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ドラゴンレース  作者: 社聖都子
5/6

ドラゴンレース5

「さぁ!大森林エリアを抜けたドラゴンレースの模様!!続きをどうぞ!」

スタジオの絵から始まったが、即VTRの続きへと促されて画面が切り替わる。番組は視聴者が欲しい映像をちゃんとわかっているのだ。

「凄い崖です。見渡す限り岩です。そして滝です。崖の高さが凄すぎて、滝が普通に見えますが、恐らくとんでもない幅の滝ということになります。どのくらい凄いかと言うと、実はこの画面、既にドラゴンが崖を登っているのですが、気付いてますか?このスケール、ホントに言われないと分からないんですよ。スタートの時の画面で、ドラゴンに騎手が乗ってるけどドラゴンが大きすぎて人が米粒みたいですねって言いましたが、そのドラゴンが、崖が大きすぎて米粒みたいなんですよ。いや、もう小麦粉の粉末くらいですね、ドラゴンが。この後ドローンがドラゴンに寄っていきます。さぁどうですか?皆さん見つけられました?どんどん寄ってってますよ?」

「あ!あれちゃうん!?滝の左側。黒いのが上に向かって動いてる気が!!」

「お!恐らく正解です。どんどん寄っていきます。さらに寄っていきます。滝の左側ですね。寄っていくと結構滝から離れてるところを登ってるんですね。滝はもう見えなくて崖だけになりましたが、まだドラゴンは米粒のようです。米粒のようなドラゴンはグランブレイブです。凄いですよね。跳躍力と言うかなんと言うか。もう凄すぎて何が凄いとこの崖を二足歩行で登れるのか分からないですが。凄いです。ただこの上、もうちょっと上空にいるんです。現在1位!翼竜バース!飛んでます。どのくらい上かと言うとブーン!!とドローンに上がってもらってですね。ここです!もうちょっとで崖の高度まで登り終わりますね。バースはですね、コース取りとしては、森林上空から徐々に高度を上げて行ってたんですね。グランブレイブが、森林をまっすぐ走り、崖をまっすぐ上がっているのに対して、バースは斜面をまっすぐ飛んでるので距離的にはだいぶ得してます。しかしですね、崖に近づくにつれてなぜか高度が下がっていくんです。その映像がこちら。グランブレイブの角に取り付けているカメラなんですが、しっかり崖の頂上付近をとらえてますね。最初はそこに向かって順調に上がってます。しかしこの辺りですね。ちょっと様子がおかしくなります。グラグラ揺れて、やや下を見るような角度に変わります。これですね、滝の影響なんだそうです。ものすごい量の水が上から下に落ちていて、その落ちている水しぶきを巨大な羽が浴びているのだと。崖に近づく前に、滝の落下地点すなわち崖の高さより高いところを飛んでいる予定でコースを取っていたらしいのですが、思いのほか崖から遠いところで影響を受け始めてしまい、思うように高度が上がらないまま崖に近づいてしまって、滝の水を大量に浴びて重くなり、思うように登れないという状態。そのため1位のバースを2位のグランブレイブが猛追してるという状態なんです。なお、この辺りのタイミング、ドローンカメラはレグモンドを見失っています。レグモンドに取り付けているカメラも地面の中に潜っていて真っ黒なのでどこにいるのか全く分かりません。なので、映像的にはバースが暫定1位という状況です。ここからちょっと引いた位置のカメラ映像を早送りしまして、元々時速3000kmで進んでいるドラゴンたちを更に超速進行します。分かりますか?下から登ってきてる米粒ことグランブレイブが上の方を飛んでいる同じく米粒のバースにぐんぐん近づいてます。こうしてみると、グランブレイブの方がかなり滝の左を登っていて、バースはちょっと滝に近すぎる進路を取っちゃったのが分かりますね。一気に!と言っても早送りしないと1時間くらいかけてなんですが、一気にグランブレイブがぁ、あぁ、あー、はい!今!抜き去りました!!バース2位転落!!そしてこの崖の上は高原エリアなんです。グランブレイブ独壇場です!突っ走ります!この後高原エリアが下り坂になってまして、物凄く長い!どのくらい長いかと言うと7,000kmの距離の下り坂を駆け下ります。7,000km走って高度は3,000km下がります。もうスケールが大きすぎてよく分かりません。が、結構な斜面ですね。スキーなんかで滑り降りるとしたらそこそこ怖いくらいの角度なはずです。そんな斜面を優雅に駆け降りるグランブレイブの映像がこちらです。」

「うわー!気持ちよさそうだなー。」

「見渡す限りの若葉色ですね。」

「空気良さそう―。こういうところ住みたいですー。」

「ですよねー。ホントに気持ちよさそうで、これだけだったら騎手良いなーって思っちゃいます。」

「でも、沼地に引きずり込まれるかもしれないですもんね。」

「ちょっと危険すぎますねー。」

「はい。こんなに気持ちよさそうなエリアばかりというわけではもちろんなく、次のハイライトは火山エリアです!」

「怖そー!と言うか暑そー!」

「いやいや、熱いとかじゃ済まないですからね!!一歩間違えれば普通に死んじゃいますから!そんな火山エリアの映像がこちら!!」

「うわー!」

「ようカメラ壊れんな!!」

「一面赤。」

「あれ!?またしてもこれあれじゃないですか?走ってますよね?米粒。」

「お!!お気づきですか!早い!そうです!走ってます。どこにいるか皆さん分りますか?」

「え!?どこどこ?」

「画面の右側ですよ。溶岩の赤い筋があるじゃないですか。その右です。」

「はい!そうなんです!正解です!あそこを走ってるのはレグモンドです!この時点でトップ!というか実はあの崖の時点で実はトップだったらしいですね。レグモンドは崖を登らずに地中を文字通りまっすぐ進んでたので崖~高山エリアで一気にトップに躍り出たそうです。」

「おー!そうなんや!!でもなんでこんな危険なところでわざわざ地表に出てきちゃったん!」

「確かに!!」

「それがですね、地表はときどき溶岩が流れ落ちてるところがあるくらいなんですが、地中は熱がこもってやばいらしいんですよ。やばいとかやばくないとかそういうレベルじゃないらしいですよ。」

テレビの中がレース実況というより火山についての感想討論会のようになったところで、画面の外でも討論会が始まった。

「この時ってシア姉はどの辺を飛んでたの?と言うかこの時ってレース開始から何時間くらい経ってるの?」

「んー。このときはねー。夜だと思うから、もう12時間くらい経ってるねー。私たちは滝と火山迂回したんだよねー。だから、多分このタイミングは直線進路からだいぶ外れたところから戻ってきてる辺りだなー。ゴールまでの残り距離では多分ビリじゃないかな。このタイミング。」

淡々と凄いことを言う。

「え!シアはどういうルートでゴール目指したの!」

「うんとねー。模型とかあると分かりやすいんだけど。いや、分かりやすくはないか。少なくとも番組が序盤で使ってたコース模型だとあの模型の外を飛んでるね。」

「うわー!物凄い遠回りしたんだね!」

「そうねー。フレアの体感だけど、10万キロで良いところを13万キロくらいは飛んだはずだって言ってたから。そういう意味じゃ今回のコースに関しては頭脳戦の勝利だね。バースも思い切ってコース外れて飛んじゃえば私らと優勝争いだったはずだよ。」

「そうは言っても、コースから外れると大会委員会から何があるかの説明を受けられないんじゃなかったかな?シアちゃんはどうしてそんなに大幅にコースを外れる判断をしたの?」

サラとシアの会話にアイクが口をはさむ。

「実は判断したのはフレアなんですよ。私が気を失ってる間に、この後の崖を超えるコースだとまた酸素が薄くなるからどのくらいコースをそれれば崖がなくなるか分からないけど、優勝をあきらめてでも崖を外れたところを飛ぼうって。私の体を気遣ってくれて、結果それが勝利につながったという。」

「コース外れて戻れなくなったらリタイアなんでしょ?」

「そうそう。ドレアも捕まえるだけじゃなくてレースのことも覚えてきたわね。」

「いやいや、いくら年に数回しかエリスに帰ってこないと言っても、レースの基本的なルールはね。覚えてるよ。」

ドレアはシアに馬鹿にされたと思ったのか頬を膨らませて抗議した。

「あはは!」

実際シアも半分いじっていたのか怒ったドレアを見て笑っている。

「でも、結局やっぱりコースそれて正解だったわね。火山って上昇気流がきついから、多分近づいてきた段階で竜巻とか凄くて結局ある程度コース外したと思う。翼竜にはきついのよねー。火山。」

画面のコメンテーターより、専門家が家にいるレナ―家の食卓の方がまめ知識が豊富だ。実体験に基づく豆知識だから間違いもない。

「シア姉は暑いの得意でしょ?」

「そうよね。フレアのお肉食べてるから、シアはとんでもなく暑いものでも普通に手で持てちゃうしね。」

「ほぅ。そうなんだ。まぁ竜の肉は食べる時点で命がけだし、そういう変化は起きることもあるよね。」

「アイクさんもそういうのあるんですか?」

「いや、僕はないが、ドレアはあるね。」

「あの時はご迷惑をおかけしました。」

「いやいや、と言うかあの時のはしょうがないだろう。もっとどうしようもないドレアのドジで大量の迷惑をかけられているということを、お姉さま方の前ではっきり言っておこう。」

「あら!ドレア?そうなの?」

「あら!ドレア!そうなの?」

サラとシアが同じセリフを繰り返す。二人にとって「お姉さま方」のイメージはこういう感じらしい。

「ちょ、師匠。余計なこと言わないでくださいよー。」

ドレアが困り顔になるがお姉さま方の追及は止まらない。

「余計な…」

「こと??」

え?という顔でドレアがお姉さま方を見る。

「アイクさんの言うことに」

「アイク様の仰ることに」

「余計なことなどあるのでしょうか?」

アイク「様」なんて普段は言ってない。そして、示し合わせたかのようにセリフの後半はぴたりと声が揃っている。アイクは豪快に高笑いしている。よほどツボにはまったらしい。

「あ!あ!CMあけましたよ!!レースの続きみましょう!」

ドレアが慌ててテレビに促す。そもそもいつCMに入ったのかという状況だ。確か、テレビから目を離したときは火山地帯の話をしていたはずだが、いつの間にか火山地帯がひと段落してCMに入っていたらしい。

「そしてついにレースは最終盤!果たして勝ったのは、レグモンドか!フレアドラゴンか!それとも、他のドラゴンの逆襲はあるのか!?大迫力のゴール前の映像を!どうぞ!!」

ドレアにとって、とてもいいタイミングだったようだ。まさに大注目のシーンに画面が切り替わり、4人は画面に見入った。


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