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ドラゴンレース  作者: 社聖都子
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ドラゴンレース1

ドラゴンレース

それは、力と、富と、栄誉と…この世のすべての成功の象徴。

ある者は龍にまたがり、ある者は龍を育て、そしてまたある者は龍を捕まえる。

この世界のほぼすべての人間が一度はそのレースを目にしたことがあり、一度はそのレースに携わることを夢見る。

子供がなりたい職業の上位3位はドラゴンレースの花形である、騎手と調教師とテイマーだ。

危険が隣り合わせのレースは大迫力で世界中の人を虜にする。

ドラゴンレースが誕生したことで、そのほかのプロスポーツはどれもその権威を落とし、今やプロスポーツの圧倒的トップに君臨するのがドラゴンレースである。

ドラゴンレースが世の中に浸透したことで世界平和が実現したと言う人までいる。


そんなドラゴンレースの配信場に一人の男がいた。

男は熱心に大画面に映し出される大迫力のレースに見入っている。

画面内の翼竜は切り立った峡谷の中、行く手を阻む巨大生物に火を吹きつけて威嚇し、超高速で進んでいく。その様子が4台のドローンによってあらゆる角度から映し出される。映像は立体的にドラゴンの周囲をくるくると回りながら、あるいは寄ったり引いたりしながら、迫力あるカメラワークで中継されている。

直後!!左の崖が唐突に崩れ落ち、その中から鋭い爪を持った土竜が翼竜の前に躍り出る。カメラの1台が土砂に巻き込まれ、画面はブラックアウトした。

翼竜は土竜を避けるように進路を変え速度を落とさずに進もうとするが、崖から飛び出した土竜はとてつもない轟音を立てて地面に着地すると、自らが崩した崖の破片、破片と言うにはあまりにも巨大な大岩を翼竜に投げつける。

翼竜はその岩を華麗にかわすと即座に土竜の行く手に炎の玉を2発3発と吹き出す。巨大な渓谷はあっという間に切り立った右の崖から溶岩が転がり落ちる火山へと姿を変える。

圧倒的な大迫力の展開に、ある者は歓声を上げ、ある者は息をのみ、そしてこの男は祈るように画面を見ている。

そして男はおもむろに両手を天に突き上げた。会場の歓声がひときわ大きく、世界中に響くのではと思われるほどに大きく、最高潮に達した瞬間と同時だった。

画面には大きくGOALの文字がスクロールしている。

勝ったのは翼竜だった。

「アイクさん!ご無沙汰しております。」

一人の女性が男に声をかけた。

恭しい口調とは裏腹に、女性は男、アイクと呼んだ相手の背中をバシバシと叩いている。

「おぉ!サラちゃん!良かったじゃないか!シアもついに4大大会の一角をとったね!おめでとう!!」

明らかに相手を子ども扱いした口調とは裏腹にアイクはサラにペコペコしながら話しかける。

二人の名誉のためにはっきりと言っておこう。二人は決して狂っているわけではない。ドラゴンレースに携わる者にとってはままある光景だ。


画面の中では、先ほどまでレースを繰り広げていた翼竜の方にまたがり画面に向かってガッツポーズをする女性の姿があらゆる角度から映し出されていた。

そう、騎手が、あのレースのさなかもドラゴンの背中に乗っているのだ。必然的に人の生き死にさえもかけた1つのレースが大歓声の中に幕を閉じた。


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