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巡(めぐり) 型落ち魔法少女の通学日記  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
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166『昭和47年の幕が上がった!』

めぐり・型落ち魔法少女の通学日記


166『昭和47年の幕が上がった!』   





 大晦日のお昼前に三人がやってきた。



 宮司の頼政さんは忙しいので総代さんの息子さんが駅まで迎えに行ってくれて「息子さんかっこよかったねえ!」というのが到着しての第一声だった。


「高峰君も世間の水準で言えば長身のナイスガイですよ」「そうねえ、たみ子も、そうだし」「二人ともバレー部に入ればよかったのに」


 感想は、ロコ、真知子、加奈子の順。


 三人とも、人のミテクレについてはあまり口にしない。それが小学生みたくあれこれ言うのは、大晦日の旅行だということと、秩父山麓の令和の言葉で言うと異世界めいた町と神社の雰囲気にあてられているせいかもしれない。


 社務所に入る前に、拝殿にお参りするのは偉いなあと思ったら「え、ちゃんとお参りしてから入ったよ」とたみ子に指摘される。アハハ、わたしも微妙にテンパってるかも(^_^;)。


 挨拶もそこそこに、世話役さんや氏子有志の人たちと慌ただしくお昼ご飯を頂いて、昨日のわたし同様に巫女服の着付けと共姫の所作や動きの練習。


 それが終わると、正月三が日の授与品(破魔矢やお守り)の説明を受けて、受け渡しの練習。


「世話役さんが八ミリ見せてくださるよ」


 水色袴の神職姿で高峰君が案内してくれて、参集殿で八ミリを見せてもらう。


 スクリーンを立てて、カーテンを閉めて、映写機がカラカラカラと起動すると、なんとも昭和の趣き……って、リアル昭和なんだけど。わずか十分程度の映像を見るだけで、これだけの手間と秘密結社めいた作業があるのは雰囲気だ。


 昭和に通い始めてほぼ二年、移動したり情報を取ったり音楽を聴いたり、令和じゃスマホをひと撫でするだけで済むことが、ひどく手間がかかったり不可能だったり。でも、だからこそ、大げさに言うと「生きてる」って感じがする……なんて思うのは、やっぱり、この町と神社の特別感なのかもしれない。


 え、音が出てない……と思ったら八ミリはサウンドトラックじゃあないんだ。


 でもね、一メートル四方ぐらいの映像は神秘的だ。いまと同じ神社の舞殿。そこに共姫を引き連れて、シズシズと招き姫が現れ、たみ子と同じ衣装、同じ舞を舞う。


 違うのは、四隅で控えていた共姫たちが吸い寄せられるように招き姫の周囲に寄って来ていっしょに舞っているところ。


 そんなに難しい舞には見えなかったけど、交差したり鈴を振ったり足を踏み鳴らしたり、そのタイミングを合わせるのが難しそう。これは合わせるのが大変だ、だから昭和46年では招き姫の一人舞になってるんだ。


「でも、共姫が控えているだけで、ぜんぜん違うよ」


 高峰君がフォローする。やっぱり、彼は人格者だ。10円男とはちがう。


 そういや、あいつどうしてるんだろ、伊勢半でお給料もらって以来姿を見てない。いやいや、去年は冬休み期間中ぜんぜん姿見てなかったし。


 ぼんやりバカのことが思い浮かんでるうちに八ミリは、クライマックスの扉開けになった。


 神職が襷がけで扉の前に立ち、歌舞伎みたいな仕草で大げさにゆっくりと扉を開ける。音はぜんぜんしないんだけども、観衆の人たちが湧きたっているのが分かる。背後で焚火に映し出されてる笛や太鼓もアップテンポになった感じ。

 扉が開いて、そこから何かが出てくるという演出も感じも無いんだけど、雰囲気なんだろうね。みんな「ウォーー」って感じで沸き立ってるのが分かる。


 これ、レーザーとかプロジェクションマッピングとかやったら映えるだろうなあと思った。



 そして、紅白歌合戦も最終組の対決の11時過ぎ、いよいよ本番!



 わたしは、ダメもとで、ちょっとだけ魔法をかけた。


 わたしの魔法って、壁一枚向こうの声が聞こえる程度。調子がいいと映像として見えることもある。小さなものを動かした……あれは、安倍晴天とかのおせっかいが入ってると思う。まあ、自分に対する景気づけみたいなものさ。


 招き姫のたみ子が蹲踞の姿勢から立ち上がって、神楽鈴をひと振り。


 シャラン


 え?


 自分も他の三人の共姫も立ち上がって、扇を構え鈴を鳴らして床を踏み鳴らす。


 トオオオオン


 思いのほか音が大きく、初詣の人たちが息を呑んで、共姫四人の舞が招き姫のそれに絡んでいく。


 え、なんで?


 思ったのは一瞬で、あとは気分が高揚して、それは招き姫にも伝染して、どんどんビビットになっていく!


 クルクルクルクル ヒラリヒラヒラ トトントン ドドンドン


 お囃子もそれに重なって大きく豊かになっていく、なんちゅうかエキセントリック!


 そして、神主服にタスキ掛けの高峰君が弁慶みたく現れて扉に手をかける。


 ドドンドン ドンガラドンドンドン! ピーーヒャ! ピピピヒャ! ドンガラドンドンドン! 


 ダンダダン!!


 太鼓がダメ押しのフォルテシモになると同時に扉が開く!


 ピッシャーーーン ……☆☆☆☆!!


 音がしたわけじゃないんだけど、そんな感じで山から光が降りてきて、拝殿と舞殿の扉を突き抜けて、大晦日の夜に蟠って、一瞬女神の姿になって、次には幾千万、幾億、幾十億の光の欠片となって町に降り注いだ。


 オオオオオオオオオオオ…………


 鳥居の下までいっぱいになった参詣の人たちからどよめきの声が上がって、町の反対側にあるお寺から除夜の鐘も鳴り始めた!



 昭和47年の幕が上がった!


 


☆彡 主な登場人物


時司ときつかさ めぐり   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる

時司 こたえ         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉のすぐりになる

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子ロコ         2年3組 クラスメート

辻本 たみ子            2年3組 副委員長  伯父:武藤頼政

高峰 秀夫             2年3組 委員長

吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部

横田 真知子            2年3組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目

藤田 勲              2年学年主任

先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている

早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん

時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  

妖・魔物              アキラ      

その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)

安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

 

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