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親父との自転車泥棒?の思い出

作者: ズラえもん

小学校低学年のころ、私は自転車がほしくて親父にねだったことがあります。

しかしその数年前、癌での長患いの末母が亡くなっているうえ、その時は祖母が半身不随で入院しており、入院費用がかさみ家計は火の車でした!

後添えの母親はパートに出、一回り年上の姉は高校進学をあきらめ就職・・・そんな状況で自転車など買う余裕などあろうはずもなく、私は淋しそうにうつむいていたのです。


そんなある日のことでした。 親父が私を車の隣に乗せ、当時親父の勤める造船会社へ連れて行きました。


「おい! しずかにしとけよ。」


そう言うと親父は、カギの掛かっていない木製の引き戸を開けました。

そこは廃材置き場らしく、わけのわからない機械や鉄くずなど所狭しと置かれていたのです。


”へんだなぁ。 今日のとうちゃん、どうしたんだろう?”


思いながら車の窓から見つめていると、親父の入って行った廃材置き場の片隅に、埃をかぶった子供用自転車が数台あるのが目に入ったのです。

しかし、どの自転車も前のタイヤがなかったり、荷台がねじれていたりと、まともな姿のものはありませんでした!


その中でも比較的状態のいいものを、親父はおもむろに車の荷台へ、そして壊れた部分の部品を他の数台から手際よく取り外し、それも車に・・・


そうです、親父は私がポツリと呟いた自転車のことを気にかけてくれていたのです。


そして、ほとんど会話のないまま家に帰ると、親父は部品を組み合わせ、見事に一台の自転車を完成させました。 

私は父から教えられたとおり、古い歯ブラシに油をつけ、錆びた部分を丁寧に磨きあげました。


親父は言いました。


「よし! できたぞ。 乗ってみろ。」


自転車はスイスイ走りました。


私の嬉しそうな顔を見て、父はさらに嬉しそうに笑っていました。

  

家族には親父の友人からもらったと話し、現在でも誰も真実は知りません。

自転車泥棒は、親父と私だけの男同士の秘密なのです。


こうして生まれた、ところどころ錆びが浮かび、色もばらばらだった私の自転車第1号は、今も親父との思い出を乗せ、私の心の中を走り続けているのです。


 おわり

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