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HYDRA CHRYSALIS -SINGULARITY- (ヒドラ・クリサリス シンギュラリティ) ―進化は臨界点を越え、世界そのものが書き換わる―  作者: Nao9999


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第6話 境界

第6話になります。


進化は、選択ではありません。


気づいた時には、

もう戻れない場所まで来ている。


それでも――


人であることを、選べるのか。

HYDRA CHRYSALIS -RE:GENESIS-

第6話 境界


静かだった。


あれほど激しかった戦場が、

嘘のように。


「……終わった……のか」


誰かが呟く。


榊は立っていた。


だが――


動かない。


水が、まだ漂っている。


身体の周囲に。


意思を持つように。


「榊……?」


仲間が近づく。


恐る恐る。


「大丈夫か……?」


返事はない。


榊の目は、

どこも見ていない。


「おい……」


一歩、近づく。


その瞬間――


水が動いた。


鋭く。


「っ!!」


咄嗟に後退する。


水が止まる。


攻撃ではない。


だが――


明確な拒絶。


「……近づくなってか」


誰かが呟く。


空気が張り詰める。


「……榊?」


もう一度呼ぶ。


だが。


その時。


榊が動いた。


ゆっくりと。


顔を上げる。


「……ああ」


声が出る。


だが違う。


どこか遠い。


「……いるな」


海の方向を見る。


誰もいない。


だが確かに。


“何か”がいる。


『接続、完了』


声。


今までとは違う。


はっきりと。


近い。


「……来いよ」


榊が呟く。


その瞬間。


世界が変わった。


―――


音が消える。


風が止まる。


すべてが静止する。


色が薄れる。


そして。


“海”があった。


目の前に。


ありえない距離で。


「……ここは」


現実じゃない。


だが夢でもない。


境界。


その中央に。


一つの存在がいた。


人の形。


だが、人ではない。


「……お前か」


榊が言う。


それは答えない。


ただ、見ている。


静かに。


深く。


「……水城か」


その名前に。


わずかに、揺らぎが生まれる。


肯定でも否定でもない。


だが――


“理解”した。


『個体、確認』


声が響く。


直接。


頭の中に。


「……なんだよ」


榊は笑う。


「観察してたのはお前か」


『進化、段階到達』


会話ではない。


だが意味は分かる。


「……は?」


『選択、要求』


その言葉で。


空気が変わる。


「選択……?」


水城が、動く。


ゆっくりと。


近づく。


圧倒的な存在感。


「……なんだよ」


榊は動かない。


逃げない。


『同化』


一言。


それだけ。


「……は?」


『人間、終了』


静かに告げられる。


『進化、継続』


その意味は明確だった。


「……ふざけんな」


榊の声が低くなる。


「それで全部解決みたいに言うなよ」


水城は止まる。


『拒否、確認』


「当たり前だろ」


榊は睨む。


「全部捨てて強くなるとか」


拳を握る。


「それ、ただのバケモンだろ」


静寂。


波が揺れる。


『不合理』


返答。


だが否定ではない。


「うるせぇよ」


榊は笑う。


「人間なんて、そんなもんだろ」


ゆっくりと。


一歩踏み出す。


「でもな」


水を見る。


「それでも守りたいもんくらいあるんだよ」


仲間の顔が浮かぶ。


さっき死んだやつの顔も。


「……全部は捨てねぇ」


静かに言う。


その言葉に。


水城が、わずかに揺れる。


『未完成』


評価のような言葉。


「……上等だ」


榊は構える。


水が集まる。


だが、今までとは違う。


暴れない。


制御されている。


「それでいい」


小さく呟く。


「全部手に入れる気はねぇ」


水が形を作る。


安定している。


「人間のままで、やる」


その瞬間。


世界が戻る。


―――


現実。


音が戻る。


風が吹く。


「……っ!!」


榊が息を吐く。


膝をつく。


「榊!!」


仲間が駆け寄る。


今度は、水は動かない。


拒絶しない。


「……大丈夫だ」


榊が言う。


ゆっくりと立ち上がる。


目は戻っている。


だが――


何かが違う。


「……終わってねぇな」


空を見る。


遠く。


海の方向。


そこにはまだ――


“存在”がある。


「……やるしかねぇか」


小さく笑う。


その目には、もう迷いはなかった。


―――続く

第6話を読んでいただきありがとうございます。


ついに主人公が“選択”をしました。


人として生きるのか、

進化する存在になるのか。


その答えが、次で明かされます。


次回、最終話です。

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