)
そして、一回の裏。
私のチームのピッチャーは打たれまくり。
気付いたら満塁。
そんな時、ピッチャーが、タイム、と言って私の方に駆け寄って一言。
「鏑木さん、後は任せた、お願い!」
「へ?」
…と、いう事で、私は今、ピッチャーマウンドに立っています。
……なんで?
続く
球技大会です。只今脱線中です。
息抜きです。
一応学校のイベントも書いていきたいのです。
……ごめんなさい、嘘です、次の場面までにもう二、三話欲しかったんです。
球技大会は次話で終わりにするつもりです。
後、華は元々運動はかなり得意な方です、ついでに高枝も。