異世界物語の終わりの先
なんとなく思いついたので書きました
文章もいつも通り下手くそで適当に考えたものなのでいろいろとがばがばですが温かい目で見ていただけると嬉しいです。
俺の名前は黒波龍二。
高校二年生の学生で年齢は18歳。もうすぐ春休みに入り高校三年生になる。この時点でわかるだろうが俺は一度留年している。
家族は父親と母親と俺の3人暮らしだった。共働きでなかなか話ができなかったが家族の仲は悪くなかった。
母親は早めに帰ってきてくれていたので寂しいと感じることもほとんどなかった。
しかし、俺が中学に入って少したったときのこと。
父親が仕事中の事故により亡くなってしまった。そのことで僕と母は大きなショックを受けてしまった。
でも、そのときの俺はまだポジティブだった。
父が死んで、少しでも母に楽をさせてあげようと必死に学業に励んだ。
しかし、母は違った。母は父が死んでから日に日に変わっていってしまった。
父が死んでから母は帰ってくるのがかなり遅くなった。父がいなくなった分を頑張って少しでも稼ごうとしてくれていたのだろう。
最初はいつも通りに接してくれていた。でも、時間がたつたびに変わっていった。
父という大きな心の支えがなくなってしまったからか。それともさらに厳しくなった仕事のストレスか。そのストレスを俺にぶつけるようになった。
僕は頑張って家事を覚え、家の家事の過半数をすることにしていた。それでもいつも通りでいることはできなかったみたいだ。
初めは愚痴を漏らすだけだったがそれがいつしか暴言に変わり、最終的に暴力まで振るうようになった。
最初はなんとか耐え、そこそこの高校に合格した。そして、母からの暴言暴力に耐えながら高校に通ったが1か月ともたなかった。
入学してから十数日で耐えられなくなり不登校、そして部屋から出ることもなくなった。学校では母の暴言暴力の影響もあってかかなり荒れていた。そのため仲のいい友達もいなかった。
そして、そこから約半年引きこもり生活が続いた。
年を明けて少したった頃、母が疲労で倒れたという連絡がきた。俺は急いで病院に行った。医者はただの疲労で命に別条はないと言っていた。
そして数日後、母は目を覚ました。その連絡を聞いて急いで病院に行ったが母に会って初めに聞いたのは暴言だった。
やはり、精神は壊れたままだった。それに約半年間引きこもっていたのもあってかいつもよりひどかった。半分は自業自得だった。
でも、母は疲労で倒れるほど働いていた。父が亡くなってそれどころじゃないだろうにそれでも働き続けていた。
それを思い知らされた俺は改めて学校に行くようになった。母の負担を少しでも減らしてあげようともう少し頑張ってみることにした。
その一年間は半年以上不登校だったのもあって出席日数が足りずに留年した。クラスに友達がいなかったのもあってか留年することにはなにも感じなかった。
そして、そこからがんばって勉強し、進級して今、三年生に進級することが決まった。そんなある日のこと……。
「ただいま~。ってだれもいねぇけどな」
今日は終業式。二年生最後の登校を終え、帰宅した。数日前には卒業生があり先輩?が次々と卒業していった。本来ならば自分も卒業生としてそこに立っていただろうが今の自分には関係ない。三年に友達はいないのでなにかを感じることもない。
家に帰り、いつも通りに家事をし、勉強をするという作業をこなしているといつの間にか20時になっていた。母の分含めた晩御飯を作り、さっさと食べて布団に入った。
「あ~あ、はやく楽になりてぇな~」
そういいながら目を閉じた。そして、十分とたたないうちに眠りについた。
(ん?)
気が付くと周りにはなにもない真っ白な空間に立っていた。
(ここはどこだ?夢にしては地味に意識がはっきりしてるし)
今の自分の置かれている状況を考えているといつの間にか目の前に人?が立っていた。
「楽になりたいか?」
(は?)
突然そんなことを聞いてきた。
(そりゃぁ楽になりたいけどよ)
「異世界に転生してみないか?」
(はあ!?)
俺は驚いた。信じられないことを言ってきたからだ。
(ほんとにそんなことができんのかよ)
「できるよ。君が本当に望むならね」
じつは自分には密かにはまっていることがあった。それは小説だ。高校に入り、スマホを買ってから暇つぶし程度に無料で読めるものを読んでみた。
読んでみると予想以上に面白くすぐにはまり、今では数少ない心の癒しとなっている。中でも異世界転生ものが特に好きで異世界に行って転生前の知識や神様に貰った能力を駆使して戦う物語に惹かれていた。
そんな出来事が今、目の前で起こっているのだ。
(お前は神様かなんかなのか?)
「まぁ、そんなものだと思ってくれればいいよ」
(しかしなぜ俺なんだ?他にも転生すべきやつとかいないのか?)
素朴な疑問だった。なぜ自分を転生させようとしているのか。そもそも望んでできるようなものなのか。疑問に思うところはたくさんあった。
「そうだね、君が選ばれたのはたまたまだよ。」
(だがそんな簡単に転生なんてできるものなのか?なにか裏があるようにしか見えないんだが……。というか俺まだ死んでないし)
「裏……ね。強いて言えば実験台かな?転生の扉を作ったから実際に使えるかどうか試してみたかったのさ。あと転生は魂を世界から別の世界に移動させる儀式みたいなもので別に死んでなければいけないとかはないのさ」
(そうなのか)
「それでどうする?実験に協力してくれるかい?」
正直かなり悩む。母親に少しでも楽をさせるためにも働かなくてはいけない。でも自分がいなくなれば仕事の量を減らしても問題ないんじゃないか、そうなれば間接的に母に楽をさせてあげられるんじゃないかという気持ちがある。それと異世界ものの小説が好きなのもあって純粋に異世界に転生してみたいという気持ちもある。
しかし、あくまでこれは実験。失敗すれば最悪死。いや、死ぬよりも恐ろしいことが待ってるかもしれない。
(じゃあ………………協力するよ)
結果協力することにした。実験の失敗の恐ろしさよりも異世界に行ってみたいという好奇心のほうが勝っていた。
「そうか、じゃあ転生の扉を開くよ。最後に聞くけど本当にいいんだね?」
(……ああ)
俺がうなずくといつの間にか現れた扉が開かれ、俺は再び意識を手放した。
目が覚めると俺は草原で寝ていた。
「本当に異世界に転生したのか」
(実験はどうやら成功だね!)
「うわっ!突然話しかけてくんなよ!」
(それは失礼したね)
「それで成功したのか?」
(ああ、君の魂の移動は成功したよ)
「そうか、失敗しなくてよかったよ。それで、俺は帰れるのか?」
(魂の移動でかなりの神力使っちゃったからね、少なくとも100年は回復に使わないとね。その間君の世界の時間は遅らせておこう。幸いその世界で君は不老不死の体になっているからゆっくり楽しんでくるといい)
「ああ、そうさせてもらうよ」
そして異世界に行った俺は旅を始めた。小説であるようなファンタジーの世界を実際にこの目で、この体で体験した。
俺は、この世界で勇者として仲間を作り、敵と戦い、いくつもの壁を乗り越えて魔王を倒した。
魔王を倒すまでに今まで経験できなかったような体験をいくつもした。数々との人との出会い、この世界で友達もできた。
そして魔王軍との戦争。戦うたびに強くなる。そんなゲームやアニメの世界をこの手で感じられることがうれしかった。
そして努力を重ね勇者になる資格を手に入れ町の人たちが自分を勇者と言ってくれる。勇者だからと色んな人に好かれる。そんなゲームだけの世界を味わうことができた。
……そして恋。この世界にきて初めて恋をした。相手はずっと仲間として一緒に戦ってくれた賢者の子。その子は優しくて思いやりのある、俺なんかにはもったいない人だ。
そんな人に恋をし、その子も俺のことを好きになってくれた。
魔王を倒し、平和が訪れたそのあと、俺たちは結婚した。
平和になった世界でずっと夫婦仲良く暮らした。
俺は不老不死なので歳をとらない。それを承知の上で一緒にいてくれた。
そして、転生してから約150年の時が過ぎた。
「セリア……俺は今日も生きてるよ」
眠った妻の墓の前でそうつぶやく。不老不死の体で精神もあまり歳をとっていないように感じる。それでも今までずっと過ごしてきた日々はかけがえのないものだった。そして、かけがえのないものの大切さを長い年月を過ごし、再認識していった。
(やぁ龍二くん)
「……お前か」
(前みたいに驚いてはくれないんだね)
「今までこの世界で生きてきてそういう突然のことには慣れたからな」
転生してから色々なことを体験してきたのでいろいろと耐性がついていた
(そっか)
「それでなんの用だ?」
(いや、そろそろ神力が回復してきたからね。君が望むなら元の世界に帰してあげようかと)
異世界に転生したての頃は元の世界のことをずっと考えていた。母はどうしているか、学校はどうなっているか。時間を遅らせてくれているだろうが体感している時間はいつも通りなので少し気になる。
「そうか、帰るのにはなにかあるのか?」
元の世界に帰ることは決めていた。この世界でかけがえのない存在の大切さを深く知り、元の世界に戻ることができたら今度こそ母の手助けをしようと考えていたのだ。
(なにか……とは?)
「代償とか……そういうの。ほら、元の世界に戻ったら異世界で過ごした日々の記憶がなくなるとか、そういうのはないのか?」
そもそも実験としてこの世界に転生し役目を終えて元の平和な日本に帰るのだ。このまま帰れるとは思えない。
(そうだね~。不老不死じゃなくなるのはわかりきっているとしてあとは精神的には転生前とほぼ同じになるかな。記憶のほうはわからないや)
「わからないのか?」
(ああ、帰りは試したことないからね。行きができたから帰りもできる確信はある。移動方法はほぼ同じ、魂をもとに戻して元々あった場所に戻すだけ。繋がりの神の僕なら簡単にできる。でも記憶のほうはわからない。全部残っているかもしれないし全部消えるかもしれない、はたまた中途半端に残っているかもしれない。そこはわからないんだ)
「そうか。というかお前って繋がりの神だったんだな」
(まあ、まだ名前はもらってないけどね)
「名前?」
(そう、ゼウスとかオーディンみたいな神様特有の名前)
「そうなのか」
(うん)
そして、100年以上ぶりに再会した神様とこの世界についての話をいくらかした。
(そろそろ帰ろうか)
「……ああ」
(帰るのが惜しいかい?)
「いや、俺は母さんを手伝うって決めたからな」
(そっか……)
正直な話帰るのは惜しい。この世界で過ごした日々は楽しかったし幸せに過ごしていた。
それでも、自分の肉親は母だけ。父がいない今、母を支えられるのは自分だけ。だから帰って母を支えるとずっと決めていた。
(最後にこれはわかっていると思うけど元の世界に戻ったら今持ってる能力とか魔法とかはすべてなくなるからね?)
「承知の上だ」
(それじゃあ転生の扉を開くよ)
「ああ、頼む」
そして扉は開かれ俺は意識を手放した
「ここは……?」
目を覚ますと森の中に寝ていた。
完全にではないが異世界に行った記憶は残っている。
「元の世界に帰ってこれたのか?」
森の中で周りはどこを見ても木。服装は前の世界で通っていた学校の制服に戻っていたので戻ってこれたのだろう。
「とりあえず町に出よう。多分俺の家の近くくらいにいるとは思うし。」
そう言い森の中を歩きだした。
少し歩くと見覚えのある神社が見えた。
「ここの神社久しぶりに見たな。ここならちょっと遠いけど歩いて帰れる範囲内ではあるな」
見つけた神社は住んでいた町から見える山の中にある神社。
昔に一度来ただけなので神社の名前は覚えていない。かなり古い神社なのか神社に書いてある名前も読めないほどボロボロになっていた。
ここを下れば自分の住んでいた町が見渡せる高台に出る
「取り合えず元の世界に戻ってこれたことは確定だな。……さっさと帰ろう」
そして神社の階段を下って行った。
階段を下り、高台に出た。高台に出て目の当たりにしたのはいつもと違う世界でもいつも通りの世界でもない。地獄と化した自分の町だった。
「なんだよ…………これ……」
確かに元の世界に帰ってきていた。
しかし、目の前にある町だったものはどこを見ても赤。家は燃え、所々に人だったであろう死体が散乱している。中には原型のなく本当に人だったのかわからないほどぐちゃぐちゃの死体もある。
しかも爪痕らしきものも見える。明らかに自分の住んでいた町とは違う世界を見ている。
「あ…………ああ………………」
絶望した。
本当に自分の住んでいた世界と同じ世界なのか。神様にはめられたんじゃないか。そんな疑問よりも自分の知っている、自分の生まれた町が地獄となっていることへの絶望のほうが何倍も強かった。
「っ!?母さんは!?」
絶望しながらも自分の母の無事を祈りながら駆け出した。
ただただ走った。母が生き残っている可能性がほとんどないことはわかっている。
家までずっと走っているがここまで一人も生存者を見ていない。それでも数少ない可能性に懸けてただただ自分の家に向かって走り続けた。
そしてついた。
……自分の家だった場所に。
しかし目の前にあるのは瓦礫の山。自分の住んでいた家の面影はまったくと言っていいほどない。
それほどに崩れていた。
そして瓦礫の中から見つけた。見つけてしまった。
自分の母親の腕を……。
「っ……母さん!!」
急いでその腕を引っ張った。しかし、腕より先はなかった。
「あ……ああっ…………うああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
さらに絶望してしまった。自分の帰る場所がなくなり、母親の生存も絶望的になってしまった。
そして、しばらく泣いていると背後から何かが動くような音がした。ぐちゃぐちゃと何かを食べるような音。
もしかしたら生存者かもしれないと思い振り向いた。
しかし、そこにいたのは生存者ではなく異世界にいた魔物だった。
人を食べる音。血肉の落ちる音。そのひとつひとつがその存在を際立たせていた。
「な……なんで…………お前がここにいるんだよ………………」
自分の生まれた世界は完全に壊滅した。
なぜこんなことになったのか。この世界でなにがあったのか。なぜ異世界の魔物がこの平和な日本にいるのか。そんな疑問だけがこの世界に残った。
今回思いついたのは異世界に行った主人公が元の世界に帰ったら。もし、帰った先でとんでもないことが起こっていたら。というコンセプトでした。だいたいの異世界ものは異世界に行ってそのまま物語が進みますがその間元の世界はどうなのか。もしかしたらこんな世界になっている可能性もあるんじゃないかと思い書きました。この話の真相、続きを書くかは未定です。