141『朝礼とゼロックス』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
141『朝礼とゼロックス』
タタタタ パタパタパタ タタタタ…………
一時間目の教科書やらノートを揃えていると廊下を走る音がする。
「時雨みたいですねぇ(^_^;)」
いっしょに一時間目の用意をしているロコがうまいことを言う。
時雨のいくつかはうちの教室にも入って来て、照れくさいような当惑したような顔をしながらも、席に着いたりロッカーの出し入れをやったり。
わたしたちの『お願い』や教頭先生の『先生方へのお願いのプリント』の効き目があって、1/3くらいのクラスで朝礼をやるようになった。
朝礼をやると、当然、同時に出席もとるわけで、遅れてくると遅刻を取られる。それがかなわないので、朝礼を始めたクラスの生徒は廊下を走るわけ。
「これで不満が出ないというのは、つくづくうちの生徒は羊だなあ」
ガチャン
「加藤君、行儀悪い」「「アハハハ」」
足でロッカーを閉めた10円男が佳奈子に叱られて、後ろのたみ子と真知子に笑われる。
「たしかにね、クラスによってバラバラだと不満が出るかもね」
「まあ、半歩前進。変化があるというのはいいことでしょ」
キンコーン カンコーン……
たみ子と真知子がまとめたところでチャイムが鳴る。
パタパ パタパ パタパ パタパ……
上履きの音だけでそれと知れる我らが担任がやってきて、きょうも一日が始まる。
「……よし、全員出席。ということで連絡なんだけど、明後日からの修学旅行、健康保険証の番号、必ず控えてきてね。ゼロックスしてもらえるといいんだけど、高いし、とれるところも少ないからね。番号写す時は、二三度確認。間違えたら、いざって時に保険効かなくなっちゃうからね。それから、明日は四時間目全体の説明会が体育館であって、午後は下校して旅行の準備。じゃ、今日も元気でねぇ」
早口で説明すると、そそくさと出ていく花園先生、一時間目はよそのクラスで授業だから急いでいるんだ。で、先生の説明で分からないところを横の佳奈子に聞く。
「ねえ、ゼロックスってなに?」
「え?」
女バレの名セッターは、審判がホイッスル吹いた時みたいに固まってしまう。
「あ、えと……複写のことよ。大きな文具屋とかでやってくれる。高いから、あんまり使ったこと無いけど」
「あ、ああ、そうだったそうだった(^_^;)」
この時代、コピーの事をゼロックスって言うんだ。
でも、なんでゼロックス? ガンダムのロボットみたい。
で、ちょっと困った。
この時代で使える健康保険証なんてうちの家には無いよ。
休み時間にお祖母ちゃんに電話したら『ああ、それなら、メグリのカバンにコピー入れといたから。ちゃんと、昭和46年仕様だから、安心して提出しな』と返事。
次の休み時間に提出しにいくと、メチャクチャきれいなゼロックスだと職員室で評判になってしまった(^_^;)。
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




