新しい朝
窓から差し込む陽光でルナは目を覚ました。借りていたベッドは板と石を組み合わせただけの簡素な物だった。おかげで体が痛い。もっとも戦場で負う傷と比べたら何て事はないが。ガルダは窓の縁から外の様子を眺めていた。
「ずっと見張っててくれたの?」
「マサカ。俺ダッテ眠クナル。念ノ為ニナ。位置情報ハ切ッテルンダ。ソウスグニハ見付カラナイトハ思ウケドナ」
「お、姉ちゃん起きた? ご飯あるぜ」
ミードが気付いて声をかけてくる。彼女は起き上がってダイニングへと向かった。
食後、一週間分の食料を買い出しに行くとの事でルナとガルダはミードと共に市場街へと繰り出した。町の人達の手伝いをしながらミード達はお金を稼ぎ生活をやりくりしているという事だった。日中はほとんどの子供達が働きに出ているのだ。
ルナは歩きながら町の様子を観察していた。道は舗装されておらず、車も頻繁には走っていない。ミード達の住処もそうだったが、家は石造りで派手な外装はどれも全く無い。ここら一帯は質素な地域である事は間違い無かった。
「それにしてもローブが余っててよかったな。フードがあるだけでもかなり違うぜ」
「うん、そうだね。ありがとう」
加えて気候は熱帯に属している。午前中であるにも関わらず日差しがきついのはそのせいだ。オーバーヒートしないかが心配だが、コロンシステムに頼るしかない。
「俺ヨリハマシダロウ……」
ガルダはずっとフードの下の彼女の頭の上に乗っていた。
「ところで、姉ちゃんはしばらくはここにいるつもりなのか」
「んー……わからないな」
「事情は聞かないけどさ……おいら達も皆流れもんだし……おいら達の所に居座り続けるつもりなら働かなくっちゃ駄目だぜ。それが決まりなんだ。働く事は生きる事だ。生きていくためには働いて金を稼がないといけねえぜ」
「別に私は生きてはいないんだけど」
「何馬鹿な事言ってんだよ。姉ちゃん時々変な事言うよな」
「全クダ」
ガルダが首肯した。
「どうしようガルダ……ここにいる?」
「オ前ガ決メロ。デモムヤミニ動キ回ッテモ発見サレル可能性ガ上ガルダケカモナ」
「それもそうかな」
「ズットトハ言ワナクテモ滞在スルノナラココノルールニ従ッタ方ガヨサソウダ。コレモ一種ノ指令ダ」
「ミッションか……まさか軍を抜けてもそんな物に縛られるなんてね」
「嫌ニナッタラマタ逃ゲ出セバイイ」
「そしてまた他の所で他のミッションに縛られる……」
「気ガ向イタラマタ戦場ニ行ケバイインジャナイノカ」
「ううん、それは……人殺しはもう嫌だよ。あ、また変な事言っちゃった」
「全クダ」