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ドラゴンレース  作者: 社聖都子
3/6

ドラゴンレース3

―――現在―――


「サラちゃん、シアちゃん、ドレア。空陸混合EXレースの優勝おめでとう!」

アイクはグラスを掲げると前に座る三人を祝福した。

ここはどこにでもありそうな一軒の民家のリビング。木製の暖かみがあるコテージのような壁に床。机も木を切って自ら手作りしたかのようなものに、切り株の椅子。木こりの家とでもいった雰囲気だ。

そこで4人の人間がテーブルを囲んでいる。男二人、女二人。とても仲が良さそうだ。

1人は先のドラゴンレースを観戦していた男、アイクだ。高々と掲げたグラスに追随して他の3人もグラスを掲げ「かんぱーい!」ととてもうれしそうな声が響いた。

もう一人はドラゴンレースの会場でアイクに話しかけた女性。

「サラ姉!やったね!ついにお父さんたちの夢を私たちが叶えたね!!」

サラ姉と呼びかけられたことから、会場でアイクに話しかけた女性、サラともう一人の女性は「シアちゃん」は姉妹のようだ。

「師匠!うちがここまで来ることができたのは師匠のおかげです!ありがとうございます!」

ドレアと呼ばれた男、いや、男と言うには表情にまだあどけなさも残した青年はアイクの弟子のようだ。

「いやいや、ファームレナ―がEXレースに勝ったことには、おれは何も助力してないよ。すべてきみら姉弟の頑張りの賜物だ!天国でシドさんもミナさんも喜んでいるよ。」

「いえ!そんなことは…」

否定しようと身を乗り出したサラに対してアイクは手のひらを突き出して言葉の先を制した。

「強いて言うなら、お前がここまでこれたのは100%おれのおかげだがな!!」

豪快に笑いながら、ドレアの頭を思いっきり撫でながらアイクが言うと、

「そんなー!おれの努力も50%くらいは…いや、せめて10%くらいは!!!」

途中でドレアの頭をもみくちゃにするアイクの力が強くなり、ドレアはすぐに数字を小さくする。その様子に、サラもシアも椅子から転げ落ちそうなほど爆笑した。

ドレアも口では不服そうなセリフを言いながら、表情はにこやかで、4人そろってとても楽しそうだ。

「お?今日のレースじゃないか?」

アイクがテレビのコーナーが切り替わったのに敏感に気づき、皆をテレビの方に促す。

全体に木目が目立つつくりの家にやや不似合いな画面の大きいテレビが部屋の隅に置かれている。テレビの画面下部には、ファームレナ―のフレアドラゴンがEXレース初優勝の快挙!とテロップが書かれている。

「EXレース『空陸混合EX』が本日行われました。EXレースは、ご存知ドラゴンレースの頂点に君臨する種別で、1年間の下位のレースで最もポイントを稼いだ上位10傑によって競われる世界最高峰のレースです。早速レースのコースをご紹介していきましょう!」

流ちょうなアナウンサーの声でレースの紹介がされると、3人はもう画面にくぎ付けだ。その様子を穏やかな目でアイクが眺めている。画面の中では、それではどうぞとアナウンサーがV振りをして、映像が切り替わった。

「はい!こちらがコースの模型です。空陸混合EXは直線距離で100,000㎞先のゴールを目指して、走る!飛ぶ!潜る!何でもありで突き進む!陸上のドラゴンレースです。今年のレースに選ばれたコースの直線上には、積乱雲や竜巻が頻繁に発生する地域や、とても突っ切ることはできない広大な底なしの沼地、火山、標高10,000kmの崖から流れ落ちる大瀑布など、人間が住んでいるエリス神聖国の地では考えられない大自然が待ち受けます!普通に考えれば、そんなところは避けて通りたいのですが、これはレース!どの龍か一匹でもその中に突っ込んで直進した場合、回り道をするとその分遅れをとることになります。かといって苦手な進路を無理して余計離されるかもしれないし、危険なルートを進んだ前の龍がトラブルで止まる可能性もあるわけです。どの程度回り道をするか、コース取りの判断力も試される過酷なレース。ドラゴンと騎手の阿吽の呼吸が大切になります!」

画面では、レースのコースになった見どころと言えば聞こえが良いが、コース上の難関になっているいわば危険どころの映像が次々と映し出され、紹介された。ドラゴンレースでは、スタート地点とゴール地点だけが指定され、コース取りはそうこうするドラゴンと騎手に任せられる。とはいえまっすぐ進むのが基本だ。少しでも回り道は避け、ドラゴンの最高速度でまっすぐゴールを目指す。ほとんどのレースは毎年同じスタートとゴールで勝敗を競うが、高ランクのレースはほぼ同難度のいくつかのゴールからランダムに選ばれるものもある。そう言ったレースを年間戦い抜いて、ポイントが高い、すなわち勝率が高かったり難しいレースをいくつも勝ったりした、選ばれし猛者たちがEXレースに出場する。EXレースは出場だけでも夢の舞台なのだ。そんなEXレースは毎年一年かけて新しい地点が選ばれる。今日、優勝が決まったばかりだが、今この瞬間にはもう、来年のEXレース用のスタート地点とゴール地点の捜索が始まっているのだ。どんなコースが選ばれるのか、出場する本人たちも直前まで知らないため、とても苦手なエリアが含まれてしまい悪戦苦闘するチームも出る。

画面では今年のコースの見どころ紹介がおおよそ終わって、いよいよ!という感じだ。出演しているコメンテーターの面々も期待の面持ちになっている。

「さて、今年のレースこんな感じだったのですが、皆さんもうご覧には…」

アナウンサーの問いかけにコメンテーターが順番に口を開いていく。

「もちろんですよー!」

「大迫力でしたね!」

「EXレースって年によっては終盤もう優勝決まったみたいになることもありますけど、今年は」

「おーーーっと!!!恐らくほとんどの方が生で見てると思いますが、このニュースで初めて結果見るって人ももしかしたらいるかもしれませんから!!ネタバレは私が全力で阻止させていただきますよ!!」

アナウンサーが全力でコメンテーターのコメントを遮ってスタジオの笑いを取っている。結果はもちろん知っているテレビの前の4人も爆笑だ。

「それでは!レースの模様…の前に!今回の選ばれし10チームから注目チームをご紹介していきましょう!!レース前1番人気だったのが、今年度GIレース7種のうち3冠を達成した『帝王』土竜レグモンドです!GIレースは、陸、空、海、空陸、陸海、空海、陸空海の7種類ですから、陸戦が得意なレグモンドは陸を含む4種類のうち実に3戦を制してるんですよね!」

「おまけに負けてしまった陸海戦で勝った海龍グロンスタンドはこの空陸混合EXには出てこないですからね!もう名実ともに優勝候補ですよね!!」

先ほどネタバレを遮られたコメンテーターが口をはさむ。どうやら口数が多いタイプのようだ。アナウンサーの表情が警戒の色に染まっていて実に面白い。

「そうなんです!優勝候補筆頭なのは間違いないドラゴンです。昨年度は、空陸EX準優勝、陸海EX優勝、陸空海EX優勝と空陸EXだけ取れなかっただけに、今年は絶対気合入ってますよー!さて、そんなレグモンドのライバルとなるのがこの3頭!2足走竜のグランブレイブ!!翼竜バース!!そして同じく・・・・・・・」

「きたー!!!フレア――――!!!」

「キャー!!!!フレア―――!!!」

アナウンサーの声は、ドレアとサラの歓声によって完全にかき消された。

「ちょ!ドレア!サラ姉!!聞こえない!!!」

シアが二人の歓声を嫌がり声を荒げるが二人はお構いなしだ。しかし、3頭が映っていた状態から、最後に映った翼竜に画面がクローズアップすると

「お!?なに?フレアちゃんの特集しちゃう!!?」

と興味津々になったサラの一言を境に二人はあっという間にまた静かになって画面にくぎ付けになった。

「そうなんです!この3頭の中でも今年一番勢いがあるのがファームレナ―のフレアドラゴンですね!ファームレナ―ではこのフレアドラゴンが初めてのEX出場ドラゴンになったわけで期待の一頭と言っていいでしょう。まさに看板竜ですね。フレアドラゴンなのですが、1か月前に行われた、空海EXの出場権も取っておりそこはまさかの6着。」

「いやーあのレースも途中まで1位独走でしたからね!寒波エリアで氷が降ってこなければ分からなかったよね!」

「そうでしたねー。フレアドラゴンは炎を吐くのが得意ですからね。寒いのは弱いのか。まぁただ寒いのが弱いとかそういうレベルじゃなかったですけどね、あの、氷いうか氷柱というか、あんなの降ってきて羽に刺さってよくその後も飛んだな、と。」

「あれから1か月でどのくらい回復してるのか!気になるところですけど、空海EXが感動のレースだったので、僕買っちゃいましたよ。フレアドラゴンの券。」

「お!そうだったんですね!!去年はEXレースは1戦も出られなかったフレアドラゴンが今年は既に2レース目ということで、その成長っぷり!勢い!すさまじいものがあり注目です!!というわけで、いよいよ!!レースの様子に参りましょう!ハイライトで!どうぞ!!」


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