第5章 魔法の真実
彼女と毎朝漁に出る。魚を食べる。
日が暮れるまで2人でいろんなことをする。
そして同じ小屋で、違う夢を見る。
そんな日常はあっという間に過ぎて。
ずっと続けばいいのにと思った。
その日、漁に出た後、彼女と別行動として砂浜を歩いていると2人の男の声が聞こえた。
「・・・から、彼は・・・。」
「だから恋なんて最初から無理だと!」
どうやら言い争ってるらしい。岩場の陰からそっと覗こうと身をひそめる。
「だから、ラウレアとアラメアを再会させるのは反対だったんだ!人間とウミガメが恋に落ちるなんてありえない!」
「それは君の言い分だろう!ともかく明日までは面倒見てもらうからな!対価分は頼むよ!」
「村長・・・魔術師・・・なんで・・・!」
そこにいたのは、アラメアの村の村長と海の底に住んでいた人間・魔術師だった。思わぬ2人に一瞬言葉を失う。5秒して頭を左右に振ると、僕は2人に詰め寄った。
「や、やあ、ラウレア!陸の生活は快適かい?」
「あんたたちで仕組んだんだな!?」
「ら、ラウレア。」
「僕を人間にしたのは決まってたことなのか!彼女と恋に落ちることも!?彼女と再会って、僕は彼女に会ったことがあるのか!?ええ!?教えてくれよ!!」
「お、落ち着いて。ラウレア、話を。」
「僕は!あんたたちに利用されるために人間になったんじゃない!」
声を荒げて言い切ると、肩で息をする。僕の両肩に白い骨の手と黒く日焼けした人間の手が置かれる。それを振り払うことなく、僕はゆっくりと2人のほうに顔を上げた。
「・・・僕は。」
「彼女が、好きなんだ。」
ああ、知ってると魔術師が言う。村長は深く頷いた。
「数日しか彼女といないけど、とってもまっすぐで明るくて、一緒に生きていきたい。そう思えるような存在なんだ。」
「でも、君と彼女が一緒になれる未来はない。魔法が解ければ君は・・・たちまち泡になってしまうんだ。ウミガメには戻れない。」
「知ってたよ。」
僕は薄く微笑むと魔術師のほうを見た。魔法が解けたらまたウミガメに戻れて元通りなんてうまい話はない。
この世界からいなくなること、この恋が叶わないこと。
魔法をかけてもらった時からかは分からないけど、いつからか気づいてた。
それを彼女に告げることがないことも。
僕は彼女の前からいなくならなければいけない。
「ラウレア、彼女との話を聞いてほしい。」
「村長?」
「君は、彼女と会ったことがあるんだ。彼女がこれくらいの小さい子供だった頃に、君がまだ若いカメだったころに。」
「僕が、彼女と?」
『大丈夫!?ウミガメさん!!』