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神憑  作者: 光風霽月
7/17

協会

話はほんの少し遡る。

(え〜と、アトラスアトラス、あ!あの店だ)

駅前の通り、よく見ないとわからない場所にそこはあった。

華は店に入る。

店内を見回すとそこはどこかレトロで、懐かしい感じの雰囲気だった。

「いらっしゃい」

カウンターから声がかけられる。

華は声の方に向く。

そこには意外と若い、恐らく二十代前半の茶髪の男性がいた。

華はカウンター席に座る。

「お客さん、初めてだね」

「あ、えと、友達にこの店で待ってるように言われて、いいですか?」

「へぇ、待ち合わせか、珍しいねぇ、この店そんな流行ってないのに」

(ああ、確かに、客、私しかいないし)

「さて、ご注文は?」

「え?じゃあカフェオレください、アイスで」

「あいよ、はいおまち」

「早っ!!」

「いや丁度ね、飲もうと思って作ってたんだよ、これが」

「そうですか…」

華は出されたカフェオレを一口飲む。

(…おいしい、すっきりしてまろやか、後味もいい)




…戒達を待って二時間後。

(…遅い、本っ当に遅い、まさか負けるなんてないよね?いやいや、大丈夫、いつもちゃんと勝ってき…いやもしかしたら今日は本当に…)

「…ゃくさん、お客さん、お客さん!」

「はい!?」

「大丈夫?」

「え?」

「いやなんか、青ざめたり落ち込んだりしてるかと思ったら急に明るくなったり、かと思えばまた落ち込んだり、なんか心配事でもあんの?」

「え、いや、友達があまりにも遅いんで、つい」

「あー確かに、お客さん来てからかなり経つもんね」

(本当に大丈夫かな…)

「おや?誰か来たね」

その言葉を聞き、華は入口の方に向く。

入口が開くと、そこには戒と蕾、病院服で包帯ぐるぐる巻きの優がいた。

「ごめん、鏑木さん、すっかり遅くなって」

「…いや…それはいいんだけど、風見君のその格好は?」

「ああ、これはですね、虎袁にぼろぼろにやられて病院で治療を受けて全治二週間と言われたのに病院を脱け出した結果の姿です」

「え!?てことは風見君負けたの!?」

「負けてねえよ!!」

「勝ってもないですけどね」

「あれはほとんど勝ちだろ!!」

「いえいえ、勝ちというのは相手に負けと認めさせることですから」

「勝ちだって言って…!!…痛ぅ〜…」

「ほらほら、あまり大声で叫ぶと傷が開きますよ」

「…この野郎、治ったら覚えとけよ…」

「はは、なかなか面白い友達だねぇ、蕾君?」

突然、マスターが口を開く。

「あ、波弖那支部長、久しぶりです」

「え?支部長?」

「え?波弖那?」

華と戒が同時に言う。

「自己紹介しとこうか、俺の名前は波弖那零(はてなれい)、東西神憑協会日本支部支部長兼、関東支部支部長、ついでに東西神憑協会の創設者だ、よろしく」

「マスターが、協会の…」

「驚いた?俺も君の友達が蕾っていうのには驚いた。君の名前は?」

「あ、鏑木華です、え?じゃあここが協会?」

「当たり、ちなみに喫茶店なのは俺の趣味」

「いや、てゆうか?零さん?」

「ん?そういう君は…戒か?」

「あら?知り合いですか?」

「知り合いもなにも、零さんは俺の神憑としての師匠だよ」

「あら、それはまあ」

「二度驚きだなぁ、まさか戒にも会うとは…で?なんか用かい?蕾君」

「あ、はい、水野戒と風見優の協会登録を頼みたいのですが」

「は?」

「ですから、戒と優の協会登録をですね…」

「戒、入ってなかったのか、どうりで会わないわけだ。あれ?華君は?」

「あ、私は神憑じゃないんで」

「へぇ〜………あ、登録だったね、んじゃまずあれだな」

(何?今の間?)

零は棚からコードがついた水晶を出す。

「なにこれ?」

「これは神憑に憑いている思念神のランクを調べる装置なんだ」

「ランク?」

「ええ、思念神と思念魔にはランクがありまして、上からゴッド、エリート、アンコモン、コモンの四段階があり、さらにそこから上位、中位、下位に分かれるんです。まあ、これがそのまま強さとイコールと言うわけではありませんが…ちなみに私の麒麟はエリートの下位です」

「よし、準備OK」

水晶のコードをカウンターの端にあったパソコンに繋ぎ終わった零が言う。

「んじゃまず戒から、水晶に両手を置いて」

「あ、はい」

戒は水晶に手を置く。

それに反応して水晶が光りだす。

「解析開始…………えー、自然媒介系、属性は水、ランクはアンコモンの上位、戒、思念神の名前なんだっけ?」

「龍神です」

「龍神ね、よし、次、優君だっけ、両手置いて」

「はいよ」

「解析開始………おや?珍しいね」

「あん?」

「自然心身両媒介系、属性は風、ランクはアンコモンの上位、しかしアンコモンでねぇ」

「へぇ、確かに珍しいですね」

「なんだよ?なにが珍しいんだよ?」

「神憑が武器の具現化をする時、思念神によってなにを媒介するか変わるんだが、種類別に分けて三つのタイプがあるんだよ、自然の元素を媒介にするタイプ、体力と精神力を媒介にするタイプ、その両方を媒介にできるタイプの三つね」

「で、優はその三つ目、自然心身両媒介系なんですけど…実はこれ、普通はランクの上二つにしかいないんですよ」

「…じゃあなにか?俺のフレスベルクは特別ってことか?」

「まあ、珍しいと言っても別におかしいわけじゃないから、っと思念神の名前はフレスベルクね」

(…しかしまあ、どっちもアンコモンか…エリートだとよかったんだが)


「…さて、あとはこの紙にサインを入れてくれれば登録完了だ」

そう言って二人に登録証と書かれた紙とペンを渡す。

「書いたよ零さん」

「これでいいのか?」

零は紙を受け取ると、パソコンになにか打ちこむ。

「ふむ、よし、これで二人は東西神憑協会に登録されましたっと」

「で、具体的になんかすることとかあんのか?」

「ないねぇ、なんかあったら蕾君通して連絡すっから」

「んじゃ帰るか」

「そうだね」

「おっとそうそう、華君、ちょっとこっち来て」

「はい?」

「おでこ出して」

「え、はい」

華は前髪をかきあげる。

零は華のでこに指を置き、精神を集中させる。

「あの、なにを?」

「……はい終了」

「え?なにが?」

「ん、プレゼント♪」

「はい?」

「いずれわかるよ」

「??」

「鏑木さん、行くよ」

「あ、うん」

「零さん、さよなら」

「はい、さよなら〜」

四人は店から出ていく。




「しかし、零さんが協会の支部長とは驚いたなぁ」

「私は戒が支部長と知り合いなのが驚きでした」

「でもよ、あの人強いのか?」

「それは私も思った、なんか戦うって感じじゃなかったし、どうなの?水野君」

「強いよ、友達と二人がかりでやっても勝てなかったし」

「えぇ〜!?」

「小学生の時の話だけど」

「えぇ〜…」

「つか、あいつはどんな思念神持ってんだ?」

「え〜と、俺が見たのは確か小さい炎っぽいのと水っぽいのだったかな?」

「小さい?」

「うん、たぶん今日言ってたランクで表すとコモンくらいじゃないかな?」

「ええ、当たりです、確か支部長の思念神はコモンだったと思います」

「じゃあ、弱いんじゃ…」

「いえ、確かにコモンは弱いですが、支部長は複数持ってるらしいんですよ」

「複数?」

「ええ、それと、確か通り名は『最強の最弱者』」

「最強で最弱?だから、強いのか?弱いのか?」

「さあ、私も詳しくは知らないんで」

((……結局どっち?))


…それからしばらく歩いて。

「あ、私このへんだから」

「そう?じゃあまた明日」

「んじゃな」

「さようなら」

「うん、バイバイ」

三人と別れた華は家路を歩く。

(しかし、風見君がぼろぼろになるなんて、水野君と雨宮さんも、もしかしたら…

う〜ん、私になにかできることないかな……あ!神憑になるとか!)

「…解放…なんちゃってね、ないないないな…い!?」

気付くと華の目の前に、二体の妖精っぽいのがふわふわと浮いてた。

片方はおとなしそうな女の子。

片方はやんちゃそうな男の子。

「え、え?え!?え〜〜!!??」

ひとしきり驚いた後、華は二体を掴み、急いで来た道を戻る。

そこにはまだ三人がいた。

「あれ?どうしたの?鏑木さん」

「なんかあったのか?」

「こ、こ、これ」

華は妖精を掴んでいる両手を三人にだす。

「……思念神ですね」

「どうしたんだ、これ?」

「えと、なんか解放って言ったら出てきた」

「鏑木さん、神憑だったの?」

「違う、絶対違う!」

「どうゆうこった?」

「…そういえば、協会を出る前に、支部長になにかされてませんでしたか?」

「…あ!」

「とりあえず、戻ろうか?」




…再び、喫茶アトラス。

「おや?忘れもんかい?」

店に入ってきた四人を零が気付く。

「あのこれ、マスターの仕業ですか?」

華は妖精を零につきだす。

「お、早いね気付くの」

「いったいなにをしたんですか?零さん」

「なにをって、プレゼントしたんだよ」

「は?」

「いや〜、なんとなくなんだけど〜、華君に思念神を二体セットでプレゼントフォーユー、みたいな?」

「はい?」

「まあ詳しく言うと、神憑と付き合うと危ない時もあるから思念神あげたんだよ」

「あげた?そんなことできるんですか?」

「ハイパーな神憑熟練者はできるんだよね〜」

「じゃあ、鏑木さんは神憑になったってことですか?」

「うーん、そうなるかねぇ」

「本当!?私が神憑になったの!?」

「おや?嬉しそうだねぇ、あげて正解だったかな?」

「でもそれだと…」

「逆にやばいんじゃあねえか?」

「なんで?」

「だって今、神憑が魔憑に狙われてるんだろ」

「あ……」

あからさまに忘れてた、という表情の零。

「……マスター、戻せますよね?」

「…いや、その…ね?思念神の移転は神憑としてかな〜り、熟練してないとできなくて…華君はまだなりたてだから死なない限り、その…ね?」

「…できないんですか?」

数秒の沈黙の後。

「…ごめんなさい」

零の言葉が店内に弱く響いた。

一時は嬉しそうだった華も、今ではかなり複雑な顔になっていた。

「で、ですが、神憑になるのは凄いラッキーな事ですよ、ね、ねぇ、支部長?」

「あ、ああ、そ、そうだねぇ」

「え?」

「神憑になったら身体の機能が上がるんですよ、運動能力に反射神経、代謝も良くなりますから肌も綺麗に、しかも太りにくい!女性には願ってもない事です!」

蕾の話に耳を傾けていた華の瞳が輝きだす。

「…本当?」

「ええ!」

「…本当に?」

「本当です!」

「ラッキーなんですか?」

「ラッキーです!けしてアンラッキーじゃありません!」

「…そっか、ラッキーなんだ」

華の表情がみるみるうちに明るくなる。

そんな華を見ながら蕾に近づく零。

「…いやぁー、フォローありがとね、蕾君(小声)」

「いえ、さすがにあのままだと、華さんがかわいそうで…(小声)」

そんな二人の会話を聞く、戒と優。

「…いいのか?」

「いいんじゃないかな?鏑木さん、嬉しそうだし」



…ラッキーなんだ、私…




続く

なんか、今回もすんません。無理矢理な流れと設定、そして話し手の華がいるのに神視点、…すんません。でもいずれは本格的に神視点になるので…。

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