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神憑  作者: 光風霽月
1/17

水野 戒

夏休み、ここは公園、只今午前一時。

私、鏑木華かぶらぎはな、高校二年生です。

こんな時間になにをやってるかっていうと、週間少年ジャ〇プを買いに行くところです。

私はジ〇ンプは夜のうちに買って読むのが好きなのです。(理由は特に無し)

公園に居るのは、コンビニへの近道だから。

あそこの水飲み場のあるところを通れば……ん?

水飲み場に誰かいる。

こんな時間にいったい誰が?

私は恐る恐る近づいてみる。

「あれは…?」

うちのクラスの水野戒みずのかい君?

こんな時間になんで公園に?

怪しい…。

私はしばらく近くにあった草むらに隠れて様子をみる事にした。

彼は辺りを見回し水飲み場の蛇口を回し水を飲み始めた。


…五分後。

ずいぶん飲むな〜、まだ口離さないよ。


…十分後。

おいおい、そんな飲んで苦しくないのかい?


…三十分後。

まだ水を飲み続けて…って、ちょっと待て!!

あんたいつまで飲み続けんのよ!?

こいつ、おかしい…。

そういえば…このごろ、ここらへんでで化け物が目撃されてるって情報が多発してるって言うけど…。

はっ!まさか、水野君は化け物かなんかの類…?

って、もしそうならこんなことしてる場合じゃない!

早く逃げなきゃ……。

と、その場を離れようとした私の足になにかがぶつかった!

一体なにに?と、つまづいた場所を見ようとした時、

「ん?そこに誰か…」

やばい!気づかれた!

彼が言い終わる前に私は茂みから全力で走りだした。

とりあえず逃げねば!!

「今のは……鏑木さん?」




夏休みが終り、始業式。

正直、行きたくない。

理由は簡単だ、水野君に会いたくないからだ……。

「どうしよ〜、学校行きたくない、でも今日休んだら行きにくくなって不登校になってしまう〜(小学校の時に始業式に休んでしまい三日くらい気まずくて行けなかった)、しかも皆勤賞が〜」

嗚呼、どうしよう、どうしよ〜う………。



……私立 果実好樹かじつこうじゅ高校。

開校十年目をむかえるこの学校は、毎年、多数の受験者が訪れる。

その理由は、年に四回ある国内外の旅行行事にある。

この旅行行事は、世界長者番付三位になったことがある三十代前半のここの校長が、

「若者は旅に出て学ぶものだ」

という変な考えから作った行事。

しかも旅費などは全て校長持ちである。

おかげで受験希望率全国一位。


さて、無駄に学校紹介が終ったところで話を戻そう。

「はぁ…来ちゃった…」

結局、皆勤賞が惜しくて私は学校に来た。

現在午前八時。とりあえず水野君はまだ来てないようだ。

水野君に会ったらどうしよう……って、ん?

まてまて、あの時私、全速力で逃げたよね?

言っちゃなんだけど私は結構足が速い。

それにあの時、時間も時間だったから暗かった。

辺りは暗くしかも速い物体を人は、いや、化け物だってわからないかもしれない。

うん、きっとそうだ。

そうに違いない。

きっと私の顔なんて見えてない。

なぁんだ、心配しなくてもいいじゃない!!

よし、後はあの日の事を忘れ……。

「おはよう、鏑木さん」

「み、水野君!?」

突然水野君が話しかけてきたので私は一瞬、かなりびびった。

落ち着け、落ち着け私。

別に普通にすればいいんだ、普通に、ふつーに。

「お、おはよう」

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、夏休みの…」

……あぁ〜、この『夏休みの』というフレーズ、これはやっぱり顔を見られてたでしょうね。


「「「水野く〜ん☆」」」

声の方を見ると数人の女子が彼に声をかけてきてる。

水野君は呼ばれた方向に振り返る。

チャンス!!と思った私は一目散にその場から逃げた。





……水野君は性格が穏やかで、誰にでも優しくて、以外としっかりしてて、運動も学業もそれなりにできて、まぁ、つまりは学校の人気者。

それに顔も結構良いから断然もてるわけで…。

そのおかげで逃げることが出来た。

でも……、

「絶対あの日、顔を見られてた…」

やばい……、どうしよう……。

「華〜!!」

おや?誰だろう、向こうから息をきらしながら走って来る人影が、って柚留?

「はぁ、はぁ、こんな、とこに、いた」

この息切れしてる子は、鈴村柚留すずむらゆずる、私の中学生からの友達だ。

「もう、始業式はじまっちゃうよ!!」

「へ?」

私は、自分の腕時計を見る。

「げっ!!八時二十五分!?」

ちなみに始業式が始まるのは八時半。

「みんなもう体育館に行ってるよ!!早く行かなきゃ」

「う、うん!」

私は柚留とともに体育館に急いだ。




なんとか間に合った……。

あっ、校長のスピーチが始まる。

「おはよう、生徒諸君、夏休みはハメをはずしたか?真面目ぶってちゃいい思い出なんて出来ないからな、煙草とか酒とかもやりすぎなきゃ別にいいんだぞ、あと愛の営みは早めにやっとけ、後で後悔するぞ、以上、教頭、あと頼む」

……相変わらず、本当に校長か?と思ってしまうスピーチだ。

まあ、えんえんとつまらなく長いスピーチをする古典的な校長よりましだが。

ふと、私は水野君の方を見る。

彼は前にいる男子と談笑している。

……普通だよね。

本当に……化け物なのかな?

彼はただ……深夜の公園にいただけで、すごく喉が渇いただけで、それで水をすごく飲んだだけ、……って無理あるよね……。




それからなにごともなく?無事始業式を終えた後、私は柚留と教室で談笑していた。

「あはは……あ!華、今日ひま?」

「うん、特に用事はないけど…」

「じゃ、ちょっと付き合ってよ」

「いいよ」

「じゃ、校門で待ってるから」

柚留はそう言うと教室から出ていく。

そして入れ違いで誰かが入ってきた。


って!!

「み、水野君!?」

「あ、鏑木さん、いま暇?」

「ど、どうかしたの?」

「いや、今朝は聞きたかった事聞けなかったからさ……夏休みの深夜に公園とか行ってた?」

やっぱりそのことですか〜、……こうなったら、しらっばくれるしかない!!

「な、夏休み!?い、い、行ってないよ!!こ、公園なんか!!」

うぉい!!緊張しすぎで声がうわずってるよ私!!こんなんじゃ嘘ついてるのバレバ……。

「そう、じゃあ見間違いだね」

……え?

「信じちゃったの?」

あんな誰が聞いても嘘ってわかる喋り方で……。

「え?嘘なの?」

「あー!!うそうそ!あ、いや、うそじゃなくて、その、なんというか、その……」

馬鹿何してんの私!!墓穴掘ってんじゃないですか!?

「……クスッ、ごめんね、時間取らせちゃって、じゃね」

そう微笑みながら彼はそう言って、あっさりと教室を出ていく。

そして私は安心のせいか気が抜けて、その場に数分、座り込んだ。




私はなんとか気を取り戻し、柚留の待つ校門前にたどり着いた。

「あっ、華」

「ごめん……待った?」

「ん〜ん、全然、じゃ行こっか」

柚留が歩き出す。

私もそれについていく。

「ねぇ、柚留、どこ行くの?」

「それは着いてからのお楽し……」

柚留と誰かがぶつかる。

「あっごめ…」

やな音がしたと思ったと同時に、前を歩いてた柚留の背中から突然……鋭利な物体が飛び出す。

「えっ……」

私が声を出すと柚留の背中から出た鋭利な物体が引っ込む。

そうすると柚留は支えがなくなったようにその場に倒れてしまった。

そして、柚留の体が影になって見えなかった人物が見えるようになる。

私は倒れた柚留の体から徐々に視線をその人物に向けて上げていく。

その手には透明でいて、でも形はわかる、……たぶん刃物。

その服には、校章がついている、うちの学校のだ。

そして、その顔は、

「……み、ず、の、く、ん、?」

私は恐怖で身がすくんでしまった。

目の前の映像、ちょっと前の映像、二つの映像からだされる答えは一つ。

……水野君が柚留を刃物で刺した……。

「…い…い、いやぁぁー!!」

水野君が柚留を刺した、

水野君が柚留を刺した、

水野君が柚留を刺した、

「……ゆ……柚留?」

私は柚留を呼ぶ。

だけど、ピクリとも動かない。

「鏑木さん……」

水野君が私の名前を呼びながら近づいてくる。

…逃げなきゃ、でも足が動かない。

考えてるうちに水野君との距離が短くなる。

私は目を閉じる。

……もう駄目だ。

「……なるべく、僕から離れないで」

……え?

私は閉じてた目を開ける。

そこには優しい顔の水野君がいた。

「キシャー!!」

水野君の後ろから、なにかが奇声をあげて飛んでくる。

水野君は瞬時に振り返り、手に持った剣でそのなにかを突き刺す。

剣に刺さった物は…蜘蛛!?

しかも大きさが人間くらいの。

「え?え?ど、どうゆうこと!?」

「えっとね〜、話すと長いから……」

話してる間に私と水野君は、いつのまにか十数の人に囲まれてる。

「こいつら片付けてからね」

言い終わると同時にその十数の人が蜘蛛に変わる。

蜘蛛が五体、水野君に同時に襲いかかる、その五体を水野君は連続で突きを出す。

……たぶん突き、ってか速すぎて見えない。

その後そのまま前に飛び、目の前の数体にも突きを出す。

突きは一撃必殺、とでも言った方が良いのか蜘蛛はさっきのも含めて、弾けるように散る。

「…すごい…!!」

と、私の横から蜘蛛が飛んできた!!

思わず身をすくめる私。

けど、その蜘蛛に何かが飛んできて突き刺さり、その蜘蛛は弾け飛んだ。

見ると、飛んできたのは水野君が持ってた剣だ。

水野君はその剣が地面に落ちる前に掴み、残ってた蜘蛛を次々と倒していく。

最後の一匹が逃げ出す。

当然倒すと思いきや、彼は何か小さい小豆?みたいなものを蜘蛛に投げ、私の方に歩いてくる。

「大丈夫?鏑木さん、怪我とかは…うん、無いようだね」

「え、あ、えっと〜」

とりあえず、夢か?と頬つねる。

うん、痛い。

あまり認めたくないけど、どうやら現実らしい。

「はっ、柚留は!?」

「あ、さっきの鈴村さんは、蜘蛛が化けた奴だから、安心して」

私は柚留の死体(あまり言いたくないが)が倒れていた場所を見る。

そこには塵になっていく蜘蛛が。

「え?じぁあ、柚留は無事なの?」

「いや、ちょっと危ないかな……」

「それって……どうゆうこと?」

「とりあえず、時間がないから進みながらでいい?」




「……で、柚留が危ないって?」

「鈴村さんはさらわれたんだ、さっきの蜘蛛に」

「さらわれた!?なんで!?」

「エサだよ、蜘蛛の本体の」

「エサ!?本体!?どうゆうこと!?」

「まあ、事が終わってから全部話すよ」

「今は話せないの!?」

「うん、目的地に着いたからね」

水野君はそう言うと、足を止める。

そこは、明らかに今は使われてない廃工場。

「…ここ、何?」

「さっき最後の一匹に投げたの、あれ、発信機なんだ、本拠地探すた、め、のっと」

水野君は、工場の重い扉を開ける。

扉の向こうには、無数の蜘蛛、蜘蛛糸で吊された人たち、そして、最奥にいるのは人に化けてた蜘蛛の五倍はあろうかと言うくらいの、親玉と思える大蜘蛛。

「なに…これ…」

「文字通り、蜘蛛の巣さ…」

私は、吊された人たちに目をやる。

子供から老人までさまざまな人。

そのなかに、私の友達がいた。

「!?柚留ー!!」

反応がない。

「…まさか!?」

「大丈夫、たぶん気を失ってるだけだから」

そう言うと、剣を持っている手を前に出し、もう片方の手を添える。

すると突然、蜘蛛達が何かに気付いたかのように、水野君に襲いかかる。

しかし、水野君は動じる事無く目を閉じる。

そして

「…解放…」

その言葉が発せられると、襲いかかってきた蜘蛛達が全て弾け飛ぶ。

気付いてみると、水野君の上空には巨大な物体がいた。

その生物は、伝説やお伽噺にしかいない、空想上の生き物。

それはまさに『龍』

……龍は彼の腕に頭を近づかせる。

龍の頭は腕に触れ、腕と同化する。

完全に同化したところで龍の体は無くなる。

同化した頭は、口を開く。

そして口に大量の水が集まり、やがてそれは一つの武器になる。

…敵を貫くために造られた武器、突撃槍。

「鏑木さん、今度はできるだけ離れて…」

龍の首に、先ほどより多くの水が集まる。

蜘蛛の本体が奇声をあげ、彼に向かって走りだす。

それと同時に、龍の首に集まった水が後方に爆発する。

その爆発は彼の体を矢の様に蜘蛛に向かわせる。

「ギャヴィァァァ!!!!」

「破ああぁぁぁぁ!!!!」

彼と蜘蛛の距離は、近付き、零になり、そして、交差する。


…彼が突き抜けた蜘蛛の体には巨大な風穴が空く。

蜘蛛の本体は塵となり、同時に子蜘蛛?も塵になった。

「…ふぅ、よし、じゃあみんなを下ろしますか」



あの後、水野君と協力して、なんとか捕まっている人全員を下ろした。

「柚留、柚留、起きて、柚留」

とりあえず私は柚留を起こしている。

「ふぇ?」

あ、起きた!

「よかった〜、大丈夫?痛いとこ無い?」

「え〜と、ここ、何処?」

「鈴村さん、起きた?」

「あ、水野君、他の人たちは?」

「特に異常は見当たらなかったから、適当に質問に答えて帰らせたよ」

「あれ?水野君がなんで私の目の前にいるの、これ、夢?」

ちなみに柚留は水野君に惚れている。

事情を説明するの面倒だなぁ……。

「うん、これは夢だよ鈴村さん、だからもう少し夢の中にいよう」

「はい…」

そう言うと柚留は眠りにつく。

「水野君?」

「いや、このほうが早いから」




柚留は水野君におぶられてる。

幸せそうな寝顔だ…。

「ところで水野君」

「ん?何?」

「あなた何者なの?」

「俺?…俺は、神憑」

「かみづき?」

「そ、神憑、神に憑かれし者さ」

「神?」

「詳しいことはまた明日、俺、今日用事あるから」

「明日は学校休みだよ」

「あ、そっか、じゃ家来る?」

「え?」

それって…。

「はいこれ、電話番号と住所」

そう言って、彼は携帯を差し出す。

私はそれを受取り自分の携帯に彼の電話番号と住所とついでにメアドを登録する。

「おっと、もうこんな時間だ、鈴村さんの家何処?」

「え?あ、そこを右に曲がって、四軒目の家…」

「わかった、じゃあ、また明日」

そう言うと彼は走って行った。



……え〜と、今日はいろいろあって疲れたし、とりあえず…



…私も家に帰ろ…。








「遅えぞ、何やってた?」

「悪い、思念魔がいたから……」

「……水のストックは?」

「充分、残ってるよ」

「よし、じゃあ行くか」

「で、今日の相手は?」

「ああ、蜘蛛だよ」

「……え?それならさっき……」




続く

読んでくださった方、ありがとうございます。

(只今修正加筆中)


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