110『夏の大安吉日』
巡・型落ち魔法少女の通学日記
110『夏の大安吉日』
令和の今日は木曜だけど、戻り橋を渡った昭和46年は日曜日で大安吉日。
七夕は終わったけど、期末テストは来週の火曜日まである。
ほんとうなら家で勉強しなくちゃならない。月曜には苦手な古文とグラマーの試験だしね。
でも、大安吉日っていうのは例外なく結婚式のラッシュ。バイト先の須之内写真館の直美さんはメチャクチャ忙しいわけですよ。だから、テストの最中だろうがバイトは休めません!
あ、グラマーっていうのは女子のボディーをかっこよくする科目じゃなくて、英語の文法の科目なんだよ。
英語の表現とか歌とかは好き。
今年の令和で大人気のフリーレンのエンディング曲のシッポのとこ『Im whispering our lullaby for to you come back home……』とこなんかメチャクチャ好きで、ここを聴きたいために、何度も最初からリフレイン。この下りは曲の頭から聞かないと良さが分からない。お祖母ちゃんは「メグリは『葬送のリフレイン』だねえ」なんて冷やかす。
この歌詞を文法的に解剖して黒板に書かれて「ここ、テストに出すから!」なんてチョークで黒板叩かれたりしたら、二度と英文なんて見たくなくなる。
「あら、いいわね、その曲」
え?
「なんだか、気まぐれな妖精が思い出を刺激するだけ刺激して空に飛んでいくみたい」
「アハハ、気まぐれに口ずさんでるだけでぇ(''◇'')ゞ」
ヤバイ、これは50年先の未来の曲だよ。
「うう、それにしても停まると暑いぃ(-_-;)」
信号待ちで停車すると、エアコンの付いていないホンダZはメチャクチャ暑い。でも、直美さんの追及が止んでラッキー。
信じられないけど、この時代、タクシーかよほどの高級車でなければエアコンは付いていない。
車には三角窓っていうのが付いていて、それを斜めに開くとけっこうな風が入って来るんだけど、それは信号待ちで停まったりするとぜんぜん機能しなくなる。
須之内写真館の営業車であるホンダZには、その三角窓すら付いてないんだけどね。
「そのクーラーボックス開けてみ」
「ハイ……お、三ツ矢サイダー!」
「仕事終わってからと思ったんだけどね、帰りの分はまた仕入れるよ」
「ゴチでーす!」
ダッシュボードの線抜きでプシュっと蓋を開ける。
シュポン シュポン
最初は使いにくかったけど、こういうアナログにも慣れた。
グビグビグビ!
直美さんと揃ってサイダーの一気飲み……わたしは無理なんで三回くらいに分けて飲む。
ゲップ!! プハーー!
派手なゲップをしたら、信号が青になって発進!
「ああ……」「五組だぁ……」
日ごろは4組しか出されていない『本日の挙式』は枠いっぱいに5組入ってる。
「「よし!」」
主従で気合いを入れて関係者出入り口から突撃。
中は、写真屋のわたしたち以上に汗を流して頑張ってる職員さんたち!
この日の結婚式が5組とも無事に済んだのは須世理姫の御神楽さんのお蔭なんだけどね。
それはまた今度ね。
では、明日のグラマーと古文の一夜漬けやりまーす(^_^;)
☆彡 主な登場人物
時司 巡 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人




