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巡(めぐり) 型落ち魔法少女の通学日記  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
202/280

202『雪国・2』

めぐり・型落ち魔法少女の通学日記


202『雪国・2』   





 雪国…………?



 川端康成はうる憶え、ノーベル賞の『雪国』もロコに言われて――あぁ、そんなのあったか――という程度。


 そのせいか、突然ワープしたそこは、深々(しんしん)と雪が降るだけの一面の雪原。


 ただ、ロクなもんじゃないという気持ちはあって、右の耳に手をかざす。


 シュッ! カキーーン!


 衝撃が二つ。


 前方から光の速度かと思うようなものが飛んできて、とっさに右耳の如意(高松塚で青さんからもらった武器)を取り出し、弾き返しながら左に移動!


 弾き返したそれは、ブーメランのようにクルクル回って20メートルほど先で目の高さに静止……あ……高松塚の宝剣!?


 宝剣に気づくと、それを中段に構えるユリアが実体化した。


「フフ、岬じゃ、これでクソババアの右腕を切り落とせたんだけどね……お前も力を付けたもんだ」


「その剣は高松塚の青さんが言っていた宝剣でしょ、さっさと返しなさいよ!」


「いやなこった。これは魔封じの宝剣、魔法少女にも有効だってことは、こないだの戦いで分かったからね。さっさと宝剣の錆になっておしまい!」


 ガキーン!


 剣が唸ると同時に衝撃、ユリアは剣を振りかぶると同時に距離を詰めてくる! わたしは、それを辛くもはじき返して、全速力で駆けるしかなかった。駆けて駆けて、ユリアとの位置を変えることだ。位置と距離が変われば、勝機が見えてくる。


 しかし、逃げても走っても、走っても躱しても、この雪国は延々と雪原が続く!


 カキーーン! ガキガキ! シュイ―ン! ガキーーン!


 打っては離れ、離れては打って、それを何べん繰り返しても、雪原は続いていく……この雪国って……なんなの!?


「ここは世界最大の雪国さ」


「世界最大の雪国?」


 シュイ―ン! ガキーーン!


「シベリアよ」


「シベリア!?」


 そうだ、ナースチャがシベリアという言葉に青くなっていた。


 カキーーン! ガキガキ!


「そうよ、シベリアというのは永遠の流刑地! 川端の雪国を知らないから、その言霊にシベリアを結び付けてあげたのよ、時司巡はここで果てるの、このソビエトのユリアの力に屈してね!!」


 ガキガキ! シュイ―ン! ガキーーン!


「くそ!」


 ユリアの打撃斬撃はことごとく躱せる……んだけど、こちらの打撃も届かない!


 シュイ―ン! ガキーーン! ガキガキ! カキーーン!


 ウウ……どうやら技能は互角。


 ガキーーン! ガキガキ!


 しかし、スタミナというか耐久力は、ユリアの方が勝っている。


 あの炎熱の万博でも涼しい顔でソ連のコンパニオンをやっていた。岬の戦いでも、戦艦石見やアキラの介入で敗退したとはいえ、わたしとお祖母ちゃんを相手にしつこく攻撃を加えて来た。


 このままじゃ、スタミナ負けしてしまう(-_-;)。


 シュイン! ズザザザザ!


 一撃を躱して、雪原を地上スレスレに飛んで逃げる。


 いっそ、急上昇して逃げようかという気持ちが起こる。地上スレスレでは、いつ地面に接触するか分からず、すごいストレス。


 でも、上昇すればユリアは下の方からも攻撃できて、逃げの姿勢でいる限りアドバンテージはユリアにある。


 ああ、視界の縁が暗くなってきた……ちょっとヤバイ、宝剣奪還どころじゃない。


 え?


 狭まった視野の端っこに三角のサンドイッチが見えてきた……なんでサンドイッチ? そうか、お祖母ちゃんは夕べのサラダをパンに挟んで三つも食べていた。年寄なのに、しっかり食べるんだとか思ってた。


 わたしは、いつものように生協のクロワッサンをコーヒー牛乳で流し込んだだけ。


 だから、サンドイッチの幻影。


 それは、よく見るとカステラみたいなパンの間にアンコが挟んである。


――食べて!――


 思念が飛び込んできて、口元までやってきたそいつをひとカブリ!



 シャララン彡☆彡☆



 星くずのエフェクトがしたかと思うと、公民館の結婚式場、そのスタッフ控室。


「間に合ったあ(;'∀')!」


 だれか抱き付いてきたと思ったら、巫女服のスセリビメ、いや、御神楽采女さん!


「た、助かった……んですよね?」


「そうよ、雪国のフレーズで引っ張られたのよ、あのロシア女に!」


「あ、ありがとうございます」


「わたしの力では、あそこまでは飛んでいけなかったから、あれで助けられたらって……うまくいってよかった!」


「あの、甘いサンドイッチはなんだったんですか?」


「シベリアよ」


「シベリア?」


「日本独自のサンドイッチ、さっきのはコシアンだったけど、羊羹を挟んであるのもあるっていうか、そっちが正統シベリアなんだけどね、とっさのことに間に合わなかった」


「あはは……なんかダジャレの世界ですね(^_^;)」


「駄洒落は言の葉、思いを籠めれば武器にも助け舟にもなるのよ」


「そうなんだ」


「宝剣は残念だったけど、また、なにか方策はあるでしょ」


「そうですね……て、あ、学校始まっちゃう!」


 ええと、宮之森行きのバスは……とっさに控室の時刻表。


「なに言ってんのよ、グッチの力ならひとっ飛びでしょ」


 え、あ、そうだった。


 そして、学校を念じると、あっという間に学校にワープ。


 いきなりクラスの自分の席にワープしたものだから、すぐ後ろのロコをビックリさせてしまった(^_^;)。


 


☆彡 主な登場人物


時司ときつかさ めぐり   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる

時司 こたえ         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉のすぐりになる

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子ロコ         2年3組 クラスメート

辻本 たみ子            2年3組 副委員長

高峰 秀夫             2年3組 委員長

吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部

横田 真知子            2年3組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)

ユリア               ナースチャを狙う魔法少女

安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目

藤田 勲              2年学年主任

先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている

早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん

時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  

妖・魔物              アキラ  戦艦石見アリヨール  藍(アオ、高松塚の采女)    

その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

 

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