251『ああぁ、ペコさん……』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
251『ああぁ、ペコさん……』
タキさんがグラスを取り上げ、やっとペコさんは水を飲むのをやめた。
チャプン……チャプン……
椅子に浅く座って天井を睨んで……いや、意識を失ってる(;'∀')。
「しばらくはこのままやなあ……」
ペコさんの後ろに立って松の根っこみたいな腕を組むタキさん。
「い、いったいどうなっちゃったんですか……(;'∀')?」
「気を落ち着かせたろ思て、那智の御神水を飲ませてやったんやけどな。やっぱりプレッシャーが大きすぎて……まあ、一種のパニックや」
「え、え、それって……」
心臓がドキドキしてきた。これまで、ペコさんはいろんなところで助けてくれた。正体はよくわからないけど、しかるべきところからわたしのサポートを依頼された忍者的なガーディアン。よく働いてくれて、何度も危機を救ってくれた。でも、ソ連のユリアが現われて、ナースチャがやってきて、ゾフィーまでやってくると、ちょっとキャパオーバー。
ナースチャもゾフィーもけして悪さをするような子たちじゃないんだけど、ナースチャは守ってやる対象。ゾフィーは暴走しないように警戒しながら、暴走しない範囲においてはガードしてやるというか見守ってる感じ。わたしには仲のいいクラスメートなんだけど、それは、やっぱりペコさんが……ああ、なんか、わたしって頼り過ぎ……でも……だって……
「おまえも、水飲め」
「う、うん……」
「ちょっとだけやぞ」
グビ
!!?
一口飲むと、スッと気持ちが落ち着いて……するともっと爽やかになりたくて喉が動きそうになるんだけど、グッと堪えて、グラスを置いた。
「おい、おまえら、ペコを連れてったれ!」
タキさんが後ろに声を掛けると、カウンターからアイ・マイ・ミーの三人が顔を覗かせ、おそるおそるペコさんを奥のドアの向こうに連れて行った。
「しゃあない、儂が代わりに話したる……」
「は、はひ」
「じつはなぁ……おまえらが『美少女戦士隊、または美少女冒険隊、あるいは美少女巡礼隊』に目覚めて、ドラゴンやっつけてしもたやろ」
ゴクン(-_-;)
「やっぱりあれがぁ……」
「あれで、魔皇帝っちゅうのがおまえらに目ぇつけよってな」
「え、エンペラー オブ ダークネス!?」
「せや、エンペラー オブ ダークネス、ここからは略してEODて呼ぶけどな」
「EOD……」
「まだまだ『ちょっと気にかかる』っちゅう程度のもんやけど、ときどきチョッカイ出してくるようになる」
ちょっとって、どの程度……(((◎△◎)))?
「おまえらの出方次第」
「わたしらの?」
「魔族には『敵の出方論』っちゅうのがあってなぁ、敵の強さや出方で変えてきよる」
「それって……」
「まあ、EOD自身が出てくることは無いと思うねんけど、まだまだキング級は出てきよるやろ」
「え、それを、わたしらが相手しなくちゃいけないとか……(;'△')?」
「それだけやない、ゾフィーを本気で覚醒させてEODと勝負させたら、この世の終りや」
「ああ…………」
ゾフィーの本性はエカチェリーナ二世、最強のロシアの女帝、それが時空移動と位相転換をして、この昭和の宮之森に現れたんだ。
「せやさかいな、ゾフィーに真の覚醒をさせんと、立ちはだかってくるEODの眷属どもを成敗せなあかんのや」
「そ、そんなぁ……」
「まあ、おまえらには学校があるさかい、ペコらが正面に立ちよる」
立つって言われても、さっきのペコさん見たら、めっちゃ心細いんですけど。
「それでな……」
タキさんが腰を上げると、奥のドアから三―が顔を出す。
「ペコさん、なんとか落ち着きました」
「お、ごくろう。例のもんは?」
「はい、こちらに」
マイが差し出したのは……え?
「それ、高松塚の宝剣?」
「ああ、ちょっと今のペコには重すぎるんでな、おまえが使え」
「ええ、わたし、如意持ってるし!」
「あの耳かきはサブウェポンにしとけ、というか、如意と二刀流や」
「宮本武蔵じゃないんですけど!」
「ペコには、見合うソード……とは限らんけど武器を渡しとく」
ズチャ
テーブルに宝剣が置かれる。
「あ、ちょ……」
コト
アイがなにか置いたかと思うと、山盛りの海幸山幸のパスタ!
「儂の花向けや、モリモリ食うて、しっかりがんばれ」
「「「グッチ、ガンバ(⌒∇⌒)」」」
アイ・マイ・ミーもメイドみたいな決めポーズ。
夏休みは終盤に入って、とんでもないことになってきた(-_-;)。
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 3年1組 クラスメート
辻本 たみ子 3年8組
高峰 秀夫 3年6組
吉本 佳奈子 3年4組 バレー部
横田 真知子 3年8組 リベラル系女子(MITAKA初代代表)
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
カチューシャ エカテリーナ二世
ユリア ナースチャを狙う魔法少女
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 3年学年主任
先生たち 花園先生:1・2年の時の担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史・3年1組担任:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ 戦艦石見 藍(アオ、高松塚の采女)
その他の生徒たち 滝沢 栗原 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




