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巡(めぐり) 型落ち魔法少女の通学日記  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
275/280

275『ゾフィー改めカチューシャ』

めぐり・型落ち魔法少女の通学日記


275『ゾフィー改めカチューシャ』





「え、グッチも!?」「!?」



 わけを話すと、ゾフィーが声を上げ、ナースチャは息をのんだ。


「わたしたちも戻れないのよ」「うん」


「え……あ、そうか」


 ゾフィーもナースチャも昭和に住んでいる。といっても昭和の人間じゃなくて、違う時空のロシアからやってきている異次元人。だから、家は志忠屋を経由している。志忠屋が無くなったら帰れないんだ。


「「「はぁ~~~」」」


 ため息つく三人の影は道路に長く伸びて いつの間にか黄昏時。


 秋の日は釣瓶落とし、心細い。


「……仕かけられてるわね、これは」


 ヒソヒソと、でもキッパリとゾフィーは言う。


 そして、決意したっぽく腕を組むと、キラリとカチューシャが輝いた。


「敵はKOD、キングオブダークネス、腹をくくるしかないわよ!」


 組んだ両手を腰に当て、まるで、敵を前にしたウルトラマン! いや、ウルトラの母!


 グ~~~~~~~~(〃ω〃)


「「ん?」」


「アハハ……二駅分歩いてきちゃったから(^^;)」


「そうね、そろそろ日も落ちてきたわね……よし、秘密基地に行こう!」


「「秘密基地?」」


「ちょっとテレポするわよ!」


「「う、うん!」」



 ポワン……☆☆☆



 意気込みのわりに可愛いエフェクトをさせ……景色が切り替わる。


「え、石垣……」


 お城とかのそれとは微妙に違うんだけど、きちんと組まれて古びたそれは、宮之森城に負けず劣らずゆかし気。振り返ると四車線の坂道で、車が走って歩道を人が歩いてる。


「ちょっと下がってみて」


 言われて後ろに五歩六歩……歩道の縁石まで下がると、石垣の上に十字架載せた緑のドームが現れた。


 いっしゅん外国に来たのかと思った。


「東京は神田、駿河台に明治の昔よりビザンチン様式の偉容を誇っております、日本最大のハリストス大聖堂、通称ニコライ堂でございま~す」


 ツアーガイドみたく指し示すゾフィー。東京までテレポしちゃったんだ。


「……の下が、わたしの秘密基地。入るわよ。セイ!」


 両手で二つ、両足でもう二つの石垣を器用にタッチする。


 壁に張り付いたヤモリを連想して笑いそうになるんだけど、その暇もなく石垣が動いた!


 グゴゴゴ……


 鈍い音がして、教室のドアほどの入り口が開いた!


「早く入って」


「う、うん」


「……ゾフィーはロシアの女帝だから、こういうロシアっぽいところを秘密基地にしたわけ?」


 ナースチャが質問する。


「それもあるけど、江戸の昔は、定火消の屋敷があったのよ。今でいえば東京消防庁、霊的に防衛能力が高いところだから。さ、奥に入って」


 少し通路を行くと、もう一つのドアがあって、そこは手をかざすだけで開いて中に入る。


「「おお……」」


 教室二つ分くらいの空間は天井が高く、実験装置みたいのやら錬金術の道具みたいのやらが並んでいて圧倒される。


「実用的に作ってあるから、くつろげる場所が狭くて……」


 部屋の真ん中に校長室にあるような応接セットがあって、とりあえず腰掛ける。


 ウィーーン


 奥の方で音がしたかと思うと、ファミレスの配膳ロボットみたいなのがやってきた。


「とりあえず、スープとピロシキで。やることをやったら、あらためてBSBJ(美少女戦士冒険巡礼隊)発足よ」


「あ、うん」「うん」


「「「いっただきまーす!」」」


 とりま、五分ほど無心にピロシキをいただく。


 わたしは単純なものだから、食べて寛げたら、それでリラックスしてソファーに深々と沈んでしまう。


「ここは気を引き締め、背水の陣でかからなければならないわよ!」


「「う、うん」」


 沈めた体を引き起こし、引き締まったゾフィーの顔に向き合う。


「これまでは、ゾフィーの愛称でやってきたけど、これからは名乗りを変えるわ」


 …………今までにない真剣な表情に、ナースチャもわたしも息が止まりそうになる。


「ここからのわたしは、エカチェリーナ二世よ!」


 ムグ


 今の今まではロシアに嫁ぐ前のゾフィーで通していたけど、いよいよ、女帝の名乗りを上げるんだ!


「あの……」


 ナースチャがおずおずと声を上げる。


「エカチェリーナ2世アレクセーエヴナかしら、それともラテン語読みでイカチリーナ・フタラーヤ・アレクセーエヴナなのかしら、えと……どっちにしても長くて。だから、やっぱり陛下と呼ばなくちゃならないのかしら……」


「あなたたちから、そんな畏まった呼ばれ方をしようとは思わないわ」


「では、なんと?」


「この瞬間からは、カチューシャと呼んでちょうだい!」


 キラリ……☆


 ゾフィーの、いやカチューシャの瞳と頭のカチューシャがキラリと光った。




☆彡 主な登場人物


時司ときつかさ めぐり   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる

時司 こたえ         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉のすぐりになる

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子ロコ         3年1組 クラスメート

辻本 たみ子            3年8組 

高峰 秀夫             3年6組 

吉本 佳奈子            3年4組 バレー部

横田 真知子            3年8組 リベラル系女子(MITAKA初代代表)

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)

カチューシャ            エカテリーナ二世ゾフィー・アウグステ・フリーデリケ

ユリア               ナースチャを狙う魔法少女

KODキングオブダークネス    魔王 手下に四天王たち 

安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目

藤田 勲              3年学年主任

先生たち              花園先生:1・2年の時の担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史・3年1組担任:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている

早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん

時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  

妖・魔物              アキラ  戦艦石見アリヨール  藍(アオ、高松塚の采女)    

その他の生徒たち          滝沢 栗原 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー) 高石(文化委員)

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

 

  

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