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巡(めぐり) 型落ち魔法少女の通学日記  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
242/280

242『昭和の天六商店街』

めぐり・型落ち魔法少女の通学日記


242『昭和の天六商店街』 





 目の前に巨大な赤ちょうちんが浮かんで、一瞬浅草かと思った。


 参詣道って三文字だけでわたしの背丈を超えてるしね。


 その三文字がゆっくり上に昇っていって、つまりは、わたしとお祖母ちゃんがゆっくり下降して巨大ちょうちんが三階建の窓くらいの高さになって地面に着地した。


 ガヤガヤガヤガヤ ペチャクチャペチャクチャ ウフフ アハハハ ガヤガヤガヤ


 とたんに四方から人の声が湧いてきておたついてしまう(''◇'')。


 人の声は、すぐに実態を持って、わたしとお祖母ちゃんの左右を行き来する。


「このまま歩くよ」


 言われて巨大赤ちょうちんの下を潜って前に進む。首を捻りながら巨大赤ちょうちんの字を確認すると『参詣道』の横に『大阪天満宮』、その下に『繫盛亭』の矢印がぶら下がってる。


「ひょっとして、大阪?」


「そうだよ、日本で一番長い商店街さ。端から端まで歩いたら3キロ近くある」


「3キロ!?」


 3キロと言ったら、うちの寿町駅から学校のある宮之森駅間と同じくらい、駅三つ分。


「うん、すぐ横に地下鉄が走っててね、南森町・扇町・天神橋筋6丁目、ちょうど駅三つ分」


「ええ、歩くのぉ?」


「ああ、この空気感を分かっておいた方がいいからね、人にぶつかるんじゃないよ」


「あ、うん」



 今日は、お祖母ちゃんにそそのかされて、夏休み時空旅行の第一弾。



 場所は着いてのお楽しみということで、天六商店街を北に歩いている。


 大阪の商店街は二年の時、安倍晴天に連れられて玉造の日之出商店街を歩いて以来。日之出商店街はこれほど賑やかじゃなかったし、道幅も狭いし人もこんなには多くなかった。まだ行ったことは無いけど道頓堀といい勝負じゃないかと思う。


「まあ、大阪の原風景の一つ……」


 ガタンゴトンガタンゴトン!


 お祖母ちゃんの声は頭上の騒音でかき消される。見上げるとJRの高架になっていて右側に駅の券売機。商店街をまたいで天満の駅。


 そこを過ぎると、それまでの倍ほどの賑わい。


 パチンコ屋・立ち食いうどん・ラーメン屋・花屋・靴屋・牛丼屋・本屋・ハンバーガー・おもちゃ屋・ギフトショップ・ファンシーショップ・うどん屋・ピザ屋・文具屋・焼き肉屋・居酒屋・喫茶店……それぞれの店の前には最低でも二三人、多いとこで十人くらいがウィンドウを眺めたり、連れの人と漫才みたいに喋っていたり、店員さんとやりとりしてたり。それで、道幅は日之出商店街くらいになってしまってるんだけど、行き来する人は器用に躱してぶつかることが無い。


 お店を羅列したのでも分かると思うんだけど、飲食店がメチャクチャ多い。うどん屋なんて、ほんの50メートルほどに三軒もあったし。


「まあ、今の時代だから年寄りが半分近いけど、けっこう若いのも歩いてるだろ」


「あ、うん。高校生くらいの子もいるし」


「この先の天六駅は阪急と地下鉄の乗換駅だし、扇町とか南森町に向かう人は天六で下りて歩く人が多いんだよ」


「ああ、商店街は涼しいもんねぇ」


 ずっとアーケードになってるし、お店は冷房効かして店の前開けてるし、電車で地下を走るよりも涼しくて楽しい。


「さあ、ここからはタイムリープ。飛ぶよ」


「う、うん」


 お祖母ちゃんとリープするのは初めてじゃないけど、商店街にアテラレたのか、ちょっとドキドキする。


 ガヤガヤガヤガヤ ペチャクチャペチャクチャ ウフフ アハハハ ガヤガヤガヤ


「え…………もとのまま?」


 相変わらずの賑わい、歩く人も同じようににぎやかで……と思ったら、ちょっとちがう。


 ファッションが古くて少なからぬ人たちが着物を着ている。見上げたアーケードはなんちゅうかキャンパス生地みたいで、レトロというかショボくて切れ切れ。アーケードというよりはお店単位の日よけ。足元は手入れはされてるけど土の道。で、すれ違った着物にハンチング帽のオッサンが――けったいなやっちゃなあ――という目で見ていった。


「あ、変えなきゃ……」


 お祖母ちゃんが呟いて指を動かすと、二人とも服装が変わった。


 お祖母ちゃんは鎌倉でお昼を食べた時の女将さんみたいな和装で、わたしは丈の長いセーラー服。


 しばらく歩いて行くと商店街は電車通りで中断して、その電車通りは、ここで三つに分岐する交差点。


 何台も路面電車が行き来して、その上には綾取りを思わせる電車の架線が広がり、右正面には『新京阪電車』のネオン看板を載せたレトロなビル。周辺は大半が二階建ての瓦屋根で所どころに三階建てくらいの小さなビルが覗いている。交差点に信号機が付いて、そのうえ、交差点の真ん中では詰襟のお巡りさんが交通整理。数えると大小六つも道路が交差していて、ちょっと複雑。


 大正時代?


「昭和8年の天六交差点さ」


「昭和8年……1933年?」


「お、換算できるの?」


「あ、日本史で習った。リープする時便利だから覚えた(^_^;)」


 学校で習ったことってテスト終わったらたいてい忘れちゃうんだけど、明治・大正・昭和の換算は覚えた。必要があると人間憶えちゃうものなんだ。ちなみに、昭和は25、大正は11、明治は67を足すと西暦になる。


「ちなみに、あと半年すると上皇陛下がお生まれになる」


「ということは……えと……6月か……」


「おや感心、憶えてるんだ」


「あ、まあね……(^_^;)」


 小学生の頃天皇誕生日は12月23日で、冬休みの予告編みたいで嬉しかったので憶えてる。


 で…………92年も前の大阪に来て、何をしようというんだろう?




☆彡 主な登場人物


時司ときつかさ めぐり   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる

時司 こたえ         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉のすぐりになる

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子ロコ         3年1組 クラスメート

辻本 たみ子            3年8組 

高峰 秀夫             3年6組 

吉本 佳奈子            3年4組 バレー部

横田 真知子            3年8組 リベラル系女子(MITAKA初代代表)

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)

カチューシャ            エカテリーナ二世ゾフィー・アウグステ・フリーデリケ

ユリア               ナースチャを狙う魔法少女

安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目

藤田 勲              3年学年主任

先生たち              花園先生:1・2年の時の担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史・3年1組担任:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている

早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん

時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  

妖・魔物              アキラ  戦艦石見アリヨール  藍(アオ、高松塚の采女)    

その他の生徒たち          滝沢 栗原 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  



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