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巡(めぐり) 型落ち魔法少女の通学日記  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
102/280

102『牧内さんとカンゲキ』

めぐり・型落ち魔法少女の通学日記


102『牧内さんとカンゲキ』   





「ちょっと緊張しちゃうなぁ」



 チケットと座席の番号を照らし合わせて後ろの方から下っていくと、なんと、その席は、前から五列目の真ん中。横アリとかのライブとかだったら特等席だよ……行ったことないけど。


「労演とかじゃ、学割席しか座ったことないからねぇ(^_^;)」


 緊張と言いながら、なんかワクワクしている牧内さんは可愛い。


「ローエン?」


「えと、勤労者とか学生向けの観劇団体、学生は500円で、たいてい二階席の奥の方」


 そう言って後ろの二階席を指さす牧内さん。



 こないだ直美さんからもらったチケットで大浜市民ホールに来ている。



 東京の劇団Mが『星の牧場』という童話をもとにした新作をやるんだ。


 チケットをもらってからググってみたら、令和の日本でも四年前に宝塚がやっている。時代を超えてもメディアを超えても通用する名作なんだろうね。


 うわぁ……


 アニメの異世界ものって感じの曲(あとで、牧内さんがジプシー音楽だと教えてくれる)が聞こえて幕が開く……と、ホリゾントっていうバックスクリーンに一面の星空、ホリゾントの手前にも電飾みたいな星が煌めいて、その美しさにため息を漏らす牧内さん。


 観劇中に声を出しちゃいけないのを思い出したんだろうね、両手で口を覆って感動し続ける。


 戦争で馬の世話をする兵隊だったモミイチは、ツキスミという馬の面倒をみてきた。激しい移動と戦闘がつづく中、ツキスミを死なせてしまい、自分自身も記憶喪失になる。


 自分の半身を失ったような喪失感。そして、記憶障害による混乱。


 復員したモミイチは、山中の牧場でジプシーたちと出会い、ジプシーたちの音楽に癒されているうちに、ツキスミの蹄の音が聞こえ姿も見える。


 行方知れずになったモミイチを気遣う人たち、星の牧場、それが交互に描写される。


 そして、モミイチはいつしか、ツキスミといっしょに銀河を駆けていく……そんなファンタジーで切ないお芝居(^_^;)


 

 演劇部じゃないから、きちんと語れないけど、本格的なお芝居なんて初めてのわたしでも分かったし、感動した!


 ツキスミは音だけで表現されてるんだけど、モミイチ役の役者さんがすばらしい! 空を駆けて地上に降りてくるツキスミが、モミイチの動きと表情で、ちゃんとわかるんだよ!


 モミイチの表情もいい! 剥き出しの愛情じゃなくてさ、ツキスミの馬面を撫でてやるとこなんか、ガリボチョでちょっと背中が丸くて不器用そう。スリスリする時もカッコよくなんかない。笑うと目はへの字の線みたいになるし、半開きの口から前歯が剥き出し。


「無対象演技っていうんだよ!」


 帰り道、感激のまま説明してくれる牧内さん。


「実際に馬が居なくても、馬と馬に触れている時の自分の目線や動きをトレースするとね、ほんとうに馬がいるような感じになるんだよ」


「え、実物無しで?」


「うん。それを広げて深くしていけば、舞台の役者さんみたいに、観客にも観えるんだよ!」


「ええ、よく分からないよ(^_^;)」


「あ、たとえばね……」


 そう言うと、牧内さんはカバンをゴソゴソして、何かを握ったような感じで「ちょっと、バッグ持ってて」と預ける。


 え?


「いくよ」


 牧内さんは、両手でグリップを持って後ろから前にまわすと何かを跳んだ。


「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」


「おお、縄跳びだ!」


 手に縄を持っているわけでもないのに、ちゃんと縄跳びしているように見えている。


「これが無対象演技なのよ、フゥフゥ……」


「さすが演劇部!」


「これくらい、誰にでもできるよ」


「いやあ、ムリムリ(^_^;)」


「やってみよ、二人で」


 ズイっと出された見えない縄を受け取る。というか押し付けられる。


「騙されたと思って、いくよ、ホレ!」


 牧内さんの熱意に圧されてやってみる……というより、体が動いてしまう。


「「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」」


 すると……不思議不思議、本当に縄跳びしてるような気になってきた!


「そうか、これが無対象演技ってやつなんだね!」


「うん、そうだよ!」


 パチパチパチパチパチパチ


 気が付いたらホールから出てきた人たちや、向こうの搬出口に出てきた劇団の人たちが拍手している。


「「ああ、どうも……(#*´ω`*#)」」


 二人、真っ赤になって大浜の駅に急ぐ。


 途中、パトカーだか救急車だかの音がしたけど、野次馬根性発揮する気持ちにもなれなくて、そのまま帰ったよ(^〇^;)。

 


 

☆彡 主な登場人物


時司ときつかさ めぐり   高校2年生

時司 こたえ         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子ロコ         2年3組 クラスメート

辻本 たみ子            2年3組 副委員長

高峰 秀夫             2年3組 委員長

吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部

横田 真知子            2年3組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

藤田 勲              2年学年主任

先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫

早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん

時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        

その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 上杉(生徒会長)

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

 


 

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