132『二年目の体育祭』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
132『二年目の体育祭』
ちょっと面白くない。
なにが?
運動会よ運動会。
「体育祭と言いなさい体育祭と」
佳奈子が真面目な立ち姿で注意する。
見上げる佳奈子はけっこう色っぽい。
学年対抗リレーを走り終えてクラス席に戻ってきたばかり。アンカーで200を走り終え、一等こそは一年生にかっさらわれたけど、その一年との差をコンマ8秒にまで縮めたのは、さすがに女バレのキャプテンだ。
200を全力疾走してきたので、お肌ははち切れそうにツヤツヤして頬は健康な朱に染まり、瞳の奥は――惜しくも二着!――の灯を収めきれずに潤んでいる。退場門から戻ってくるまでにウォータークーラーでガブガブ水分補給、ざっと拭っただけの唇はプクプク潤って、心臓はニュートラルに戻り切らずに首筋の血管をピクピクさせている。
「なんかねえ、不完全燃焼!」
目の前のブルマは不完全燃焼のオケツを収めきれずにフニフニさせてけしからん景色。令和の時代にはほとんどの学校でご禁制品扱いしているのがよく分かる。
「やっぱり、文化祭と一週間違いじゃ、文化祭の方に力が入っちゃいますよぉ」
午後からの出番のないロコは、さっさとジャージの下を履いて気持ちの上では体育祭を終えている。
『プルグラム15番、着せ替えリレーに出場される先生方とサポート伴走者に当っている生徒のみなさんは入場門にお集まりください。くりかえします……』
「あ~あ~行って来るかぁ」「荷物頼むわね」
これも、ノリの悪い声で入場門に向かう真知子とたみ子。
「でも、着せ替えリレーを最後に持ってきたのは正解ですね。面白いからダレずに閉会式にいけますよ。生徒会も考えましたねえ(^▽^)」
「アハハ、まあねぇ」
わたしは好きじゃない。
男の先生をトラックの真ん中に立たせる。海パンとTシャツで。
スタート地点から走り出した女子がトラックを一周して、それぞれのチームの先生のところに取りつく。先生たちの足元には黒い袋が置いてあって、到着した女子は袋から女ものの衣装を取り出して先生に着せて、着せ終わったら手に手を取ってトラックを一周走ってゴールするという恒例のプログラム。
衣装は女子の制服やら看護婦やらミニスカポリスやら、女性アイドル風のやらいろいろ。パンツ以外の下着とかも入っていて、もし令和でやったら、ちょっと問題ありという代物。
まあ、1971年だし、ノープロブレムで、みんなワハハハワハハハと笑って、大晦日みたいに一年の憂さを晴らす。
『ええと……杉野先生が事情によって参加されませんので、2年3組の加藤君が代わりに参加します。加藤君、頑張ってください~』
放送部のウグイス嬢が気楽に変更をアナウンス。
ウワァアアア(^▽^)!!
中略
例年の如く、おぞましくも大爆笑の『着せ替えリレー』を終え、運動会、いえ体育祭はめでたく幕を下ろした。
そうそう、杉野先生に代わって出場した加藤高明、10円男は意外に用意されたセーラー服が似合って好評。
順位が一年と同点になって、なんとか二年生の面目を保った運動会、いや体育祭だった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




