表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡(めぐり) 型落ち魔法少女の通学日記  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
244/280

244『大阪の呪い』

めぐり・型落ち魔法少女の通学日記


244『大阪の呪い』 





 今日はなんと空を飛んでいる!



 お祖母ちゃんは魚が泳ぐようにスイスイと! わたしは魔女が使うような箒でヨタヨタと!


「これって魔女と変わらないんだけどぉ!」


「そりゃあ初心者だからね、空を飛ぶには道具が要るさ。空を飛ぶのはGCって言って自分にかかってくる引力をコントロールすることなんだ」


「CG?」


「GC。グラビテーションコントロール、いっちょまえの魔法少女なら何も使わずに飛べるけど、初心者は箒がいるのさ」


「ちょっとお股が痛いんだけど(^_^;)」


 バットのグリップのとこくらいの幅しかないんで、しみじみ痛い。


「箒は引力をカットする道具だから、ただ跨ってりゃいいのよ。乗ってるって感覚だと、つい力が入って、箒の圧を受けちまって股ぐらのとこで重力を感じてしまうのさ。まあ、慣れだよ慣れ、自転車に乗れたり泳げたりするのと同じことさ」


「ああ、うん」


「すぐに慣れる、慣れたらバットに換える」


「バットぉ!?」


「たいてい、それで感覚が掴める。その次はお祖母ちゃんみたいに何もなしで飛ぶ」


「時間かかりそう(^△^;)」


「今までだって、戦ってるうちに少し飛んだりしてるんだよ」


「え、そうなの?」


「ああ、敵の攻撃を避ける時にジャンプしてるだろ。蹴りを入れる時なんかもさ」


「あ、ああ……そう言えばあ」


「さあ、もちょっと南に行くよぉ」


「あ、うん」


 いま飛んでるのは天六の事件の12年後。もう三か月で戦争もおしまいっていう大阪。


 例の天六を真下に通り過ぎて大阪市の南端に近いところを飛んでいる。


 キラ


「あ、なんか飛んでくる」


 大和川の向こう、海の方から進路を変えて飛んでくるのがキラッと光った。


 ブォ~~~ン


 長閑と言っていいくらいの爆音を響かせて、こちらに進路をとって来る。


 旋回するときに少し機体を傾けるのでシルエットがハッキリ分かって……B29だ!


 晴天に妖退治につき合わされた時、大阪城の上空に見た銀翼の悪魔! 


 明日は終戦だという朝に、米軍はダメ押しの空襲を仕掛けてきて大阪城から西の地区は壊滅して、大勢の犠牲者が出たんだ。その数日前には『我々は民間人を敵とするものではありません』なんて大量のビラを撒いた直後にだよ。


 だから、B29だと分かって、無性に腹が立ってきた。


「言っとくけど、いま飛んでるのは令和に繋がる時間軸の世界だからね、手出しをすると歴史が変わってしまう。見ているだけだよ、いいね」


「う、うん」


 返事をするとお祖母ちゃんは、ぐんぐんB29に近づいていく。


「お祖母ちゃん、あんまり寄ったら撃たれてしまうよ」


 B29は上下左右前後にいっぱい機銃を積んでる。見つかったらハチの巣どころかミンチにされてしまう。


「だいじょうぶ、あえてその気にならないかぎり空飛ぶ魔法少女はステルスだから」


 グィ~~ン


 ますます近づいてB29の腹の下にまわる。


 コクピットや、あちこちの銃座の窓から下を覗いてるアメリカ兵の姿が見える。


 思わず傍まで寄って顔を見てしまう。


 若い……せいぜい二十代、中にはハイティーンじゃないかってのも居て、ひょっとして訓練を兼ねた偵察飛行? とか思った。


 ん?


 目が合ってしまった!


 アワワワ!


 ドン


 B29のドテッパラを蹴って即離れる! 


 なんか、慌てて四方を見渡す米兵たち、機銃をグルグル回しておっかない!


「調子に乗るんじゃないよ!」


 これは一発来るんじゃないかと思ったけど、あげた手をそのままにして、お祖母ちゃんの目はB29のお腹に向けられた。


 いつの間にかお腹の爆弾倉のハッチが開いている。


 そして、そこから姿を覗かせたのは……軽自動車ほどの巨大な爆弾……いや、原爆だ!


 たしかファットマン(太っちょ)とかいうやつで、広島、いや長崎に落とされた奴!


 そいつは、信じられないくらいゆっくりと頭を下にして落ちていく。


「離れるよ!」


「うん!」


 冗談じゃない、あの原爆が炸裂したら、空を飛んでいたって間に合うもんじゃない。閃光と爆風で粉みじんにされてしまう! 蒸発してしまう!


 ドオーーーーーーーン!


 やがてものすごい炸裂音と空気を震わす衝撃がやってきた……けど、なんか違和感。


 眼下の大阪の街には大きなキノコ雲がたっているんだけど、原爆のそれと比べると明らかにショボい。


「え……失敗作?」


「模擬原子爆弾だよ」


「え、模擬?」


 模擬といったら模擬試験くらいしか思い浮かんでこない。


「原爆は投下するのも命がけでね、ウカウカしてると巻き込まれる。それで、原爆と同じ形、同じ重さの爆弾を落として練習したのさ、50発ほどあちこちにね。模擬爆弾だけど、しっかり5トンも火薬が入ってる」


「5トン爆弾……」


「メグリ、大阪出身の総理大臣て知ってるかい?」


「え、大阪?」


 大阪は東京の次に大きな日本の大都市、たしか人口は800万くらい、総理大臣くらい……え、思い当たらない。


 女子高生って一般的に社会科は苦手、だからというんじゃないけど、わたしも総理大臣と言われて思い浮かぶのは10人もいない……あ、いまの総理大臣が鳥取というのは憶えちゃったけど。


 総理大臣が大阪弁で答弁してる……のは聞いたことが無い。


「幣原っていう人が半年やったんだけど、それっきり、人口比で見ると不思議なくらい総理大臣が出ていないんだ」


「え、なんで?」


「いまの模擬原爆でね、将来は総理大臣になるはずだった少年が亡くなってる」


「ええ!」


「8月14日の空襲でも京橋で女学生が亡くなっていてねぇ、この子は、日本初の女性総理になるはずだった。その子の娘も総理大臣になって……まあ、娘にまでいくと確率の問題だけどね」


「うそ……」


「魔法少女の中には『大阪の呪い』なんて言う者もいるんだけどね、その娘が総理になっていれば、令和7年の総理は確実に現在いまのあいつじゃ無かっただろうなんて言われてる」


「ええぇ……」


「まあ、それだけ戦争って言うのはロクでもないもんだっていうことなんだけどね……さあ、次は少し戻って、天六事件の後始末を追いかけるよ」


「う、うん」


 今回は下りて何か食べようとは言わなかった。ちょっと気が重いし、昭和20年の大阪に降りてもろくにお店も開いてない。


 六月にしては澄み渡った青空を堪能して令和に戻った。


 戻って調べてみると、あの日模擬爆弾を落としたB29は爆弾投下の直前に鳥にぶつかったという記録が残っていた(^_^;)。


 


☆彡 主な登場人物


時司ときつかさ めぐり   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる

時司 こたえ         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉のすぐりになる

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子ロコ         3年1組 クラスメート

辻本 たみ子            3年8組 

高峰 秀夫             3年6組 

吉本 佳奈子            3年4組 バレー部

横田 真知子            3年8組 リベラル系女子(MITAKA初代代表)

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)

カチューシャ            エカテリーナ二世ゾフィー・アウグステ・フリーデリケ

ユリア               ナースチャを狙う魔法少女

安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目

藤田 勲              3年学年主任

先生たち              花園先生:1・2年の時の担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史・3年1組担任:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている

早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん

時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  

妖・魔物              アキラ  戦艦石見アリヨール  藍(アオ、高松塚の采女)    

その他の生徒たち          滝沢 栗原 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ