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神憑  作者: 光風霽月
11/17

鬼の頭1

人の手にまったく触れらていない険しい山道を、三人の少年が歩く。

一人は黒髪、優しそうな顔、澄んだ目をしている。

一人はツンツンに立たせた白髪、目が少しつっている。

一人は腰まで届く茶髪を後ろで結わく、容姿は端麗で中性的。

それぞれ背中にリュックを背負い、山登りにそれなりに適した服装をしている。

「なぁ、まだか?」

白髪の少年が、茶髪の少年に話しかける。

「うーん、まだまだかかりそうですね」

「……飛んでいったりとかは駄目なのか?」

「駄目です、敵に気づかれますから」

その言葉で白髪の少年はがっくりとうなだれる。

「優、頑張りましょう」

「はぁ…分かったよ、蕾」

優は溜め息をついた後、後ろの方を向く。

「で、さっきから何やってんだ?戒」

「ん?」

見ると、戒が携帯をいじっている。

「ああ、メールだよ、鏑木さんとか亮とかに」

「…電波あんのか?」

「ぎりぎりね」




前日、球技大会終了後。

教室で柚留が持ってきたレモンの砂糖浸けを戒と蕾でつまんでいた時に、蕾の携帯が鳴った。

蕾は携帯を取り出す。

「あれ?波弖那支部長だ」

「零さんから?メール?」

「はい、戒と優を連れてアトラスに来るようにと」

その後、優を呼び、そのままアトラスへと向かった。

アトラスに着くと、零は神妙な顔をしていた。

「やあ、いらっしゃい」

「どうしたんですか?零さん」

戒がいつもとは違う零に少し訝しげに聞いた。

「いや、実は君達にある仕事を勧めたいと思ってね」

「仕事?」

「ですか?」

「どんなんだよ?」

「ああ、蕾君は必ず受ける内容だねぃ」

そう言い、零は蕾を見る。

「僕がですか?」

「そ、場所は青森、内容は東北支部を壊滅した魔憑の討伐及び捕獲」

蕾の表情が一瞬で厳しくなる。

「…見つかったんですか?」

「うん、ただし、どんな奴か、どんな思念魔を持っているかは不明、現在はとある山中に潜伏中、ちなみにそこは思念魔の巣になってる」

「そうですか…」

蕾はそう言うと振り返り、戒と優を見る。

「戒、優、僕と青森に飛んでください」

言われて、二人は顔を合わせる。

優は頭を掻き、

「前もこんなんなかったか?」

それを聞くと戒は、

「さあ?でも行くでしょ?」

「まあ、な」




「大丈夫?優」

戒が心配して言う。

優は疲労しきった顔をしている。

「こんな、事なら、来ねえ方が、良かった、かも、知れねえ…」

息を切らしながら愚痴る優。

「ふふ、体力ないですね、優は」

疲労などまったくないといいった感じの蕾が(あざけ)る。

しかし、優は下を向き、反応しない。

「おや、言い返す気力もありませんか?」

再び嘲るが、優はそれでも反応しない。

「……優?」

優は顔をゆっくり上げる。

「…なんか来るぞ」

優は木々に覆われた道の先を見つめる。

戒と蕾もならって見る。

足下からは、わずかながら震動が感じられる。

「気付かれた?」

戒が眉をひそめる。

「いえ、それなら私がとっくに感じている筈です」

「そりゃ、思念魔か魔憑の場合だろ?」

優が横槍を入れる。

「じゃあ熊かなにか?」

「……有り得なくはないですね」

三人の顔が少し青くなる。

「…とりあえず、戦う準備はしとこう」

そう言いながら、戒は右手に水の剣(槍)を形成する。

「…熊とかだったら殺しちゃ駄目ですよ?保護法とかあるんですから」

蕾は両足に雷のブーツを形成し、一歩下がる。

「…そんな事言って、こっちがやられちゃ洒落になんねえぞ?」

優は風を纏いつつ、前方に集中する。

足下の震動が段々大きくなっていく。

「あんまりでかくないな」

「ええ」

前方からなにかが近付いてくる。

「人?」

「ですかね?」

人影はこちらに向かって走っている。三人はそれを注意深く見る。

「男?」

「うん、俺達と歳が近そうだね」

その少年は、服装は黒いジャケットにジーンズ、髪は眉にかかるかかからない程度の黒い髪。

ずっと走っているのか、息切れが激しい。

彼は三人に気付いたらしく、手を振る。

「どうやら、敵ではないようですね」



「ふー、助かった、ありがとう」

少年は蕾から受け取った水筒を蕾に返す。

「いえ、どういたしまして」

蕾は笑顔で受け取る。

「で、貴方、名前は?」

「あ、言ってなかったですね、俺は崎原陽治っていいます、歳は十八です」

「神憑か?」

優は自分の水を飲みつつ聞く。

「はい、東西神憑協会に属してます、ここには仕事で来ました」

「おや、という事は同じ目的かもしれませんね」

「え?じゃあ貴方達も、あいつを……酒天童子(しゅてんどうじ)を倒しに?」

「酒天童子?」

陽治以外の三人は顔をしかめる。

「なんですか?それは」

「あ、はい、酒天童子は今回の標的の思念魔です」

「……確か情報はまったくなかったはず、どこでそれを?」

それを聞くと、陽治の顔が曇る。

「……実は、俺、逃げてきたんです」

「逃げてきた?」

「…はい」

陽治は沈痛な面持ちで話始めた。

陽治は仲間の二人と三人でこの山に来た。

仲間の二人はなかなかの熟練者で、思念神も共にエリートクラス、陽治は経験のためにくっついて来たらしい。

陽治達は山の中腹辺りで鬼の群れに襲われた。

だが、仲間の二人はそれをものともせず、蹴散らしていった。

そこに一人の男が現れた。

端麗な顔、しかし目は血走り、その手には長刀を一振り。

仲間二人は男を見ると、すぐさま解放をして、男に向かっていった。

最初は少し押していた、しかし、男が解放をすると二人は瞬く間にやられていった。

二人はやられる前に、陽治に逃げるように言い、陽治はその通りにした。

「……あいつは解放した時に自分の思念魔の名前を言いました」

「それが酒天童子、ですか」

「…はい」

「……ひとつ聞きます」

「はい?」

「あなたが来た道を行けば、その男に会えますか?」

「え、いや、わかりませんが、奥に行けば鬼は出ると思います…」

「そうですか、じゃあ行きましょう、戒、優」

「え?」

蕾は道を進み始める。

陽治はそれを見てきょとんとする。

「そうだね、善は急げだ」

「え?え?」

戒は蕾の後を歩く。

「さっさとそいつ倒して、とっとと帰るぞ」

「え?え?え?」

優もそれに続く。

陽治は三人の突然の出発に戸惑いを隠せない。

「……待ってください!!」

陽治は三人を呼び止める。

三人は陽治の方を向く。

陽治が真剣な眼差しをしていた。

「…失礼ですが、貴方達の思念神のランクは?」

「私のはエリート、戒と優のはアンコモンです」

蕾が淡々と答えた。

それを聞いて陽治は表情を沈ませる。

「……俺の見立てでは、恐らく酒天童子のランクはゴッド、貴方達ではまず勝てません」

その言葉に優は眉をひそめる。

「はぁ?どういう事だ?」

「それは私が答えます」

蕾が口を開く。

「先日、協会登録の際、ランクの説明をしましたね?」

「……あー、どんなんだっけ?」

「確か、上からゴッド、エリート、アンコモン、コモンの四段階があるってやつだよ」

戒が代わりに答えた。

「はい、その通りです」

「でも、それがどうしたの?」

「……説明をした時、ランクが強さのイコールではないと言いましたが、ゴッドだけは違います、別次元です」

「へぇー、それで?」

戒の軽い返答に陽治のみが驚いた表情をしたが、構わず会話が進む。

「ただ力が違いすぎる、それだけです」

「わかった、じゃあ行こう」

「はい」

三人は再び歩き始める。

「って、えぇー!?待ってくださいよ!!」

陽治は再び呼び止める。

しかし三人は構わず歩を進める。

「わかったって全然わかってないじゃないですか!!貴方達じゃ負けに行くようなもんなんですよ!!」

優は頭を掻き、首だけ後ろを向き、

「やってみなきゃわかんねえよ」

そして、三人は山の奥へと進んでいった。

残された陽治は溜め息をついた。

「…行っちゃったか」

その時、陽治の背後に突然人影が立つ。

「…誰?」

陽治は後ろを見ずに静かに言った。




頂上付近、その一歩手前といった場所。

周りは木々や茂みで覆われているのにも関わらず、そこだけは整地されたかのように開けた場所だった。

そこには大小の木の棒が所々に立てられていて、棒の下の土は少し盛り上がっていた。

丁度、その中心辺りに男が一人、座っていた。

髪はボサボサで長いが、端麗な顔立ちで、今は目を閉じている。

その傍らには一振りの長刀が抜き身のまま置かれている。

男はゆっくりと目を開ける。

その目は重く、暗い色をしている。

「……誰だ?」

男が静かにそう言うと、茂みから銀髪の少年が現れた。

表情はニコニコと笑っていて、目は細い。

「やあ、久しぶり、元気かい?」

少年は明るい声で言った。

「…お前か、何の用だ?」

対照的に男は暗い声で言った。

「いやいや、特に用というほどの用というわけじゃないんだけど、あ、とりあえずお仕事ご苦労さま」

「…ああ」

少年は男の返答を聞くと、キョロキョロと辺りを見回す。

「ひとつ聞いていい?」

「なんだ?」

「このお墓みたいのは何?」

少年が近くに立てられて棒を指して言った。

「墓だ」

「なんの?」

「俺が食った獣や鳥、それと、俺に襲いかかった神憑だ」

「ふーん、変わってるね」

「……用はなんだ?」

「あ、そうそう、ちょっとした警告、君、やっかいな奴に狙われているよ」

男は少し考えてから、

「…さっきから山をウロチョロしてる奴らか?」

「うん」

「…そうか」

男は再び目を閉じる。

少年はそれを見ると、後ろに振り返る。

「アル」

男が少年に向かって言った。

「…いつまで続ける?」

アルと呼ばれた少年はクスッと笑い、

「世界が楽しくなるその日まで、だよ」

そう言った次の瞬間、少年は忽然と姿を消した。




その頃、戒達三人は山の中腹、陽治らが襲われたと思われる場所に居た。

周りの木が何本か折れており、地面は血が染み込んで乾いたのか、点々と赤黒く変色している。

「…おい」

優が二人に向かって言った。

「なに?」

「どうしました?」

戒と蕾が同時に聞く。

「感じてるか?」

「…ついさっきだけどね」

「右に同じです」

三人は、ばっと背中合わせになる。

「おいおい、戒はともかく、蕾、お前がついさっき感じただって?」

「はい、不思議ですね、なにか…結界みたいなものでも張られているのでしょうか?」

「そうかもね」

三人の周りの木の上や茂みの所々から赤い点が光っている。

「…多いな」

「スキー場の時といい勝負じゃない?」

「…そろそろ来ますよ」

三人は目を閉じ、精神を集中させる。

次の瞬間、木の上、茂みの中から一斉になにかが飛び出す。

それと同時に三人は目を開き、言葉を発す。

「「「解放!!」」」




続く

とりあえず色々と伏線を入れてみた。

続きどうしよう?とか考えちゃったりしてる今現在。

本当、どうしようかな?

決まってる事は、唐突な展開のみ。

後、外伝の続きを書かなきゃな、とか思ってる。

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