178『「Пожалуйста! Помогите!」と叫ぶ声!』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
178『「Пожалуйста! Помогите!」と叫ぶ声!』
危うく新聞に書かれるのを防いで帰路に着く。
ジィィィィィィィィ…………
頭の奥がしびれてるみたいで、電車に乗っても駅を出て戻り橋を目指しても、どこか頼りない……自分と周囲の景色の間に薄皮が張ったような、VRのゴーグルで仮想世界を見ているみたいによそよそしい。
あれ?
いつものように護岸のGの標(003『ええ! 1970年!?』)が見えて戻り橋が現れるはずなのにGの標が現れない。
左岸のM、右岸のGを認識することで、人には見えない戻り橋が現われて、戻り橋を渡ることで令和と昭和を行き来できる。
もう二年になるので、普通の橋を渡るように当たり前になっていた……標が無くなる、いや、見えなくなるのは初めて。
ちょっと焦った(;゜Д゜)。
昭和の宮之森に通っているけど、自分のリアルは令和にある。
このまま昭和に置いてけぼりになったら帰るところが無くなってしまう。
キョロキョロして、上流側の寿橋を渡る。寿橋は令和にも昭和にもあるリアルの橋だから、当然渡れる。
戻り橋の下は時間が流れているんだけど、寿橋の下は普通に水が流れていて、渡った先はとうぜん昭和の町で、自分の家があるはずのところはただの空き地。
少しだけ踏み込んで川沿いを歩いて見ると……え?
護岸のコンクリートにMの標。
混乱した。
Mの標は令和側にあって、それを認識したら戻り橋が現われて昭和に行ける……で、戻り橋が現れた。
サラサラサラ サラサラサラ サラサラサラ…………
ゆったりと時間が流れる音がして、それは紛れもなく異界の戻り橋。
でも、立っているのは昭和の橋のたもと。不用意に渡ったら昭和よりも古い時代に行ってしまうかもしれない。
だって、Mの標は時を遡る標だからね。
令和から昭和に渡って1972年。その差は53年。
1972年の昭和から53年遡ったら……1919年。
たぶん昭和の前の大正時代。大正は西暦から11を引くんだから……大正8年?
ええと、こないだ関東大震災100周年とか言ってたからぁ……だめだ、大正時代の知識なんか全然ないよ。
さっき、新聞社を周って杉田先生の記事を消しまくった勢いは消え失せて、橋のたもとに立っているのは、元々のわたし。
とりあえず、寿川の向こう側に戻ろう。
回れ右して、速足で寿橋に向かう。
タタタタタタ!
戻り橋を渡って来る足音! それも走ってるし!
かかわりになっちゃダメだ! そう思って目を背けようとした時に、足音は橋を渡り切って叫んだ!
「Пожалуйста! Помогите!(パジャァオスタ! ロマギニア!)」
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




