181『志忠屋で頼まれごと』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
181『志忠屋で頼まれごと』
学校の帰りに志忠屋に寄ってみようと思った。
ナースチャのことやら魔法のことやら分からないことがいっぱいあるからね。
それに、10円男だけじゃなくて、ナースチャに興味津々な子がいっぱいいるし。ナースチャのこと、ちゃんと分かっておかないと、さらにとんでもないことが起こりそうだし。
そんなこんなを思いながら廊下を歩いていると、一人の女生徒が横に並んだ。
「そこの空き教室に入って」
横顔で言われてビックリ……うちの制服を着たペコさん!
「ペコさん!?」
「話は中で」
ドアの前に立つと、まるで自動ドアのように開いて、ペコさんに続いて入ったら……志忠屋だ!
え、ええ!?
振り返ると、ちゃんと志忠屋の自動ドア。もう一回振り返ると、タキさんが仕込の真っ最中で、シチューの鍋をかきまわしてる。
「……まあ座れ」
後姿のまま命令されて、いつものカウンター席に座る。
ピ
パスタをゆでる時のタイマーを押すと、鍋から立ち上る湯気が停まってしまった。
「メグリも学校やろし、時間停めた」
「時間を……」
「ナースチャのこっちゃ」
「あ、ああ……」
「あいつは、違う時間軸から来た。こっちの世界ではアナスターシア皇女は家族もろとも殺されとる」
「やっぱし!」
「ロシアはエカチェリーナ二世とか、女でも皇位に就けるから、あいつが女帝になってロマノフ朝を再興する可能性がある。やりようによっては、立憲君主制が進んで、ソビエトが短期間で終了するか、帝政ロシアと並んで、こっちのソ連ほどの力を持つことなく衰退していくか」
「そんな大層なことなの……?」
「ああ、17歳のロシア少女が無残に殺されるのを黙って見てるわけにもいかんやろ……」
「う、うん……」
「メグリが覚醒したいうのも意味のあるこっちゃ、この流れは動かしがたいと、儂は思う」
「そ、そうなんだ(;'∀')」
「せやから、メグリ、おまえも気を引き締めてナースチャを護ってやれ」
「ええ、でも……わたしの力って知れてるしぃ」
「そんなことはない」
「ちゃんとコントロールとかできないし」
「慣れたらできる……それに、学校には結界が張られてるし、ペコとかもガードで入らせるし」
「え、ペコさんも!?」
「その制服姿はダテやない」
タキさんが振ると、ペコさんは、こんな顔(^▭^;)して笑った。
ペコさんて……?
「過去の世界に通ぅてるのはメグリだけやない」
「あ、それは……(๑º口º๑; ) 」
アタフタと手を振るペコさん。
志忠屋で普通の人間なのはペコさんだけだと思っていた……いや、きのう戻り橋のとこで普通じゃないとじゃ思ったけど……ああ、頭がついてこない!
「まあ、学校では日本語の上手いロシアのお友だちいう感じで付き合ってたらええ」
「う、うん……」
「せや、せっかく来たんやさかい、ほれ……」
カウンターの下から信玄袋を二つ取り出すタキさん。
「これは?」
「弁当や、保温したある。二人で食え」
「あ、ああ、ども……」
ピピピ ピピピ
タイマーが鳴ると、再びシチュー鍋から湯気が立った。
ペコさんは、まだ志忠屋に用事があるとかで「メグリ一人で学校へ戻れ」と言われ、おっかなびっくりで――学校へ――と思ったら、さっきの空き教室の前に戻っていた。
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
ユリア ナースチャを狙う魔法少女
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




