エピローグ 紫の空の向こうへ
紫の雲が晴れ、空には淡い青が戻っていた。
崩壊したナス母艦の残骸は、砂のように消え、街は静けさを取り戻しつつあった。
——戦いは終わった。
けれど、その代償は大きかった。
御園葉は、旧農業センターの屋上から街を見下ろしていた。
かつて紫色に覆われた道路も、ツルも、今はただの枯れ枝のように崩れている。
「……終わったんだ」
隣でルカが呟いた。
御園はスコップを肩に担ぎ、少しだけ笑った。
「……終わった」
ルカは俯き、唇を噛みしめる。
だが、すぐに顔を上げた。
「……ひかりは最後まで自分で選んだ。だったら、私たちは生きるだけだ」
堂島みつばが、包丁を回しながら歩み寄る。
「ナスとの戦いは終わった。でも……これからどうしよっか?生き残りが、何人居るかも解らないし。野菜は世界中にある。次はトマトかもしれないんだからね!」
「いや、それはそれで困るな……」
笠原ケイが苦笑しながらノートを閉じる。
「でも、今回の戦いで得たデータは大きい。拒絶因子の研究が進めば、農業も医学も新しい時代に入る」
御園は遠くを見つめながら言った。
「私たちは、アレルギーを武器に戦った。でも、きっと、これは始まりに過ぎない」
静かな風が吹き抜ける。
ルカが空を仰ぎ、目を細めた。
「ひかり……見てる? 私、もう迷わないよ」
——その時。
空に一筋の流星が走った。
御園は無意識にスコップを握りしめた。
「……なんか、また降ってきそう?」
ルカが笑い、みつばが肩をすくめる。
「まあ、そん時はまた戦えばいいじゃん」
ケイも頷く。
「俺たちはもう、“畑の勇者”だ」
御園は、スコップを掲げた。
「そうだな。掘って、刈って、刻んで……私たちは進む」
陽の光が、御園たちを照らす。
もう、紫の雨は降らない。
だが、もし再び“異形の野菜”が現れるなら。
人類は恐れない。
彼女らが、この星にはいるからだ。
——彼らの名は、《アレルギーズ》。
ナスを拒み、掘り返す勇者たち。
そして今日もまた、世界のどこかでスコップの音が響いていた。
——完——
カクヨムにも、投稿しております。エピローグのみ、若干違います。どちらが良かったか、教えて頂けると、嬉しいです。




