175『聞いてしまった(;'∀')』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
175『聞いてしまった(;'∀')』
少しまどろみかけてきた時、ドアの開く音がして誰かが入ってきた。
『長瀬さん、少しいいかなあ』
あ、グラマーの妹尾先生だ。
『生徒が寝てるから、静かにね……』
長瀬先生も予測していたようで、奥のデスクでヒソヒソ話し始めた。
『実は……』
先生同士の内緒話……聞いちゃいけないと思うけど、聞いてしまう……聞こえてしまう。
――こんな葉書が来たよ――
――え……なに、これぇ!?――
長瀬先生の声には驚きと軽蔑の響きがあった。
――差出人の住所も名前も無いけど、これは杉野のやつだ――
え、杉野……杉野って、現国の杉野先生?
え…………ええ!?
葉書の文面が見えて息を呑んでしまった!
病院のそれのようにベッドはカーテンで仕切られていて、葉書が見えるはずも無いんだけど、それはハッキリイメージとして浮かんできた。
〔教師と言えど勤務時間外に人が何をしようと自由のはず、それに干渉するのは、一個の独立した人格への謂れなき攻撃であり、厳に慎まなければならない行為であって……〕
え?
――実は、現場を押えた――
――とうとうやったんだね――
イメージが浮かんできた。
大浜市の予備校が入っている雑居ビル、その向かいの喫茶店で妹尾先生は冷めたコーヒーを飲み干すと、レシートと料金を置いて表に飛び出した。
予備校は、講義が終わって生徒たちが出てくるところだ。
待つこと数分、ビルの自動ドアから生徒と談笑しながら出てきたのは杉野先生だ。
「杉野、貴様、やっぱり予備校で働いていたんじゃないか(-ˇ_ˇ-) !」
「ゲ( ꒪⌓꒪)!?」
目を剥く杉野先生。 キョロキョロと目が泳ぎながらも怒りに顔が赤黒くなっていく。
「明らかな服務規程違反だ! これまで、さんざん指摘され注意されてきて、ずっとシラを切ってきたが、さっき、事務所で講師登録していることも確認したぞ!」
「…………」
「武士の情け、学校には黙っておいてやる、これを機に本務に専念しろ……いいな」
「お、おう……(-_-;)」
それだけ言うと、妹尾先生はクルリと踵を返し、夜の駅前通りを駅に向かって歩いていった。
――それで、妹尾先生、どうするつもり?――
――本人に突きつけた――
「貴様が出したんだな!」「知らん!」
ああ……このやり取りで妹尾先生はブチギレたんだ。
えらいことを聞いてしまった。
むろん、長瀬先生も妹尾先生もチョーヒソヒソ声で、並の人間には聞こえない。
でも、魔法少女の血を引くわたしには聞こえてしまう。
それに……具体的な待ち伏せの話しは妹尾先生してないよ。
――実は、現場を押えた――とうとうやったんだね――
そのやりとりを聞いただけで分かってしまったんだ……(;'∀')
ちょっと、自分の能力が恐ろしくなってきた……。
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長 伯父:武藤頼政
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 長瀬(保健部長) 藤野先生(大浜高校) 樫山文男(化学の講師)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




