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ドラゴンレース  作者: 社聖都子
6/6

ドラゴンレース6

「ゴール前、最後の直線は切り立った崖に囲まれた渓谷。この渓谷に真っ先に入ってきたのが、超高速で飛行してきたフレアドラゴンでした!渓谷前のフレアドラゴンの時速はなんと5,000km!このスピード!よく騎手は無事ですよね。ドラゴンレースでは、一定以上のスピードはドラゴンが出せないということよりも騎手の体がついてこないということの方が問題なりがちだと言いますが、この時のチームフレアドラゴンは正に人竜一体となって突っ込んできました!!そして左の崖から…!飛び出してきました!!レグモンド!最後はやはりこの2頭の一騎打ち!!」

「いやー激熱でしたね!!」

「レースのVTR行く前から、危うくこの展開がばらされそうでした!」

スタジオに笑いが巻き起こる。

レースの映像は会場の大画面で流れていたあの映像がそのまま使われていた。

フレアとレグモンドは競り合いながらこの二頭が並走するには狭い渓谷を猛スピードで駆け抜けていく。ここまで来るとドラゴンレースには珍しく、お互いに相手の進路を全力で妨害しながら進む!レグモンドが岩石を投げつければ、フレアは火弾を吹きつける。

大災害クラスの超常現象をすり抜け猛速でゴールを先にとびぬけたのはフレアだった!

「大激戦となったレースを制したのはフレアドラゴンでした!どうでしたか?皆さん!?」

画面の中で歓談会が始まる。

「いやー!素晴らしいレースでした。」

「最後までドキドキハラハラするのはホントに稀ですよね。」

「例年は、今年のレースを制し!最後の花道をトップで駆け抜けるのはこのドラゴンでした!みたいな展開が多いですからね。」

「実際ドラゴンレース協会側もその展開に備えて最後にああいう細めの絶対ここ通れよみたいな直線用意してる節がありますもんね。」

「確かに!毎年ありますね!」

「さてさて!皆さん感極まっているところとは思いますが、こちら!ご覧いただきましょう!」

アナウンサーが何やら意味深な前振りをすると画面いっぱいに大号泣するシアの顔がどアップで映し出された。

「おめでとうございます。今の嬉しさをどなたに最初にお伝えしましょう?」

「あああーーー。さらねー!!!やったよーー!!!!!あああああーーーーー。」

「いやああああーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」

テレビ内の号泣のシアと室内のシアの叫び声がこだまする。

暴れるシアを後ろから羽交い絞めにするドレア。ドレアを何とか振りほどいてリモコンでテレビを消そうとするシア。そして、「うんうん、良くなったね。」とシアの頭をなでるサラ。シアがサラの手をはねのけようと更に暴れ、ドレアを下敷きにして後ろに倒れた。シアの叫び声があまりに大きくテレビの音声が聞こえないためアイクがしれっとテレビの音量を上げる。

「ちょっと!!アイクさん!!ひどいじゃないですか!!」

シアはアイクの方に跳ね起きようとするが、今度はドレアの手が邪魔でうまく起きられず、途中まで起き上がったものの反動をつけてドレアの上に落下する。ふぐぅ!とドレアの声とも言えない声が漏れる。

アイクはにこにこ笑いながらテレビを見ている。にやにやではなく、あくまでにこにこ笑っている。

「シア騎手は家族経営されているファームレナ―の次女として生まれ、ここまでドラゴンレースと共に生きてきたと言っても過言じゃないとレース前仰っていましたが、いかがですか?EXレース優勝の瞬間は。」

「もーわがんないですー。ぐすぅ。うっ。ふうぅう。」

「天国のご両親もきっとお喜びだと思いますよ。」

「お父さんも、あ、あ、おどーざーーーん。」

少し落ち着いてきたように見えたが、インタビュアーが家族に触れるとすぐに涙腺が爆発した。テレビの外でも笑いと怒りが爆発している。

「あのアナウンサーマジ!!私が必死に落ち着こうとしてんのに、お父さんに触れたらそりゃ泣くだろうがよ!!コノヤロー!!!」

「おぉおぉ、よしよし。泣き虫シアちゃんはちっちゃい頃から良く泣いたからねー。シアちゃん良い子ですよー。」

「サラ姉!!!!!!」

「シア姉、落ち着いて。ていうかサラ姉煽んないで。」

ドレアがシアの後ろでつぶれそうになっている。

「あんたもしつこいのよ!!もうテレビ消さないっつーの!放しなさい!!」

ドレアがシアを解放するとシアはおとなしく自分の椅子に座った。

「シア騎手、最後になりますが今後の目標をお願いいたします。」

一家そろって大暴れしているうちにほぼすべてのインタビューが終わっていたようだ。

「はい。今後も家族力を合わせて、引き続きドラゴンレースで活躍できるように頑張っていきたいです。」

画面内のシアも落ち着いたようだ。

「あっ!!!」

シアが叫んだがもう遅かった。

「あ、シア騎手、あのですね、今日のレース結果で来月の陸空海混合EXレースの出場権がほぼ確実かと思うのですが…。」

と聞きづらそうにインタビュアーが言うと、興奮と号泣で紅潮していたシアの顔が更に真っ赤に染まった。

「あ!あ!そうですよね。すみません!今年の年間世界王者を決める戦いですので、初出場ですが、精いっぱい頑張りますので応援よろしくお願いします。」

大慌てのシアを見てテーブルのシアは突っ伏している。アイクがあはは!と声を上げて笑うとシアが非難の目を向けた。アイクも慌てて、ごめんごめん。と謝る。

「いやー、でも引き締まるね。」

とサラが言った。

「悪かったですね。引き締まらないインタビューで。」

「いや、インタビューはもう良いって。面白かったよ。」

「とうとう、ここまできたね。」

感慨深げに、重々しく、ゆっくりと、アイクがそう言った。先ほどまでの爆笑が嘘のように緊張感に包みこまれた。

「長かったー。」

サラも重々しく呟く。

「僕はあっという間だったなー。」

「あんたは実際一番短いからね。」

「あんたも大して変わらないけどね。」

ドレアとシアが顔を見合わせて、てへへと頭に手をやる。

「ドレアはまだまだだが三人ともよくやってるよ。」

アイクが物凄く優しい目をして言う。

「弟子に厳しくないですか?」

「おれがどうしてもお前を弟子にしたいと言ってるわけじゃないからな。何度も断ったのにお前が無理やりついて来てるだけで。」

言葉は辛らつだが目は笑っている。

「みんなまだ小っちゃかったのに、ご両親亡くしてすぐに立ち上がって。昔よりも立派なファームにして。ついにEXレース優勝だもんな。この世の中で、本当に最高の栄誉だよ。この称号は。」

「ありがとうございます。」

サラが恭しく頭を下げる。そんなサラを見たシアとドレアも慌てて頭を下げる。

「あ、いやいや、やめてくれよ。そんなつもりで言ったわけじゃないんだ。お礼を言ってもらうほど何をしたわけでもない。」

「そんなことはありません。そもそもフレアドラゴンの親竜はアイク様が捕まえてきてくださった竜ですし。」

「それにしたってあくまで片親だよ。もう片方はドレアじゃないか。」

「僕がフレイアを捕まえられたのは師匠のおかげですから。」

「まぁ、そこは否定しない。」

アイクのいつものセリフにどっと笑いが巻き起こる。

「さて!次のレースの準備をしなきゃね!」

と言うとサラが立ち上がる。

「明日はサラ姉は何するの?」

立ち上がったサラをシアが座ったまま上目遣いに見上げて聞く。

「そうねー。とりあえずドラゴンレース協会に行って優勝の手続きとGEXの出場権の確認かなぁ。」

陸空海混合EXレースのことを俗称でGEXという。EXレースの中でもグランドなのだ。EXレースの出場権は年間のレースのポイントで争われるが、GEXの出場権は他三種のEXレースの結果もポイントが加算される。EXレースの優勝となれば、ほぼ当確だ。ましてやフレアはもう1個EXレースに出場し6位入賞している。

「そっかー。あたしはとりあえず、フレアのとこ行って、次のレースまで何するか相談してくるね。ドレアはどうすんの?」

「僕はどっかでかけようかな。」

「えー。ゆっくりしてきなさいよー。滅多に帰ってこないんだから。」

「師匠はどうされるんですか?」

「そうだなー。フレアのGEXは見に戻ってきたいから、1か月だと捕獲は短すぎるな。まぁ下見か、次行く方向を決めるか。そんな感じだな。」

「あ!では自分もお供させてください。」

サラがちょっとムッとした顔でドレアの方を見ているがどれは気づいていない。

「んー。今回はおれが一人で決めたいんだ。行先決めたら迎えに来るよ。」

アイクは気づいている。

「そう、ですか。分かりました。」

ドレアはアイクの言うことには従順だ。

「たまには家族とのんびり過ごすと良い。テイマーにも息抜きは重要だ。」

「アイクさんは息抜き必要ないんですか?」

サラがアイクの顔を軽く覗き込む。

「もしよろしければ私が癒してあげますよ?」

シアがサラの後ろに回り込み腹話術のように喋る。

「ちょっと!!!シア!!!!」

サラが真っ赤になって後ろを振り向くが、アイクは笑っている。

「大丈夫だよ、サラちゃん。」

とアイクがたしなめるが、そのセリフが既に大丈夫ではないことを、アイク以外の全員が分かっている。

「もうちょっとサラ姉は頑張ったほうがいいと思う。」

シアがアイクには聞こえないように物凄く小声でサラに囁く。サラはげんこつでシアの頭をゴチンと小突くとあいたた。とシアは後ずさった。

「さて、じゃあ、そろそろ僕はお暇するよ。」

とアイクが立ち上がった。そのまま玄関の方へ歩くとドアの前で止まり、

「それじゃあ、みんな、優勝おめでとう。ドレア、また迎えに来るよ。」

と挨拶をして、おやすみなさい。とドアを開けて出て行った。

「はぁ、師匠のことをお兄さんと呼ぶ日は来るのだろうか。」

「来ないでしょ、何年進展ないと思ってんのよ。」

「あんたたち、ちょっとこっちおいでよ。あ?」

呼ばれて振り返る。サラの後ろには阿修羅像が…見えない。恐る恐る二人が更に近づくと、サラがギュッと二人を抱きしめた。

「二人とも、ありがとう。」

シアとドレアは顔を見合わせる。とうとう自分たちの姉は頭がおかしくなってしまったのだろうかと。

「優勝だねぇ。」

サラの声はやや泣きかすれていた。

「ありがとね。」

サラがもう一度言った。

「何言ってんの。これからでしょ!」

少しの間三人の沈黙があったがシアが元気よく言った。元気よくしかし声はやはり涙ぐんでいた。

「レースまで1か月。お家でのんびりするね。」

とドレアが言う。サラがドレアを抱きしめる手に少し力が入る。

「なんだかんだね。あんたが選んだテイマーって道が一番厳しい道だから。少しゆっくりして、私たちにも、顔をちゃんと見せて。お父さんとお母さんのお墓にもいかなきゃね。」

サラの言葉にドレアは黙って頷いた。

「シアの言う通り、これからだね。今日はみんな疲れたし、もう寝よう。」

サラに促されて、三人は長い一日を終えた。各自、寝る支度に入った。

最後のレースに思いをはせながら。


ひとまず完結ということにしました。

実際にはプロローグみたいな気持ちで、アイクとシド/ミナ夫妻の出会いから、シド/ミナ夫妻の死、3姉弟の生い立ち/シアの騎手学校時代/アイクとドレアの大冒険/アイクとサラの恋物語/フレアの誕生/シアとフレアとレースの話/GEXレース!と書きたいエピソードとプロットだけはしっかりあるのですが、完結させられるほど時間がとれるかとそこまでの文章作成力が自分にあるかが疑問なので、一つ一つ書き上げたらシリーズものと言うことで投稿していこうと考えました。


前作の投稿から仕事が忙しくなり、だいぶ時間が空いてしまいましたがGWにまとまった時間が取れたので、こうしてまた一つ小説を投稿できました。

ここまで読んでくださりありがとうございました!

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