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神憑  作者: 光風霽月
12/17

鬼の頭2

某山中、山道から外れた道。

戒達三人が去ったすぐ後、崎原陽治の後ろに誰かが近付いてきた。

「…誰?」

陽治は静かに、背後の人物に話しかけた。

「…私です、陽治」

声を聞いた陽治は瞬時に振り返る。

亜迦里(あかり)ちゃん!?」

振り返った先には、十代後半くらいの少女。

長い黒髪をおさげに結い、容姿は少し幼いが凜としている。

黒のロングシャツに黒のスカート、茶色のブーツを履き、胸元には月を象ったペンダントをさげている。

陽治は亜迦里を視認するやいなや飛び付こうとする。

「亜っ迦里ちゃ〜…」

しかし、亜迦里は飛び付こうとする陽治の顔面に前蹴り、続いて一回転して腹に後ろ回し蹴り、そして、陽治の体がくの字に折れたところに、頭部に踵を落とす。

「私に飛び付いたら蹴ります、と言った筈です」

ドサッ、と地面に倒れる陽治に無機質な声で言った。

「お忘れですか?」

言われた陽治は意識が途切れそうになっていた、が、なんとか持ち直して立ち上がる。

「……忘れてませんよ、単なるスキンシップですよ」

ゴホッと血を吐きながら、陽治が言った。

「そうですか、次やったら潰しますからね」

「おーけー」

陽治の返事を聞き、亜迦里は一度溜め息を吐いた。

「…ところで、今回は何故、逃げだしたんですか?また暇潰しですか?それとも得意のスカウトですか?」

「ん〜、ちょっとね」




場所は変わって、山の中腹。

木々に囲まれた開けた場所、そこに黒い人のようなものが群がる。

それらの他に動くものは三人の少年。

黒い人のようなものの一体が吹き飛ぶ。

それは頭に角を生やした人ならざる異形の者、鬼。

鬼は地面に倒れると、塵になる。

「どうだ!」

鬼を吹き飛ばした者、優が白い大剣を手に叫ぶ。

その優の背後から別の鬼が襲いかかる。

「発雷!」

その言葉が発せられると同時に、優の背後の鬼に雷が飛び、鬼は黒炭になる。

「油断大敵ですよ、優」

雷が飛んできた方を見ると、左手を前に出した姿勢の蕾が立っていた。

右手に黒い突剣を持ち、両足には雷を纏った黒いブーツを履いている。

優はそれを確認すると、蕾に向かって大剣を振るう。

すると、蕾に向かって真空の刃が飛ぶ。

なにかは蕾の頭の上を通り、蕾の後ろの鬼を横に真っ二つにする。

「お前もな」

二人はお互いを見て、一瞬微笑む。

そして、お互い振り返り、周りに群がる鬼に向かって突っ込んでいく。

その2メートル程離れた場所に戒が立つ。

戒の右腕部には、腕の代わりに龍の頭がついており、その口からは水を固めた突撃槍が伸びる。

戒はその腕を前に出し、前方の鬼の群れに狙いを定める。

「水龍砲!!」

龍の首に水が大量に集まり、一気に爆発。

それにより、戒は前方に凄い勢いで推進。

槍の穂先に鬼の体が次々と刺さり、串刺しの状態になっていく。

やがて、槍は一本の大木に刺さる。

それと同時に槍に串刺しになっていた数体の鬼が塵になる。

木から槍を抜くと、戒の周りに槍に刺さらなかった鬼が群がる。

「…水龍刃」

戒の腕の龍の二本の角、その一本が液体状になり、高い圧力をかけて一直線に噴射され、一振りの水の刃になる。

戒はそれを薙払うように鬼の群れに振るう。

刃に触れた鬼はほぼ同時に上半身と下半身が分かれていった。

しかしその後ろからわらわらと鬼の群れが出てくる。

「ふぅ、きりがない」

戒は呆れながら、息をつき、蕾の方に向く。

「蕾!」

「はい?なんですか?」

鬼の頭に剣を突き刺しながら蕾は答える。

「スキー場の時のあれ、ここで使っても平気かな?」

そう言われて、蕾は周りを見渡す。

「う〜ん、たぶん大丈夫だと思います」

「そう、じゃあやろう、このままじゃ体力を浪費するだけだ」

「わかりました」

「よし、優!」

今度は優に声をかける。

「あん!?なんだよ!?」

当の優は剣で鬼を薙払っていた。

「危ないから空に逃げて」

「はあ?空は飛ぶなって……」

「見つかっているからもういいんですよ」

いつ近付いたのか、優のすぐ横にいた蕾が言った。

優は眉間に皺を寄せたが、すぐに大剣の上に乗る。

「…飛べ!!フレスベルク!!」

優は大剣の上に乗ると柄に付いている翼の装飾が大きくなり、優を乗せた大剣は上空に飛ぶ。

それを見届けた戒は、槍のついた右手を横に向ける。そのまま、水を放出しながら、その場で勢いよく回り始める。

放出された水は遠心力により、一帯に巻き散らされ、鬼と地面は次々と水を被る。

大体の鬼が水を被ったところで戒は槍を上に向ける。

すると槍の後ろから放出される水は勢いを増し、それにより戒の体は空に向かって飛んでいく。

鬼の群れは一度、上空の戒と優に注意を向けるが、すぐさま地上に残った蕾に目線を合わせ、襲いかかる。

蕾はそれを気にせず、剣を地面に刺し、さらに両手を地面につけた。

「……響雷!!」

瞬間、蕾を中心に地面に雷が走り、一瞬で鬼達を黒炭にしていく。

蕾は地面から両手を離し、辺りを見回す。

「打ち損じはありませんか〜!」

蕾は上空の二人に呼び掛ける。

「うん、ないよ〜!」

優の大剣の柄に捕まっている戒が、地上をくまなく見回してから、答えた。

「…なんかなー」

優がぼそっと、そうこぼした。

「よし、優、下に降りて」

「…おう」

優が応じると、大剣はゆっくりと地上に向かって降りていく。

その時、山の頂上付近から、なにかが山なり飛んでくる。

「なんだ…あれ?」

優がそれを視認すると、いきなり、三人に強烈な負の感覚が襲いかかる。

「戒!俺から離れろ!!」

優に言われ、戒は即座に剣から手を離し、地面に落下する。

すると優は剣の柄を握り、自分を大剣の下にするように体勢を変える。

その間に、山から飛んできたなにかは、それがなにかわかる位置まで来ていた。

それは長身痩躯の男。

血に染まる衣服を纏い、その髪は、黒く長く手入れはされてなく、その手には、黒く長く手入れをされてはいないだろう抜き身の刀。

眼は深く暗く、そして緋に染まりかけた黒眼。

(こいつが……?)

蕾が確認したと同時に男は優の大剣に向けて刀を振り上げる。

その時、優は言いようのない、恐怖に襲われる。

(……普通に受けたらやばい!!)

「くそっ!!」

優は空いてる手を固める。

すると、その手に大気が集まる。

次の瞬間、男の刀が優の大剣に振り下ろされる、と同時に優は大剣の腹に固めた拳をぶつける。

刹那、大剣から男の側の空間に強力な風圧が発生する。

それにより、男は吹き飛びながら、しかし体勢を立て直して、すっと地面に着地する。

優もほぼ同時に着地した。

「優、大丈夫か!?」

戒は優に駆け寄る。

しかし、蕾は優を素通りし、突然攻撃を仕掛けてきた男と相対する。

「…蕾?」

戒が呼び掛けるが反応しない。

「……聞いてもよろしいですか?」

蕾は男に話しかける。

「……あまり関心しないな、敵と話そうとするなど…」

男は静かに答えた。

「どうしても聞きたい事があるので」

蕾がそう言うと男は溜め息を吐き、

「……まあ、いい、なんだ?」

「貴方が東西神憑協会の東北支部を潰した人ですか?」

「……そうだな」

「何が目的で?」

「…仕事だ」

「一人でやったんですか?」

「……三人だ」

「そうですか、では…」

そう言うと蕾の体から殺気が漏れ出す。

「東北支部支部長、武元鳴海を殺したのは貴方ですか?」

「………どうだかな、名前など聞かずに殺してるからな」

男は冷たい眼差しで答えた。

「……そう、ですか」

そう言うと、蕾の体が今居た場所から消える。

と、数秒と待たずに男の後ろで蕾が自分の突剣を振るう。

男は後ろを見もせず、長刀を背中に回し、それを防ぐ。

「……速いな」

「……後の二人の居場所はどこですか?」

「……それは流石に言えないな」

「……ならば、力ずくで聞きます!」

怒りに満ちた声で蕾は言い放つ。

男は鼻で笑った。

「……どうやら随分と大事な人間だった…」

「破ああぁぁぁぁ!!!!」

男が口を開いていたその時、戒が男の横から槍で突撃してくる。

その距離はもはや避ける範囲ではない。

男は蕾を力任せに突剣ごと吹き飛ばすと、戒の方に向き直す。

男は長刀の刃先を戒の槍の尖端に合わせ、戒の推進を無理矢理止める。

「な!?」

(……動かない?!)

「どけ戒!」

「え?」

戒が後ろを見ると、大剣を形状変化させた双剣を持つ優が突っ込んでくる。

直ぐ様戒はしゃがみながら側転する。

「おらぁっ!!」

優は男に双剣を縦に斬りつける。

男は長刀を水平にして、防ぐ。

衝撃など無いが如く、まったく動かずに。

「ぐ!……このぉ!!」

優はそのまま体を回転し、双剣を平行にして今度は横に斬りつける。

しかし、それも同じように防がれる。

「………軽いな」

男が冷笑を浮かべて言う。

「……っだとこらぁ!?」

その言葉を皮切りに優は烈火の如く双剣を振るう。

様々な方向から、時に片方のみ、時に左右同時に双剣男に向ける、が、それら全ても男の長刀によって阻まれる。

「……遅い」

男は長刀の柄を優に向け、腹部に思いきり叩き込む。

「がっ!!」

優は後方に吹き飛び、地面に転がる。

(……やれやれ、どこが厄介だ…)

男は少し下を向き、再び溜め息を吐いた。

その時、男は自分を覆う影に気付く。

上を見ると、頭上には小さな雷雲があった。

「……降雷(こうらい)

雷雲から雷が落ちる。

男はすぐに長刀を上に投げる。

すると長刀が避雷針の役目を果たし、雷は長刀の所で止まる。

その間に男は雷雲の下から出た。

「……水龍刃」

その瞬間、男の右腕を水の刃が体から斬り離した。

斬った断面からは血が勢いよく噴き出す。

男の目の前には、自らの武器を振り抜いた戒がいた。

「……甘いな」

男は残った左の手で自分の首を指す。

「……飛ばすならここだ」

「…死んでもらっては困ります」

戒は強い眼光放ちながら言った。

「……そうです、あなたには生きてもらいます」

蕾が男の後方で立ち上がる。

「言ってください、他の二人の居場所を」

男はそれを聞くと三度溜め息を吐く。

「……負けてもないのに、か?」

「その状態で言える事ですか!?」

蕾は突剣で男の右腕を指す。

今だに出血は止まらずにいる。

「このままではどのみち貴方の負けです!」

「……やれやれ」

男は周りを見渡す。

男を見つめる戒、男に剣をつきつける蕾、木によりかかりながら男を睨みつける優。

「……仕方ない、死んで己を怨め」

そう言って、蕾を睨む。

その眼は緋く狂気に満ち、しかし、どこか哀しそうな眼をしていた。

「……解放」




続く

久々の&中途半端な投稿。

……色々ごめんなさい。

一応、次でこの話を終わりにし、まったりした話を挟む予定。

でも予定は未定……。

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