250『ペコさんに呼び出される』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
250『ペコさんに呼び出される』
あれ…………?
カーテンを開けて違和感。
なんだろうと頭を巡らせると……分かった。
小学生たちの姿が見えないんだ。
8月の25日は、小学校の始業式。
特に意識してるわけじゃないんだけど、小学生どもが暑いさ中、汗びちゃで登校しているのを二階の窓から睥睨するのは、ちょっと優越感。昭和の学校に通ってるわたし、始業式は9月1日だからね。
時司巡というのは少し根性悪なのかもしれない。
MSスマホで調べてみると『この地域の学校の始業は9月1日に変更されました』とAIが答える。
くそ。
『なお、授業時間数を確保するため、一日当たりの授業時間を増やすことになっています』
「え?」
『週に何度か7時間目が設定されています』
7時間目…………フフフ(>౪ <)
『ざまあみろ、って思いましたね』
「ち、ちがうよ(''◇'')」
『メグリさんは、魔法少女よりも魔女に向いているのかもしえませんね』
「やかましいわ(≧▢≦)!」
スマホのAIっちゅうのは余計な機能だ!
プルルル
切ろうと思ったら、着信。ちかごろご無沙汰のペコさんだ。
「おひさ~、ペコさん」
『10時ころに志忠屋に来ていただけますか』
「あ、うん、いいよ」
『じゃ、お願いしますね』
「あ……」
なんかそっけない。
外は早くも33度、テレポで行ってもよかったんだけど、歩いていく。
ただし、戻り橋を渡って昭和の方から。知忠屋は令和から行っても昭和から行っても同じ知忠屋。
橋を渡ると3度は低い。だけど、湿度が高いので思ったほどには涼しくなくて……へんだね、学校行くときはそれほど苦にはならないけど、夏休みだと、不満と言うかこらえ性が無くなる。
ハンカチで二度ほど汗を拭いて知忠屋。
準備中の札がかかってるけどかまわずに入る。
「おこし……営業前やから、勝手にやってくれ」
「あ、これ、すこし遅くなりましたけど……」
仕込みで忙しいタキさんに沖縄土産を渡すと「おおきに」と返事があって水だけは出してくれた。
「ごめんね、呼び出して」
「ううん、こんなことでもないと外に出ないから(^_^;)」
「じつは、ナースチャとゾフィーのことなんだけど……」
「ああ……」
「やっぱりと思った?」
「あ、少しね(^_^;)」
「あなたたち、帰りの船で『美少女戦士隊、または美少女冒険隊、あるいは美少女巡礼隊』てのになっちゃったでしょ?」
「あ、ああ……」
帰りのフェリー、夕暮れ間近の海で時間が停まって、波間から漆黒のドラゴンちゅうのが出現。三人で魔法少女戦士に変身してやっつけたんだ。
「あれがね……」
あ、晴天もなんか言ってた(239『どうする沖縄のお土産!?』)ような気がする。
「カチューシャ外したでしょ」
「あ、でも、あれは……」
「そう、漆黒のドラゴン相手だからリミッター解除しないと太刀打ちできないから、仕方ないんだけどね……」
「でも、ドラゴンやっつけたら、三人ともカチューシャつけ直したわよ」
「でもね、あれで、開かれてしまったのよ」
「なにが……?」
なにがと聞きながら、分かってはいるんだ。晴天が言ってた、あのドラゴンは「キング級……まだ、その上に、エンペラー級や魔皇帝(エンペラー オブ ダークネス)級てのがあるって。
「そいつらとの戦いが始まる。あんたたち三人はマジで『美少女戦士隊、または美少女冒険隊、あるいは美少女巡礼隊』として戦わなきゃならなくなった」
「そんな……」
「そして、その戦いの中で、ゾフィーは覚醒してシン・エカチェリーナⅡ世になってしまうのよ!」
「それって……」
「ちょっと水を飲ませて……」
「う、うん」
タキさんが入れてくれた水をグビグビ呑むペコさん。
グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ…………
「え、ちょ……ちょ……」
ペコさんは200CCにも満たない水を果てしなく飲み続けていく!
グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ グビグビ…………
「おい、ペコ!」
カウンターの向こうからタキさんがぶっ飛んできた!
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 3年1組 クラスメート
辻本 たみ子 3年8組
高峰 秀夫 3年6組
吉本 佳奈子 3年4組 バレー部
横田 真知子 3年8組 リベラル系女子(MITAKA初代代表)
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
カチューシャ エカテリーナ二世
ユリア ナースチャを狙う魔法少女
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 3年学年主任
先生たち 花園先生:1・2年の時の担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史・3年1組担任:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ 戦艦石見 藍(アオ、高松塚の采女)
その他の生徒たち 滝沢 栗原 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




