118『妖退治・4・白の少女』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
118『妖退治・4・白の少女』
妖退治も二週間目に突入。
こないだは、あまりの暑さに晴天自身が言い出して玉造の日之出通商店街までカキ氷を食べに行って、ちょっと息抜き。
でも、あくる日からは引き続き妖退治。
「お盆に入ったんで、ちょっとあちこち出張するんで、ここは頼むよ」
「あ、見てるだけでいいんなら」
「それでいいよ、グッチは居るだけで結界だからね。閉じ込めておいてくれさえすれば、帰ってからまとめてやっつけるからね」
「早く帰って来てね、わたしに手出しするのは居ないけど、ザワザワ言ってうるさいから」
「じゃ、これを貸してあげよう」
「え、ネックファン?」
ありがたいけど、晴天が首につけていたやつかと思うと腰が引ける。
「新品だよ。AMATONに注文したのが届いた新製品」
「またAMAZON」
「便利だからね、じゃ、頼んだよ」
それだけ言うと、あっという間に目の前から消える晴天。
妖気の膜を張っているんで、ネックファンを付けることもないんだけど……おお!
単に体感温度が下がるだけじゃなくて、めちゃくちゃ爽やか。ファンから噴き上がって来る風は森林浴をしてるみたいに爽やかで、魔力が二割ほど上がったような気がする。
ボタンを押すとインタフェイスが現われる。シンプルに弱・中・強・自動の切り替え、と、可視化の選択肢。
可視化ってなんだろう?
ポチ……ゲ(''◇'')!
切り替えると大屋根に囲まれた建設現場にウジャウジャと妖たちが蠢いているのが見える。裸眼でも、その気になれば少しは見えるんだけど、見え方というかグレードが全然違う。画質で言えば昔のアナログと今どきの8Kぐらいに違う。見えてる数も、裸眼で見るのと天文台の望遠鏡で見るくらいに違う。
なるほど、晴天は、こういうのをやっつけてるんだ。こいつらを閉じ込めているんだから、わたしの力もなかなかのものだと思うよ。
まあ、やっつけるのは晴天。わたしは結界専門。
そう割り切って可視化をオフにする。
そして森林浴みたいな気分で大屋根を周る。集成材とは言え、この大屋根は木で出来ている。妖気の膜で暑さを遮っているので、瞬間目をつぶるといい雰囲気。
――森林浴モードにしますか?――
オフにしたはずのインタフェイスが現われて問いかけてくる。
「え、あ、おねがい」
そう言うと、自分を中心に半径5メートルほどが木漏れ日になる。
木漏れ日にも選択肢がある。広さが半径1メートルから無限大まで、漏れる光の具合も無段階で選べる。
なるほどぉ、晴天が掛けていたのよりもグレードが高いかもしれない。
いろいろ操作して、尾瀬の白樺林(行ったことないけど)のイメージにする。
夏が来~れば 思い出す~♪ 遥かな尾瀬~ 遠~い空ぁ♪
学期末に音楽で習った『夏の思い出』を口ずさんでいると、自動でいい雰囲気にしてくれる。
あれ?
調子よく半分ほど周ったところ、少しむこうに白いワンピースの女の子が体育座りしているのが目に留まった。髪はロングのシルバーで肌は抜けるように白く、横顔をこちらに向けて、ジッと南の空を見上げている。
こないだも男の子の姿が見えたけど、あれは昔の残留思念がメタンガスと結びついて可視化したもので、近づくと消えてしまった。
あれ、消えない……
五メートルくらい、ちょうど視力検査の距離ぐらいになっても、その子は消えないで目が合ってしまった。
白い横顔がこちらを向く。
「……あなた、魔女?」
こっちから声をかけようとしたところなので、ちょっとビビってしまった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




