179『ナースチャ』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
179『ナースチャ』
「Пожалуйста! Помогите!(パジャァオスタ! ロマギニア!)」
ロシア語だ!
たびたびソ連のエージェントに襲われたので、この言葉の響きは一発で分かって、瞬時に日本語に変換された。
『おねがい、助けて!』
声の主は褐色の髪にプラチナブルーの瞳の少女。万博のソ連館のコンパニオンが同じ感じ。ほら、ガガーリンバッジくれたユリアってやつ。バッジは70年代の世界には存在しないICで、それが発信機になってて、花火見物の夜に撃ち殺されそうになった!(049『宮之森城花火大会』)
でも声の主は髪と瞳こそは同じだけど、メチャクチャ怯えて助けを求めて突進してくる。
新聞社を四つもやっつけて高揚してるわたしは、少女を背中で庇って立ちふさがった!
「そこをどけ!」
「Het!」
ユリアの日本語にロシア語で応えるわたし。
その返事にユリアの瞳が一瞬でソ連国旗のように赤くなり、鎌とトンカチの代わりに二発の銃弾のイメージ!
ゾワ
髪の毛が逆立つ!
自分で分かる。このあとピシっと弾けたら、5メートル先のユリアは炎に包まれて弾け飛んでしまう!
ズザ
ユリアは一瞬でジャンプ、電柱を蹴って反動をつけたあと、戻り橋を音速ほどの速さで渡って消えた。
ボ……シュ
その瞬間までユリアが立っていたところにバスケットボールほどの火球が灯って消えた。キャンセルしきれなかった爆裂魔法の余韻だ。
ユリアは瞬間で姿を消したつもりなんだろうけど、わたしは全部トレースできていた。殺そうと思えば、そのコンマ一秒足らずの間に5回は殺せた。
「ど、どうもありがとう」
翻訳魔法なんだろうか、そういうのがかかったままなので、その子の声は普通の日本語で聞こえた。
「だいじょうぶ? ケガはない?」
「ええ、あなたのおかげで……あなたも魔法少女だったんですね。おかげで助かりましたぁ(#'∀'#)」
「あなたもって……あなたも魔法少女なの?」
「いえ、魔法少女は、さっきの女です。ボルシェビキの魔法少女なんです。探知能力に長けているので、さっき見つかって追いかけて来たんです」
ボルシェビキ?
「あ、ロシア共産党、去年改名したところだからボルシェビキって前の名前で呼んでしまって……日本にも魔法少女は居るって聞いてましたが、さっそく助けてもらえるとは……これも神のご加護です」
その子は、サウンドオブミュージックのマリアみたいにきれいに十字を切った。
「あ、よかったら、説明してくれる。あのユリアってのはわたしにも因縁のあるやつなんで」
「その前に、ひとつだけ確認させてください。あなたのファミリーネームはトキツカサなんですね?」
「あ、うん。時司巡」
「よかったぁ、ほんとうによかったあ! 日本に着いたら魔法少女のトキツカサに頼れと言われてきたんです!」
「そ、それはそれは……で、あなたは?」
「はい、ロシア皇帝ニコライ二世第四皇女、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァと申します」
「え、ロシア皇帝第四皇女( ゜Д゜)!?」
「はい、去年ボルシェビキに命を狙われたんですけど、日本政府のお蔭で助かって、先日日本にやってくることができたんです」
「そ、そうなんだ」
さっきまでの高揚感は微妙に冷めてきて、ちょっと面倒なことに巻き込まれたなあという気がしてきた。
「アナスターシャは微妙に長いですから、ナースチャと呼んでください」
「う、うん」
どうしようかと思ったら、戻り橋のところで気配!
反射的にナースチャを背中で庇う!
「ああ、間に合った!」
その声は志忠屋のアルバイトのペコさんだった( ゜Д゜)!
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
ユリア ナースチャを狙う魔法少女
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




