ラブコメみたいで破滅的な出会いを
午前七時二十分。
テレビでは天気予報士のおじさんが二十四節気がどうのこうのと講釈を垂れている。
私はそれを聞き流しながら玄関に向かい、ローファーを履いた。
アホ毛なし、リボンも曲がってないし、スカートのプリーツも
姿見で全身を確認をして、食パンをくわえる。
「いってきまーす!」
ママへの声掛けを合図に、私は走り出した。
うーん、今日も朝日がまぶしい。
絶好の出会い日和!
鳥のさえずりを聞きながら、いつも通りのペースで走っていく。
別に遅刻しそうなわけじゃない。
家から学校までの距離を考えたら、むしろ早すぎるくらいだ。
学校のちょっと手前で反対方向に曲がり、住宅街を駆け抜ける。
「おっ、パン食い競走じゃん。おはよ」
「おはよ」
パン食い競走なんて不名誉なあだ名を付けられたって構わない。
「お前いい加減に陸上部入れよ! その走りなら絶対全国行けるぞ」
陸上部の顧問が勧誘してくるけど、相手になんてしてられない。
もう少ししたら歩いている生徒の数が一番多いゴールデンタイムがやってくるんだから。
今日も気を引き締めて、全力疾走あるのみ!!
なんでそんなに必死に走っているかって?
こうやってパンをくわえて走っていたら、曲がり角でイケメンと激突……! っていう、あのシーンが私の憧れの出会いなんだもん!
……まあ、今のところ全戦全敗なんだけど。
この調子じゃ、今日もダメかなぁ。
いやいや、諦めるにはまだ早いよね。
あと五分も走れるんだから!
私がくわえた食パンをカラスが狙っている。
その気配はちょっと前から感じていた。
でも、これは譲れない。
だって私が運命の王子さまと出会うための必須アイテムなんだもん!
絶対に奪わせてやるもんか。
強い気持ちで睨みつけたら、カラスは怖気づいて逃げて行った。
へへっ。
私の恋路を邪魔するやつはたとえカラスだって許してやらないんだから。
なんてことを考えていると、私の身体を衝撃が襲った。
「いってぇ~……」
「いたた……」
尻餅をついた私の目の前で座り込んでいる、見知らぬ少年。
顔は……まあ、悪くないか。
「なんだこれ、まっずいパンだなぁ」
私がくわえていたはずの食パンは、転んだ拍子に彼のところに飛んで行ってしまったらしい。
……のは百歩譲っていいんだけど。
どうしてその食パンを彼が食べているんでしょうか!?
「お前、いっつもこんなまずいパン食ってるのか?」
「へっ?」
「俺んち、そこのパン屋。明日オープンだから来いよ。客第一号にしてやる」
「へっ?? へぇぇぇっ!!??」
これが、私の運命を変える初幸田飯寿斗との破滅的な出会いだった。




