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魔導書

タイトル変えました!

後、一話目も多少書き足しました。

「オイ、レン。起きろ、レン!」

「んあ……?」


聞こえてきた声に寝ていたであろう俺の意識が覚醒する。

顔を横へと動かすと、そこには夢に出てきた美少女……いや、ベリアルがいた。

俺たちは今、電車に揺られて、とある場所へと向かっていた。

いや、向かっていた……と言っても、特に目的はないのだが。

ベリアルが乗ってみたいと言うものだから、乗ったのだ。

それで、その電車に揺られている間に俺は寝てしまい、ベリアルとの出会いの夢を見ていた様だ。


俺はあの後、ベリアルと契約し、ゴブリンたちを一掃してみせた。

俺の『変わった姿』を見て、男の子は目を輝かせてたっけ?

仮面戦士みたい! って大声で言ってて……いいな、仮面戦士。

俺も大好きな特撮で、カッコいいのなんのって。

今後そう名乗ろうかな、俺。


「主、周りから見れば不審者に見える様な笑みを浮かべているから、気を付けた方がいいぞ」

「え? マジで?」

「マジだ」


きっと間抜けな表情で俺はベリアルを見ただろう。

ベリアルは真剣そうな顔で頷いてみせるのだから、本当なのだろう。


それにしても、俺がベリアルと出会ってから、三日は過ぎた。

契約した結果、どうなったのかというと……高校を辞めた。

いや、元々通っていなかった、存在していなかったと言うことになっていたことが正しいだろうか。

ベリアルと契約した結果、今までの黒川 蓮と言う存在は消えていた。

契約する代わりに俺は友人を、家族を、人生を、全て投げ捨てたのだ。

ベリアルと共に使命を全うするために、全てをだ。

確かにベリアルはあの時、『全てを投げ捨て、我と『契約』する覚悟はあるか?』と言っていた覚えがある。

だが、まさか契約したら、こんなことが起こるなんて誰が思うだろうか。

そのため、今俺のことを覚えていると言う奴はベリアルとあの時助けた男の子くらいだろう。

あの後、男の子の父親が迎えに来て、息子の無事に喜び、泣いていたっけ?

俺とベリアルに頭を下げて、礼を言った後、警察に連れられて、どこかへと行くのが見えた。

恐らくだが……母親の遺体の身元確認のために行ったのだろう。

俺たちは軽い事情聴取だけで済んだ。

で、その後にベリアルと契約する前の俺の存在はなかったことにされていると言うことに気付いたんだがな。

家に帰った時の家族から向けられた『誰? こいつ?』みたいな視線は……うん、辛かった。

そこで初めてベリアルもそのことについて話し出すんだからな。


『全てを投げ捨て、『契約』する覚悟はあるか? と聞いただろう? 全てを投げ捨て、というのはこれからあるはずだった、お主の幸福な未来も、友も、家族も、今までの過去も捨てて、ということだ。主の人生を滅茶苦茶にしてしまったことは謝ろう。だが、ことは一刻を争うことだからな。許してほしい』


なんて言われて、魔神とまで呼ばれたベリアルに頭を下げられれば、許すしかなかった。

人が良過ぎる……と言われるのだろうが、ベリアルにもベリアルなりの理由があるからこそ、許している。

それに俺の存在を一度なかったことにしたのは、戦いで傷ついていく俺を見て、周りの人が心配しない様にするためでもあるからだ。

まぁ、その代償として、宿無しとなったんだがな……。

お金も今の所持金のみ……残り、三千円くらいしかない。

俺の存在がなかったことにされたのだから、勿論バイトで貯めた金も、銀行から消えていた。

というより、口座そのものがなかったことになってたしな。

そのため、財布に入れていた所持金しか持ち歩けていないと言う状況に陥ったわけだが。

後、スマホも使い物にならなくなっていたのは言うまでもない。

結論、金も底をつきかけなので、使えるものは学校に行くために使っていたリュックとベリアルから渡された本しかない、というのが現状。

本当に全てを投げ捨ててしまったよ……。

俺の存在がなかったことになったもんだから、俺が身に着けていた物以外全て消えちまうんだもんな。

おかげで、今の服装も学生服しかないと言う状況なのだが。

何処かで服を入手して、学生服から着替えたいものだ。

もう高校には在籍していないのに、コレを着たまま色んなとこを回れば、何かしらの問題が起こる予感しかしないからだ。

おかげで、野宿をしようとしたら、何度か警察のお世話になりかけたしな。


『まもなく、電車は……』

「ん? そろそろ降りようぜ、ベリアル。いつまで乗っていても、魔界からやってきた悪魔たちは見当たらないだろう?」

「うむ、そうだな。なかなかによい乗り物だった。我は満足だ」

「ハハハ、そりゃよかった」


俺たちは電車を降りて、駅から出る。

俺とベリアルがやるべきこと……それは人間界に紛れ込み、侵攻を開始している悪魔たちを見つけ出し、倒すこと。

それならば、ベリアルもじゃないだろうか? と思うだろうが、なんとベリアル……だけでなく、ソロモン王に仕えた魔神たち、七十二柱は人類の味方であり、ソロモンの予言により、この年代で魔界による侵攻が開始されると知ったのだそうだ。

そのため、ベリアル達七十二柱はソロモン王に人類の守護を頼まれ、それらを承諾。

その年代に現れる特異点七十二人とそれぞれ契約する様に言われたそうだ。

契約することにメリットはあるのか? と聞いた時、ベリアルはこう答えた。


『我らが魔界と変わらず力を振るえたのはソロモン王がいたおかげだ。だが、今この時代にソロモン王はいるか? 否、いないだろうな。だからこそ、我らは特異点と契約するのだ。特異点と契約することで、我らの力は復活する。それだけでなく、『纏衣』をすることで、我らと特異点は更なる力を振るうことができるのだ。人の可能性と悪魔の力が合わさってこそのな。だからこそ、ウィンウィンの関係ではあると思っているのだが。それに、我はそんなの関係なく、人間のことは好きだからな。例え、我にメリットがなくても、していただろうさ』


なんて、笑みを浮かべながら言っていた。

俺はベリアルから渡された本……『煉獄の魔導書』を取り出す。

コレはベリアルと契約した証として、渡されたものであり、最初のページを開けば、そこにはベリアルの名と姿が記されている。

記されている姿は人間としての姿ではなく、悪魔としての姿。

炎の化身といった方が早いかもしれない。

体は全て地獄の炎、煉獄で包まれており、顔も炎に包まれていて、そこに目と口がある炎の翼をもった悪魔。

コレが悪魔としての姿……本来の姿だそうだ。

人の姿も変化をしたらそうなるらしいので、もう一つの本来の姿らしい。

次のページにも一体、とある存在が記されているのだが……それ以外は白紙と言っていい。

こればかりは後で話すと言われたのだが……かれこれ三日経っても、話してくれない。


「さてと、どこへ行くとするか。未だに奴らの気配は感じない……って、どうした、レンよ? 『煉獄の魔導書』を取り出して」

「いや、どんなことが書かれてあるのかの再確認を、と思って見てたんだけどさ。ベリアル、前にも聞いたけどさ、この魔導書、ほとんどが白紙なのには理由があるのか?」


俺は白紙のページを開き、ベリアルの方に向けながら、叩いてみせる。

ベリアルは俺の一言を聞いてから、何かに気付いた様な顔をして、すぐに申し訳なさそうな顔をする。

あ、コレは忘れてたパターンだな、後で言うって言ってたのを。


「す、すまぬ。後で説明すると言って、すっかり忘れていた。我としたことが」


だろうと思ったよ。

本当に有名な魔神、ベリアルなのか、段々疑いたくなってくるぞ。

ベリアルはオホン! と一度軽い咳払いをする。


「それで白紙の理由だったな。その魔導書はいうならば、『契約書』みたいなものだな。実際に契約した我のことが載っているだろう?」

「あぁ、確かに載ってるが」

「まぁ、我と契約した者に渡す魔導書だから当たり前なのだが。つまり、それを用いることで、主は新たな悪魔や魔物、魔獣といった存在と契約することができる」

「契約を……?」


つまり、この白紙には契約した者たちのことが記されていくと言うわけなのか……いや、ちょっと待ってほしい。


「魔界から悪魔が侵攻してきているのに、そんな奴らが契約してくれるのか?」

「それは主の交渉術次第、というのもあるが、どいつもこいつも悪魔だからといって、力を貸してくれないわけじゃない。むしろ、人間側の方が面白そうだと思う様な悪魔もいるだろうな。我らの様な存在がな」


ベリアルは自分を指さしながら言う。

思えば、ソロモン王の頼みを聞き入れて、人間の味方をしているんだっけ。

でも、俺の交渉次第では新たな悪魔とかを仲間にすることができるわけか……。


「まぁ、簡単に言うならば、お主だけの『ゴエティア』を作れということだ。もちろん、できた暁には我が最初のページに来ているのだから、序列は『1』になるだろうな。フフフ、その日も楽しみだ」

「あ、結構序列とか気にしてたのか?」

「いや、気にしておらん。気にしておらんが……やっぱり、『1』と言われると嬉しいものだろう?」

「まぁ、わからなくはないな」


確かに一番だ、一位だとか言われると嬉しいところもある。

でも、そうか……俺だけの『ゴエティア』を作れということか。

ソロモン王の悪魔七十二柱を記したと言われる、あの魔導書の様に。


「まぁ、悪魔や魔獣などと言ったが、何も魔なる者としか契約できぬわけでもない。精霊とも契約が可能なのだ。後……あまり言いたくはないが、天使どもともな」

「精霊……?」


天使は何となく想像できる。

悪魔がいるのだから、その対となる天使がいても、別におかしくはない。

天使のことを言う時のベリアルは嫌そうな顔をしてたけどさ。

だが、精霊は?

魔なる者じゃないのなら、魔界から来たわけでもない。

だが、ベリアルが普通に言う辺り、天使との関係があるわけでもなさそうだが……。


「精霊くらいは聞いたことがあるだろう。奴らはいわば、自然の力の具現化といった方がいいだろう。精霊たちは基本、人目がつかない場所にいる。森や山の奥深くとかにな。まぁ、見かけたとしても、人間たちからすれば何かいたような? みたいな感じだろうがな。とはいえ、人間たちが次々と山や森を開拓していくもんだから、精霊たちの居場所もかなり減っていっている。出会えたとしても、人間を少なからずとも憎んでいたりするからな。交渉を聞き入れてくれない可能性だってありうる」


それはまた大きな問題がありそうで……。

まぁ、話を聞く限り、精霊を仲間にするのも一筋縄ではいかなさそうだ。

天使も……うん、ベリアルを引き連れている時点で、攻撃されるか何かされそうだから、こっちもだな。

とりあえずはベリアルともう一体……最初から魔導書に記されていた奴がいるし、しばらくはいけるだろう。

俺は魔導書をリュックにしまおうとして。


「む? 待て、レン。悪魔の気配を感じ取った。それも……『魔界の門』を呼び出そうとしているのがわかる」

「ホントか!?」


ベリアルの一言にすぐに反応する。

あの日……初めてベリアルと出会った時のことを思い出す。

あの時の魔物の軍団を呼び込もうとしている奴がいる。

門を開かれる前に止めに行かなくちゃ……!


「ベリアル! 案内を!」

「わかっている。だが、待て。ここから走っていては間に合わん。だから、提案だ。魔導書に記されている奴を呼び出せ。もちろん召喚するのではなく、『纏衣』の力を使ってだぞ?」

「え? 『纏衣』の力を使ってって、急に言われても」

「簡単だ。『纏衣』とそいつの名を言うだけでいい。それで発動される。ちゃんと魔導書を手に持っておくのも忘れるなよ? 後、認識阻害の結界も張っておく。これで召喚を使っても、一般人に気付かれることはない」

「わかった」


俺は魔導書を前の持っていき、一度深呼吸をする。


「『纏衣』……来い、『ガルム』!」


名を叫んだ瞬間、どこからともなくやってきた赤黒い炎が俺の目の前に集まり出し、渦巻いていく。

その炎が四、五メートルはあるのではないだろうかという狼の姿へと変わっていく。


『ウオオオオオオオン!』


その炎が雄叫びをあげると、炎は圧縮されて形を変えていく。

そして、圧縮された炎が散布する様に散り始めた瞬間、中から姿を現したのは一台の赤黒いバイク。

所々炎の絵柄があり、バイクのライト部分には狼がライトを咥えている様な意匠がある。

俺はまさか、ここに記されている『獄炎狼 ガルム』という魔獣がバイクになるとは思っていなかったので、思わず間抜けた表情を浮かべてしまう。

口がポカーンと開きっぱなしの。

だが、ベリアルは気にすることなく、そのバイクの後部座席に座ると、俺の方を見てくる。


「これが主ら、『纏衣』の力だ。こうやって、我らを別の形として変えて、主の力へと変える。『纏衣』はそういうことを可能とする能力を持っている。それに今更コレで驚くな。我を『身に纏った』ことを忘れたわけではないだろ?」

「いや、そうだけども……」


まさか、バイクになるなんて誰が思うよ。

まぁ、とりあえず……一応免許は持っているから、運転はできるけど。

でも、まぁ……なんだか、仮面戦士みたいで、カッコいいかもしれない。

これは本格的に仮面戦士を名乗っても。


「ほら、早くしろ、レン! 門が開いてしまうぞ!」

「おっと、そうだった」


俺は急いでバイク……もとい、ガルムへと乗り込み、ハンドルを回して、エンジンを噴かす。

乗り方はバイクと変わらなさそうだな。

俺はそれを確認すると、ベリアルをチラッとを見る。


「それじゃ、しっかり掴まってろよ。後、案内頼むぜ」

「あぁ、任せろ」


ベリアルが俺の体に腕を回したのを確認してから、ガルムを発進させた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最新話まで読ませていただきました。 ベリアルとの契約による弊害、より厳しい仮面ライダーゼロノスのような印象を受けました。 これから登場する神話のクリーチャー、たくさん種類がいるだけにどういう…
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