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狭間堂ー時知らずー  作者: かつを
6/15

不死

 ※不死


「水上先輩。その話マジなんですか?」


 前田は期待と不安がないまぜになった顔で俺の目を見る。


「ああ、マジだ。お前にやるよ」


 俺の言葉を聞いた途端、前田の顔からは不安の色が消え代わりに眩しいと思えるほどの無邪気な明るさに染まった。


「すげー! 信じらんないっすよ!」


 俺は、はしゃぎ回る前田に向かってバイクの鍵を放った。鍵は夕陽を反射してオレンジ色に光りながら放物線を描き、前田の掌に収まった。手の中にある鍵を見て前田は喜びの雄叫びを上げる。


「ちょっと走らせてもいいですか?」


 ダメだと言っても前田は聞かないだろう。そんな目をしていた。


「もうお前のバイクだ。好きにすりゃいい」


 俺が全てを言い終わる前に前田はバイクに跨っていた。狭い路地に甲高く近所迷惑な音が鳴り響く。一軒の家の窓から迷惑そうな顔をした中年の女の顔が覗くが、俺が見ると目を合わせるより前に女の顔は窓から消えた。


 前田の表情は夕陽からの逆光で全く見えないが、それでもアクセルのふかし方や、浮かれたバイクの走らせ方で、これ以上ないほどに喜んでいる事がわかる。


「お兄ちゃん! 家の前でうるさいでしょ! 近所迷惑じゃない」


 突然背後から声が聞こえる。俺は声のする方を振り向いた。そこには一人の少女がいて、少女は夕陽に顔を染めながら走り回るバイクを睨みつけていた。前田の妹だった。確か名前は……。


「あっ、水上先輩の事を言ってるんじゃないですからね」


 前田の妹は俺に目を合わせようとしない。他人が俺を見る時俺の目を見てくる者はいない。皆目を逸らし顔を背ける。たまに目を合わせてくる者がいても、それは俺にぶちのめされたい自殺志願者か、警察くらいのものだ。だから目を逸らされたとしても気にはしない。いつもの事だ。


「うるせえよ加奈! 家ん中入ってろ!」


 そう名前は加奈だ。加奈の声が聞こえたのか前田はバイクに乗りながら怒鳴る。


「うるさいのはお兄ちゃんでしょ! お母さんに叱られても知らないからね!」


 加奈が大声でそう言うと、前田の乗ったバイクは急に勢いをなくしヨロヨロと戻って来た。


「言っとくけどお前に言われたから戻って来たわけじゃねえからな。走るのに飽きただけだからな」


 そして俺の方を見ると、「……あっ、水上先輩のバイクに飽きたとかそう言う意味じゃないですからね!」と、前田は慌ててつけ加えた。俺にバイクを取り返されるとでも思ったのだろうか。


「そんな事思ってねえよ」


 俺は笑った。前田も笑った。俺は前田の事が好きだった。人懐っこく憎めない前田のキャラクターは、なぜか俺を安心させた。一緒にいると、俺が忘れていた荒んでいない日常を思い出させてくれる気がした。


「先輩。こいつうちの妹っす。おら、挨拶しろよ加奈」


 前田は兄の威厳を誇張するような声で言った。


「いつも兄がお世話になってます。妹の加奈です」


「先輩の名前は……」


「知ってる。水上先輩でしょ?」


 加奈は前田を遮るとそう言って笑った。目は逸らされなかった。


「お兄ちゃん。もうすぐご飯だから。あの、水上先輩も良かったら一緒に食べて行きます?」


「それいいな! たまには良い事言うじゃねえか加奈! 水上先輩食べて行ってくださいよ」


 前田と加奈が、俺の顔を期待した目で見る。


「いや、いいわ。ちょっと用事あるし。また今度な」


 二人の顔が落胆の色に染まった気がした。しかしすぐに夕陽の色に染め直される。


 平凡な家庭で食卓を共にする。それは俺の生きて来た人生の中で、全く存在しないものだった。異質なものとすら思える行為だった。俺は臆病だった。断った理由は、ただそれだけだ。




 破損した細胞達がお互いの傷を補い合い、蘇生していく。引き裂かれた細胞達は急速に癒着し、パチパチと音を立てながらその傷を埋めていく。焼けて修復が不可能な細胞でさえも、全身の細胞がまるでベルトコンベアのように、無傷の細胞を運んで来ては焼けた細胞と取り替えていく。


 音は絶え間なく頭の中に鳴り響き、俺はそれをただ聴いていた。その音は、しとしとと降りしきる梅雨の雨の音に似ていた。そして音は次第に遠退いて行き、いつの間に止んだのかわからない雨の音のように、少しの残響音を耳の中に残して消えた。


 俺は身体を起こす。髪の毛に粘つく感触を覚え手で触ると、生臭く透明な液体とクリーム色の白子のような物がこびりついた。床を見ると至る所に白子のような物や赤い血が飛び散っていて、それが自分の脳だと気づいた時、俺は吐き気を覚えその場でえづいた。しかし出て来たのは胃液のみで、胃の中のものは全てエネルギーに替えられてしまっていた。


「これが……、死ねないと言う事なのか」


 俺は立ち上がりバスルームの加奈を見た。赤く染まっていたバスルームの血は、もう殆ど水に流されていて、むせかえるような血の匂いもいつの間にか消えていた。


 俺は黒星を洗面台に置くと、バスタブに手を挿し入れ加奈を抱きかかえた。そして綺麗な床にそっと横たわらせた。それから丁寧に身体を拭いてやる。息絶えた加奈を見て、俺の胸に去来したのは大きな喪失感と絶望だけだった。


 俺が加奈のために用意した衣裳は、俺の血と脳漿で汚れてしまっていた。加奈に服を着せてやらねば。


 俺はリビングに戻ると、加奈に着せてやる衣裳を再び探し始める。机の上では、五島が相変わらず呻き声を上げながら身体を捩らせている。俺はそれを一瞥すると、俺が口の中に突っ込んだ卑猥な道具を取り除いてやった。


「頼む。助けてくれ! 薬が切れた。痛くて頭が狂っちまいそうだ!」


 五島の股間を見ると血は殆ど固まっていて、もうふんどしのようには見えなかった。


「痛いのか?」


「……ああ痛い。痛くて痛くて堪らねえ。薬を打つか医者を呼ぶかしてくれよ。頼むよ。なあ水上さん」


 そうか。もう薬が切れたのか。痛いのか。そう考えたところで、俺はバスルームに戻ると黒星を持ってくる。そして五島の口に銃口を突っ込んだ。五島は目を見開き、イヤイヤをする子供のように頭を無茶苦茶に振る。しかし深く挿し込まれた銃口は簡単には抜けない。俺は何も考えず引金を弾いた。


 五島の口の中は一瞬明るく光った後真っ赤に染まり、それから五島は少しの痙攣をした後ピタリと動かなくなった。背後でカメラの動く音が聞こえる。さぞかし趣味の悪いスナッフビデオができたに違いない。


 俺は静かになったリビングで再び加奈の衣裳を探し始める。そしてある衣裳を手に取ると、それを少しの間眺めた。それはどういったシチュエーションで使用するのか理解に苦しむ衣裳だったが、俺はその衣裳を加奈に着せてやりたいと思った。


 リビング以外の部屋を捜索すると、ダブルのベッドが置いてある部屋を見つけた。加奈の元に戻ると、俺は加奈をそのベッドの部屋に連れて行き、先ほど見つけた衣裳を加奈に着せベッドの上に寝かせた。


 ベッドのシーツは安っぽいピンク色だったが、加奈の着ている衣裳には、逆にそのピンク色がよく似合い、加奈は淡く美しいコントラストの中で眠るように横たわっていた。俺が加奈に着せたのは、純白のウエディングドレスだった。


 俺は濡れて艶やかに光る黒い髪の上から加奈の頭を撫でる。加奈の頬は風呂の湯で上気したのか薄っすらと紅をさしたようにピンク色に染まっていて、死んだのはやはり嘘で本当はただ眠っているだけなのじゃないかと俺は錯覚した。


 このままいつまでも加奈の側にいたかった。だがその思いを邪魔するように、玄関の方から激しくドアを叩く音が聞こえてくる。


 俺は加奈の唇に自分の唇を重ねた後、リビングに戻り黒星を拾った。そして玄関に移動し覗き窓から外を伺う。


 扉の向こう側にはマンションの下で見た二人組と、三◯四号室で縛り上げておいた二人組がいた。


 男達は皆手に拳銃を持っていた。俺は三◯四号室の二人を殺しておくべきだったかと後悔するが、今更そんな事を考えても仕方がない。今は目の前の状況に集中すべきだ。


「やべえな。五島さん出て来ねえぞ。鍵はねえのかよ?」


 防音の施された扉だからだろうか、男達の声はくぐもっていて聴き取りにくかった。


「ねえよ。一つは五島さんが、スペアは水上が持ってっちまった」


 このマンションに来て俺は四発の弾を使った。ポケットの中の弾を確認すると、二十発ほどはある。マガジンに弾を補充し神経を集中させる。あやふやだった男達の声が明瞭に聞こえ始める。奴等が鍵を持っていないのならば俺が開けるしかない。開けてすぐさま背後のバスルームに潜み、確実に一人づつ仕留めていく。この場から逃げるにはそれしかない。


 俺はドアノブの鍵へと手を伸ばす。だが急に意識がぼやけ始め、はっきりと聞こえていた音や、見えていた景色があやふやになっていく。そして胃袋からエネルギーを寄越せと催促の声が上がる。


 なんて燃費の悪い体なんだ。


 俺は心の中で呟くと、キッチンへと走り冷蔵庫を開けた。このマンションの用途を考えると食糧は期待していなかったが、逆に予想外というか、ここにだからあって当然の物が、冷蔵庫の中には整然と並んでいた。


 それは一本数千円はするような多種多様の精力剤だった。カロリー自体は食品よりは低いが、その効能を考えるとある意味食品よりも、今の俺には必要な物かも知れなかった。


 俺は並んでいる精力剤の中から適当に数本取り出すと、一気に飲み干した。口の中は、極端に甘い味や漢方薬の独特の風味でわけの判らない状態になる。それでも身体中に栄養が行き渡り、全身に漲る力を感じた俺は、再び神経を集中させ玄関へと走った。


「おい。今何か聞こえなかったか?」


 玄関の外から男の誰かが発した声が聞こえる。俺はドアの鍵を素早く開錠しバスルームへと潜んだ。自分が撒き散らした脳の欠片を踏みつけ俺は顔をしかめる。踏みつけた脳の欠片から声が聞こえた気がした。バスルームではまだシャワーから湯が出続けていた。


 玄関の扉がそっと開く音が聞こえる。


「五島さん。いますか?」


 男の伺うような小さな声が聞こえる。声の反響からどうやら男達は細く開けた扉の外から中を伺っているようだ。


「何か聞こえるか?」


 別の男から声がかかる。


「わかんねえ。シャワーの音が聞こえる。それ以外は何にも聞こえねえ」


「もしかしたら五島さん殺られちゃって、あいつら逃げたんじゃねえの?」


 この声はマンションの入口で話した男だ。


「ならなんで中から鍵が開くんだよ。――こんな事なら柴原のおっさんに訊いとくんだったな。水上が通ったかどうか」


「て言うか俺らだけで大丈夫かよ。一応援軍呼んどくか?」


「馬鹿言ってんじゃねえよ。相手は一人なんだ。俺らだけで処理しねえと上の幹部連中から何言われるかわかったもんじゃねえ」


 男の話で一応の意見は定まったのか、ドアが開く時の風のうねりを感じ、俺は黒星をバスルームの入り口に向け身構える。


 足音は一人づつ順番にゆっくりとした動きで廊下を進んで来る。その足音は、俺の潜んでいるバスルームから壁一枚隔てた場所にまでやって来た。俺は呼吸を止めた。体の中で酸素を求める心臓の暴動が起こり、激しく暴れる音がする。俺は心臓の細胞をなだめすかしその時を待った。


 足音はバスルームの前で止まり少しの間を置いて、不意に男の顔と拳銃が覗き込んだ。その顔は隣の部屋で見た小太りの男だった。


 男が声を発するより前に俺は引金を弾き絞った。火薬が破裂し巻き起こるブロウバックを俺は顔全体で受け止める。


 閃光のように眩しい光が銃口から溢れ出し、殺意の塊がその先から吐き出された。そしてその塊は男の顔めがけて一直線に進み眼球へとめり込んで行った。男の顔は歪み一瞬笑ったように変形した後、その場に崩れ落ち大きな音を立てた。


「やべえ野郎いやがった! 安西が殺られた!」


 男達がどよめく。俺は素早く空気を吸い込み安西と呼ばれた男を踏み台にして廊下に躍り出た。男達は狭い廊下に一列で並び皆拳銃を構えていたが、パニックに陥っているのか撃ってはこなかった。


 俺は躊躇なく引金を二度弾き絞る。黒星から放たれた弾は、先頭にいたピアス男の顔と喉に突き刺さった。その音に反応してか誰かが拳銃を撃つ。しかしその弾は俺の元には飛んでこず、ピアス男の身体に吸い込まれたようだ。ピアス男はマンションの入り口で聞いた低い声ではなく、本来持っているであろう甲高い声で悲鳴を上げその場に崩れ落ちた。死の前に虚勢などなんの役にも立たない。


 分が悪いと思ったのか一番後ろにいた男が玄関から逃げ出した。二番目の男が狂ったように引金を弾いている。


 拳銃から飛び出した弾丸は四発。俺にはそのすべてが見えていたが見えているから避けられるというものでもなく、四発の弾のうち三発は俺の腹、腕、喉元に食い込み、一発は俺から逸れて壁に当たり石膏の粉塵を撒き散らした。


「やった!」


 男は歓声を上げる。弾の当たった箇所に焼けるような痛みを感じる。俺は口から血を吐き出した。だが同時に傷が塞がり始めるのも感じた。俺は痛みに顔をしかめながら男に黒星を向けた。男の顔は恐怖に歪み口を開いた。


「なんで」男はそう言ったのだろう。俺は口の動きで何を言ったかを悟った。男の声は黒星の咆哮によって掻き消えた。弾は男の脇腹に当たり男は膝から崩れ落ちる。俺は男に近づくと眉間に銃口をあてた。


「なんで死なねえんだよ。……頼む。殺さないでくれ」


 男が涙を流しながら俺に懇願する。


「お前を殺さないで俺が得する事はなんだ?」


「あんた何が目的なんだよ」


 掠れた声で男はそう言った。男に水を向けられ、自分が何をしたいのかを改めて考える。俺の目的はなんだ。中嶋と五島は殺した。では、鳥居を殺す? いや違う。中嶋は俺を裏切り五島は加奈を……。俺は一体何がしたいんだ?


 頭の中に黒い太陽というフレーズが思い浮かんだ。俺が憧れた斎藤と夜の世界。俺は嘗て斎藤を初めて見た時、夜に燦然と輝く黒い太陽のようだと思った。


「黒い太陽? 何それ。全然わかんないよ。武雄がいつも言うけど、そんな形も何もない物に、なんでそんなに執着するの?」


 加奈と過ごした最後の夜。加奈は俺にそう言った。


 夜の世界。斎藤。黒い太陽……。


 金と色。保身と欺瞞。虚像偶像……。


 憧れという曇った眼鏡を外して見れば、それらは実にくだらなく何の価値もない取るに足らないものだった。俺がそんなものに憧れたせいで加奈は死んだ。そんなくだらないもののせいで。


 さあ俺はどうしたい? 何をどうするんだ?


「だ、大丈夫か?」


 男の声に俺は我に返る。目の前の男はなんだ? 金、色、保身、欺瞞、虚像偶像。このうちのどれだ?


「……どうでもいいか」


「え?」


 俺は引金を弾いた。


「全部壊してやる」




 遠くからサイレンの音が聞こえる。街の至る所に人相の悪い男達が溢れ返っている。五反田の街は、今晩俺の狩場に変わる。


「お待たせしまた。回鍋肉と炒飯とレパニラ炒めと……。店長! 拉麺またてすか?」


 片言の日本語で話す女店員の胸には、『ヨウ』とカタカナで書かれたプレートがついていた。俺の目の前に大量の中華料理が、その女の手によって並べられていく。高カロリー高タンパクを絵に描いたようなメニューだ。


 俺は端から順番に箸をつけていく。口の中に広がる脂と食材の旨味が胃の中でブドウ糖へと変わり、各器官を経てアミノ酸やグリコーゲンに変わっていく。そして肝臓を経て全身を巡る栄養素は、今俺に足りていない細胞として即座に生まれ変わる。


「あんたシャイアント塩田てしょ」


 片っ端から料理を片づけていく俺を見てヨウは言った。俺は横目でヨウを見る。


「してるよ。最近テレピててないけと、大食いの人たね」


 口の中の物を飲み込むと、俺は「ああ、そんなところだ」と言った。


「やぱりね!」


 ヨウはそう言うと、厨房に戻り俺の方を指さしながら店長らしき男に何かを言っていた。俺は再び料理に向き直る。身体の器官を細胞単位で制御できる今、俺は胃の中に食物を備蓄する事が可能になっていた。いざという時になってエネルギーが切れましたじゃシャレにならない。胃の容量を超えてでも食糧を詰め込んでおかなくては。


「はい拉麺おまちとうさま」


 ヨウは弾んだ声で言い拉麺をテーブルの上に置くと、正方形で縁に金色の装飾のあしらわれている色紙と油性マジックを持ち出した。


「店長かサイン貰えていたよ」


 厨房を見ると、頭の半分が禿げ上がったオヤジが親指を立ててこちらにサインを送っている。俺は苦笑いをした後色紙に『ジャイアント塩田』と書き殴った。

 それを見ていたヨウは嬉しそうに色紙を引っ込めると、次はデジタルカメラを取り出す。


「おい。写真は困る」


 そう言いながら俺は、いつかテレビて見た大食いチャンピオンの風貌を思い出した。テレビ越しに見たから正確な所はわからないが、身長は二メートル近くあったのではないだろうか。そして何より俺の顔とは似ても似つかない顔をしていた。いくらなんでも写真はまずいだろう。と言うよりなぜ間違える。


「けちけちしないてよ。拉麺はサーピスするから」


 いつの間にか背後に現れていた店長が、俺の肩に手を回しにこやかな顔で言った。


「店長つるいわたしも写るよ! ああお客さん。ちょと撮てもらえるかな」


 ヨウはすぐ近くにいた客に無理矢理カメラを渡すと、駆け足で俺の横に並ぶ。強引に事が進んでいつの間にか断る事ができない雰囲気になっていた。カメラを渡された客も、さっさと済ませて食事に戻りたいという風な空気を体全体から滲み出させていた。


 カメラに向かってポーズを執るヨウと店長。俺はできる限りジャイアント塩田の顔に似せるよう表情筋を操作する。客はどうでもいいと言わんばかりにカメラを構えると、シャッターをきった。俺の表情の変化には気づかなかったようだ。


 ヨウと店長は、デジタルカメラの画面を見て満足そうに頷くと、俺の方に画面を見せる。画面の中には満面の笑みを浮かべるヨウと店長、そしてジャイアント塩田に少しだけ似た顔をしてぎこちなく笑っている俺がいた。この写真とサインがこの店のどこかに飾られる事を想像して、俺は本人が見たらどう思うのかと考え苦笑いを浮かべる。


 写真を撮った客も、俺の事をジャイアント塩田だと思っているのだろうか。そう思い俺は先ほどの客を見る。客は俺の方は見ずに、店のカウンター脇に備えつけてある液晶テレビの画面を、食い入るように見つめていた。テレビの中では見覚えのあるマンションが映し出されていて、明滅する赤色灯に顔を照らされたキャスターが、緊迫した状況を伝えていた。


「本日夜八時ごろ、この……見えますでしょうか。私の後ろにございますこのマンションで、銃の発砲音のようなものが数回聞こえたとの通報が警察にあり、只今警察が現場検証を行っているとの事です。まだ詳細はわかっていませんが、現場の物々しい雰囲気から何かが起こったという事は確かな模様です。あっ、今救急車が到着しましたね。怪我人が出たのでしょうか。ここ五反田は、歓楽街として有名ですが、比較的静かな街で今回のような発砲事件は珍しいとの事です」


 テレビの中では様々な人間が右往左往していて、まるで蜂の巣を突ついたような騒ぎだった。そしてその騒ぎの元凶たる中心人物が、そこからさほど遠くない中華料理の店で美味い料理に舌鼓を打っている。その事が妙に俺はおかしかった。


 気がつくと、店長もヨウも仕事そっちのけでテレビに釘づけになっていた。店長がリモコンを手にボリュームを上げる。


「あれ、ここのマンションうち店の近くたな」


 店長が声を上げる。


「私ここ出前いた事あるよ。丸川企画たたかな? 私あの人達嫌いよ。私に店て働け言う」


 そう言うヨウを見ると、なるほど。よく見るとそれなりに整っている顔立ちをしている。今は仕事用の服装だから女としての魅力は抑え目だが、それなりの服を着せればそこそこの稼ぎを取れる女になるのではないか。


「先輩大丈夫かな」


 先ほど俺達の写真を撮った男がポツリと呟いた。見たところ普通の若者のようだが、丸川企画と関係のある人間なのだろうか。


「兄ちゃん丸川企画の事知ってるのか?」


 俺は男に声をかけた。


「いや知ってるっていうか、高校の時の先輩がよく通ってるって言ってたんで、その先輩から聞いた事ある程度なんすけどね。でもここってヤクザなんすよ。もしかしたら抗争とかだったら怖いなあ」


 男はテレビを見るのをやめて俺の方を見る。


「兄ちゃんのその先輩てのは、そのなんて言うのかな、偉い人だったりするのか?」


 男は少しだけ考えて、「いやあどうなんすかね? よくわかんないですけど、先輩すんごい馬鹿だから出世とかは縁遠そうです」と言って笑った。


 俺が殺した男の中にこの男の言う先輩はいただろうか。


「そうか。いきなり声かけて悪かったな」


 男は「いいえ」と言ってテレビをまた見始めた。俺は残りの料理を全て平らげると会計を済ませた。


「さてと。どうするかな」


 店を出た俺は呟くように言うと、身体に力が漲っているのを確かめ軽く準備運動をした。


 俺が今持っている武器は、元から持っていた黒星と、丸川企画にあった黒星よりは少し性能の良さそうな拳銃とその弾五十数発。拳銃の名前はわからないが、安全装置がついていて暴発の心配もないだろう。弾は十五発装填できる。これなら六発しか装填できない黒星と違って、大人数を相手にした時に弾切れになりにくい。しかしその口径は黒星とは合わなかった。どちらか先に弾を使い切った方はいずれ捨てなければならないだろう。


 それから武器はもう一つある。それは弾や拳銃と一緒に保管してあった刃渡り十五センチほどのサバイバルナイフだ。そのサバイバルナイフは、よく映画や漫画などで見かける刃の背に鋸歯がついている物で、凶悪さを絵に描いたような代物だった。


 しかし、ヤクザ組織に挑むにしては些か心細い装備だが、エネルギーさえ確保できていれば痛みは感じるが死ぬ事はない。それに神経を集中すれば、常人のそれよりも俺は素早く動く事ができる。サバイバルナイフでも上手く立ち回れば戦えるのではないか。どこかで試す事はできないだろうか。そう考えた俺は、五反田にある裏社会の中心遊楽街へと向かった。




 遊楽街に着いたはいいが、今日はなぜか人がまばらでいつもよりも活気がなかった。たまに人がいたとしても、客引きの男や回春エステの呼び込みの女ばかりで、俺が目当てとする物騒な者達は全くいない。元々この街のヤクザはあまり表に出て来ないが、それにしても全くいないということはない。


 他の組のシマということもあり俺も詳しくは知らないが、それでもこれほどまでに人がいないと言うことはないはずだ。増してやこの街は今、俺の起こした騒動で厳戒態勢になっているはず。それに俺は丸川企画の人間を一人殺し損ねている。死んだはずの俺が生きていると、俺を追っていた連中の耳にももう入っているはずだ。


 ちょっと突つけば騒ぎ出す蜜蜂のような頭の足りていない連中なら、俺を狙って街に繰り出していてもおかしくないと踏んだのだが……。


 突然鳴り出した携帯電話に俺の思考は途切れる。電話の相手は斎藤だった。胸の中に複雑な感情が溢れる。もしこの男に出会わなければ加奈は死ななかったのかも知れない。


「武雄、お前何やらかしたんだ? えらい騒ぎじゃねえか」


 斎藤はテレビのニュースで騒ぎを知ったのか、以前と変わらぬ声色で言った。その声にはすでに酒の酔いは感じられなかった。


「斎藤さん。あんたはもう俺に何も言えないはずだ。あんた俺の事初めっから切り捨てるつもりだったんだろ?」


「……おいおい武雄。何言ってんだ。俺とお前は義兄弟だろ?」


 コンマ何秒間かの沈黙。俺にはそれで充分だった。それで全てを悟った。


「――全部ね。全部ぶっ壊してやりたいんですよ。斎藤さん。丸川も友部も柳川も堀川も。……あんたもね」


 電話越しにでも斎藤が息を呑むのがわかった。


「武雄……。お前馬鹿なのか? そんなことできるわけがねえだろうが」


「俺が何やったか教えてやりましょうか。丸川の事務所にいた五島、中嶋、それと三人。一人は逃しましたが皆殺してやりました」


 斎藤は何も言わなかった。


「そうだ斎藤さん。鳥居の事殺って欲しいって言ってましたよね? 今から俺鳥居の事務所に行くんで楽しみにしててください。あと、そんなことできるわけがないって言いましたよね? 俺できますよ。俺は力を手に入れたんです。もう誰も俺の事は止められない。斎藤さんには色々世話になりました。だから最後にします。――まあ、事務所でニュースでも見ながら俺がやる事見ていてくださいよ」


「お前死ぬぞ?」


 斎藤の声は妙に落ち着いていて、その声からは何の感情も読み取れなかった。


「死ねませんよ」


 俺はそれだけ言うと電話を切った。


 鳥居の事務所はここからそう遠くない品川と目黒の境目にある。五反田で、サバイバルナイフがどこまで通用するのかを試せなかったのは痛いが、実戦で試せばいいだろう。


 そこまで考えたところで、客引きの男が俺を見ている事に気がついた。男は迷惑そうに眉をしかめていた。


「何か用か?」


 男に声をかけると、男は急に怯えた顔になり俺から目を逸らした。


「いや、用って言うか、兄ちゃん組関係の人? 立ち聞きするつもりはなかったんだけどよ。その、丸川とか友部とか聞こえたからさ。違うんならいいんだけど」


 男は伺うような目で俺を見る。男の質問の意図がわからず俺は訊いた。


「どういう意味だ。俺が組関係だと何かあるのか?」


「いやなんにもないって! 勘弁してよ」


 男はより一層怯えたように身体を縮こませ逃げようと身体を捻る。組の人間だと都合が悪い何かがあるのだろうか。


「ちょっと待てよ。俺は丸川も友部も何の事かさっぱりだ。何なんだそれは?」


 男は動きを止めこちらに向き直った。その表情にはもう怯えはなく逆にあったのは、俺の事を見下すような不遜な表情だった。男の精一杯の虚勢なのだろう。


「なんだよ。紛らわしい言い方すんじゃねえよ」


 俺は男の豹変ぶりに少しのイラつきを感じたが、おとなしくする事にした。


「すみませんね。ところで興味本位で聞くんだけど、その丸川と友部だっけ? それがどうかしたのか?」


 男は、馬鹿にしたように鼻で大きな溜息を吐く。


「ニュース見てねえのかよ? 抗争だよ抗争。一般人にこんな事言っても仕方がねえけどよ、俺あまああれだ事務所出入りしてっからよ。知ってんだわ。丸川企画って事務所に殴り込みがあったんだよ。そこでどんぱちがあった。迷惑な話だよ全く。そのせいで客が来やしねえ。当の本人達は警察にびびって全員とんずらしやがったってのによ」


 冷静に考えて見ればわかる事だった。事務所に警察が入り痛くもない腹を探られる。もしかしたらその辺を歩いているだけで警察に捕まるかも知れない。そんな街にいつまでもヤクザがいるはずはなかった。いや、もしいたとしても表に出て来るはずがない。


「ところでよ兄ちゃん。一般人ってこたあ客って事だよな? どうだい? 今日は客が少ねえからさ、サービスしとくぜッ。警察も抗争の事で手一杯だからガサもねえし、裏本番もありだぜ? やってかねえかい?」


 男の口からヤニ臭い息が漏れる。性の臭いのする発言に加奈の事が思い出される。俺の中にあった少しのイラつきは熱を持って俺に訴えかけてくる。この男をぶちのめせと。


 俺はジャケットの裏に忍ばせたサバイバルナイフへと手を回した。男は俺が財布でも取り出すのかと思ったのか、にやけた顔つきで俺の胸元を無遠慮に見てくる。俺はその顔を尻目にサバイバルナイフを鞘に留めるスナップを外した。パチリと金具の外れる音がする。


 その時男の頭越しに警官の姿が見えた。俺はサバイバルナイフにかけていた手を離しそのまま引き抜いた。少しだけ腰を上げていたサバイバルナイフは、残念そうに微かな音を立て鞘へと収まる。頭の芯が急速に冷え込んでいく。


「柴原っていう名前の男を知っているか?」


 男は顔に貼りつけた「にやにや」を引っ込めた。


「なんだよ。柴ちゃんの客かよ。でも柴ちゃんは今日いねえぞ?」


「知ってるさ。下着姿でションベン漏らしたんだろ?」


 男は顔に再びにやにやを貼りつけた。


「そうなんだよ、丸川のマンションで見つかったらしいぜ。なんでも今度の……。――なんで兄ちゃんそれ知ってんだよ……」


 男の表情が不安気に曇る。俺はジャケットを捲ると、腰に挿した黒星を男に見せつけた。男の表情が恐怖に歪む。


「兄ちゃんまさか……」


 俺は男の肩に腕を回すと、警官のいる方へ男を身体ごと捻じった。そして耳元で、「運が良かったな」と呟いた。




 今頃あの男は丸川企画に殴り込みに入った男の事を知っていると、さぞかし尾ひれ背びれをつけて周りに吹聴して回っているのだろう。


 あの後俺は、男と肩を組んだまま警官をやり過ごし、警官がいなくなると男の顔に一発拳を見舞った。俺の事を話せば殺すという脅し文句と共に。


 男はわかったと言いながら仕切りに頭を振っていたが、その目の奥にはすぐにでも誰かに話したくて仕方がないといった色が見え隠れしていた。


 今更誰に言ったところで構いはしない。俺を襲ってくる者がいれば排除するまでだ。それにもうそろそろ俺の話が色々な情報となって組関係の者達に回り始めているはずだ。俺が死んだという情報で一度引っ込んだ連中も、またぞろ溢れ出してくるに違いない。


 ここから鳥居のいる事務所までは、歩いて三十分ほどだ。その間にある蜘蛛の巣のように張り巡らされた街々の路地。そこからゾンビのように這い出して来る男達を俺は想像した。


 ――いや、ゾンビは俺だ。脳を破壊しても死ぬ事はない。身体中に栄養を送る心臓だけはわからないが老人は死ねないと言っていた。殺して死ぬものなら死ねないとは言わない。死にたくとも死ねないから死ねないなのだ。だから多分心臓が損傷してもすぐに替えの細胞が身体中から届くのだろう。


「どうせ死なないんなら、道の真ん中を堂々と歩いてやる。こそこそするのはもう辞めだ」


 俺は通りに響く大声で言った。街を行く人間が俺の事を危ない者でも見る目で見ていく。それを無視して、鳥居の事務所への道をまっすぐに歩き始めた。


 道を歩き始めてすぐにそれらしき男を見つけた。下品な服装に下品な髪型。下品な立ち振る舞い。その男は身に着けている物や振る舞いの全てで、周りにいる者全てを威嚇していた。嘗ては憧れていた裏世界の住人が、その世界ごと壊してしまおうと決めた瞬間から滑稽で疎ましい存在に感じる。


 俺は堂々と男に近づいていく。男が俺に気づいている様子はない。そして男のいる場所から三メートルほどにまで近づいた時に初めて、男は俺に狼狽えた目を向けた。しかしすぐにその表情は影を潜め、代わりに怒りの表情を浮かべる。


「なんだてめえ! 何見てんだ!」


 俺は驚いた。本当にこんな台詞を吐く者がいるとは。


「なああんた。友部組の鳥居ってどこにいるか知ってるか?」


 俺のコンビニへの道を聞くような口調に、男は困惑した表情を浮かべる。俺は更に続けた。


「知ってるんならそこまで案内してくれないか?」


 鳥居の事務所の場所は知っている。男にかける適当な言葉が見つからなかっただけだ。


「てめえ舐めてんのか? 鳥居さんに何の用だよ」


 通りを行く者達が俺と男を怯えた目で見ながら、不必要なほどに距離を空けて通り過ぎて行く。その方が懸命だ。こんな馬鹿どもに関わる事はない。俺は心の中で自嘲した。加奈の顔が思い浮かぶ。


「何の用。そうだな、ちょっと壊したいんだよ。お前らの組織ってのを」


 男の表情が怒りに染まる。


「舐めてんのか!」


 言い終わらないうちに男は拳を振り上げ俺に殴りかかる。拳のスピードは拳銃の弾に比べると、笑ってしまうほどに遅かった。


 俺は笑みを浮かべ男の拳をそのまま顔で受け止める。辺りに肉の弾ける鈍い音が響き、周りにいた者達から悲鳴が聞こえた。


 俺は大袈裟にその場に倒れて見せた。痛みはあるが今までの痛みに比べれば取るに足らない痛みだ。


「なんだこいつ。弱すぎるにもほどがあるだろ。おらあ立てや!」


 男は俺のスーツの首元を掴むと、無理矢理に俺を引き起こそうとする。俺はそれに従った。ここは人目が多すぎる。この男を殺るのはもう少し路地の裏に入ってからだ。


 男は俺の思惑通りに人気のない路地へと俺を引き摺って行った。幾らヤクザでも警察は怖いはずだ。目立つ場所での騒ぎは、警察を引きつける。それに俺にとっても警察は厄介な存在だ。


 俺は男に引き摺られるままに裏路地を進んだ。そして進むにつれて人気はなくなり、暗く陰気な場所までつれて来られると、男は俺に向き直った。


「ここまで来りゃ警察も来ねえだろ。覚悟しろよ? お前が悪いんだからな」


 俺はジャケットの裏に手を入れサバイバルナイフに手をかける。


「おい! 何やってんだ!」


 突然の声に俺も男も動きを止めた。警察か? 男は声が聞こえた方を振り向く。そこには明らかに目の前の男と同種の男が立っていた。


「角谷さん!」


 その男を見るなり俺を殴った男は言った。


「谷岡。こんな時に何遊んでんだ」


 男は言いながらこちらに向かって歩いて来る。


「いや、こいつが舐めた事言いやがるんで痛めつけてやろうかと……」


 谷岡と呼ばれた男は決まりが悪そうに言った。


「今がどんな時かわかってんのか? 水上を見つけろって鳥居さんに言われてんだろうが。……ってお前」


 角谷と呼ばれた男は俺の顔を見て口を開けた。それはそうだろう。探していた男がいきなり目の前にいるのだから。


「谷岡! 水上の画像携帯に回ってきただろうが! てめえ見てねえのか!」


 俺はサバイバルナイフのスナップを外し、鞘から静かに引き抜いた。


「写メ? いや、見てないっす。そんなの来てました?」


「もういい馬鹿野郎! お前の後ろにいる奴が水上だ!」


 谷岡と呼ばれた男は再び俺の方に向き直る。そしてそのまま俺の足元に崩れ落ちた。拳銃と違ってナイフというものは、死の感触がやたらとリアルだ。掌に肉に沈み込むナイフの感触が残っている。


 続けて谷岡の身体からナイフを抜き取ろうとする。しかし刃の背にある鋸歯の部分が服に絡まりうまく抜けない。


「水上! てめえ!」


 声を聞き頭を上げると角谷がこちらに向かって突進してきていた。距離的に避けるのは無理だ。俺は悪態を吐きながらナイフから手を離すと衝撃に備える。角谷は躊躇う事なく俺にぶつかってきた。俺と角谷はそのまま吹き飛び硬いアスファルトの地面を数メートルほど転がった。


 俺は身体の痛みを無視して全身に神経を集中させる。そして素早く起き上がると、角谷の腹を目がけて足を振り上げた。


 こいつに拳銃は使わない。足の動きは鞭の動きをイメージする。インパクトの瞬間膝を起点に振り抜くイメージ。角谷の腹部に足の甲部分がめり込み、全ての力が角谷の体に吸収されていく感覚がわかる。


 角谷は呻きとも悲鳴とも取れない声を上げた。そして口から血の混じったものを吐き出すと、角谷はピクリとも動かなくなった。死んだかどうかは確認しない。多分生きているだろう。どうでもいい事だが。


 俺、倒れている谷岡の元に近寄ると、谷岡の体から生えているナイフに手をかけた。ナイフは脇腹から体の内部に向かってまっすぐに突き刺さっていた。ナイフに力をかけると、ゴボゴボと不気味な音が鳴り谷岡の口から血が吐き出される。


 騒ぎを聞きつけたのか近隣の民家の窓に明かりが灯り始める。何事かと窓から顔が覗き、ここにある異常な光景を見た瞬間に顔が恐怖に歪む。


 住人は慌てて窓を閉めた。他にも窓は開いたが皆同じようなものだった。今頃警察に通報していることだろう。


 俺は谷岡の身体から生えているナイフを見て思った。サバイバルナイフとは見た目は派手なのに実戦には向かないナイフだと。それに、生きた肉を切り裂く感触は妙に生々しく気味が悪い。


「俺にナイフは合わんな」


 俺は拳を硬く握り締めると、ナイフはそのままに鳥居の事務所へと走った。


 途中何人かのチンピラと出くわしたが、街中で銃を使う事に躊躇いがあるのかそれとも銃を持っていないのかわからないが、なぜか皆素手で向かってくる。不死の力と全細胞を自分の意思のまま自由に扱える俺には、素手の男達など正に赤子の手を捻るも同然だった。だから事務所に着いた時には拳銃の弾は一発も減っていなかった。


 俺は事務所の様子を建物の影から伺う。事務所は三階建てのビルで、入口付近には、不穏な空気をまとった男達が六人いた。男達は辺りに警戒の目を向けている。街で退けた連中から俺がここに向かっているという情報が回っているのだろう。


 男達を観察していると、皆ジャケットの胸辺りが不自然に膨らんでいるのがわかる。拳銃に違いない。


「六人か……。黒星では頼りないか」


 俺はまだ至近距離からでしか黒星を撃った事がない。六人を相手に一発のミスも許されないという状況は避けたい。しかも丸川企画の時のように対象がほぼ動かない状況ではなく、今回の場合は間違いなく全員が動き回り俺を狙って拳銃を撃つだろう。初めの何人かは奇襲で何とかなるかも知れないが、六人全員を相手にするとなるとやはり丸川企画で手に入れた銃の方がいい。こちらなら一人頭二発撃ってもまだ一発残る。


 俺は拳銃を握り締め、顔の表情筋を操作する。そして男達の方を『後ろの目』で視ながら直接は全く見ずにただの通行人を装い歩き始めた。


 男達は何となしに俺の方を見ているが、俺が水上だという事に気づいている様子はない。


 俺はなるべく男達が直線に並ぶような角度を狙い近づいていく。俺が近づくにつれて徐々に男達の顔に猜疑の色が視え始める。


 男達までの距離が約十メートルを切った時だった。男の中の一人が俺に向かって近づいて来る。


「おい。てめえ何か用かよ」


 それは弱者を威嚇し虐げようとするような威圧的な声だった。俺はそれを無視して更に近づく。なるべく近い方がいい。その方が弾を外さないし斃した男を盾に代えることもできる。


「おい! 何とか言えや!」


 無視する俺に向かって男が再び声を上げたのは、俺と男との距離が二メートルほどにまで近づいた時だった。俺は素早く拳銃を取り出し男に向ける。もう表情を取り繕う必要はない。俺の顔は水上武雄のそれになり、男の顔が驚愕の表情に変わる。


「おい。素人さんにちょっかいかけんじゃねえよ」


 別の男が声を上げたのと俺が引金を弾いたタイミングはほぼ同時だった。黒星に比べるとやや低く小さな破裂音だが、腕と肩にかかる衝撃は比べ物にならないほどだった。これは片手で撃てる代物ではない。


 目の前の男が倒れ始め遅れて他の男達の怒号が通りに響く。


 俺は目の前の男に駆け寄ると、その身体の裏に身を隠し男を抱きかかえるような態勢で拳銃を構えた。そして男達に向かって引金を絞る。しかし男を抱えた姿勢で弾がまっすぐに飛ぶはずもなく、三発撃った内の二発は誰にも当たらず後ろの壁に当たって砂煙を上げた。だが、一発は一番近くにいた男の腕に当たったようだ。


 残った男達もそれぞれが拳銃を取り出し、俺に向かって応射してくる。俺が抱いている男がそれに合わせて痙攣するように体を動かす。仲間に弾が当たる事は構わないようだ。


「なんだ! 何があった!」


 事務所の方から怒鳴り声が聞こえ男達の気が逸れる。俺は男を投げ出し一番近くにいた男の元に走りながら引金を二回弾く。今度は二発とも命中する。しかし、他の男達が放った弾が俺の足と腹部に当たり焼けるような痛みと衝撃が身体を貫く。俺は血を吐き地面に転がった。


「当たったぞ!」


 男の一人が叫び恐る恐る近づいて来る。俺は即座に患部付近の細胞に意識を巡らせ傷の回復を試みる。そしてそのまま男が近づくのを待ち、俺を覗き込む男の顔を目がけて引金を弾き絞った。瞬間男の顔に穴が空き男は意味不明な言葉を吐き出し倒れた。


 他の男達から悲鳴のような声が上がる。俺は傷の治療を細胞達に任せ立ち上がった。


「なんだこいつ! 弾当たってんのになんで倒れねえ! チョッキ着てんのか?」


「頭狙え! 頭!」


 頭ね。もうそれは俺が試したよ。俺は口の中で呟くと拳銃を構える。だがしかし脳だけはまずい。俺は自分の頭を撃ち抜いた時の事を思い出した。一時的とは言え意識を失ってしまう。奴等も頭を撃ち抜いた人間がまさか生き返るとは思うまいが、ドラム缶にでも詰められたら自分の力ではお手上げだ。考えていると立て続けに男達の放つ銃声が鳴り、顔を目がけ弾が飛んで来る。


 俺は神経を集中し脳を避けるように弾を受けた。顔に例えようのない鋭い痛みが広がり反射で目を瞑る。しかし細胞達は男達の様子を克明に知らせてくれる。男は残り四人。真正面に一人すぐその横に一人事務所の入り口付近に二人。男達は俺に弾が当たったのを見て安堵の表情を浮かべていた。


「やったか?」


 男の一人が声を上げそれに同調するように他の男達も銃を下ろした。俺はその瞬間を見逃さなかった。すぐさま一番近くの男に銃弾を浴びせすぐ横にいた男にも浴びせた。そしてそのままジグザグに走りながら事務所の入口にいた男達の元へ走りこむと、至近距離から二人を撃ち抜いた。


 事務所の方からはまだ「何があった!」と言う怒鳴り声が聞こえている。何があったもなにもこれだけの騒ぎだ。何があったかくらいわかるだろうに。俺は思ったが事務所の入口の横に身を潜め身体の機能修復に努める。


 腹の中にあるエネルギーは残り半分ほどだろうか。腹を撃たれた時に少し食糧が漏れたようだが気にしない。


 入口は斎藤の事務所と同様にオートロックの鍵がかかっている。外からでは入る事ができない。少し待っていると入り口に向かって誰かの駆けて来る足音が聞こえてきた。まだ傷は癒えていないが俺は拳銃を構える。弾を装填する暇がない。黒星と合わせて残り十二発。


 扉が細く開きそっと辺りを伺うように男が顔を出した。俺はその顔に銃を突きつけ引金を弾いた。轟音と共に男の頭が吹き飛び、男は扉の間に崩れ落ちた。扉の向こう側から怒号と銃声が聞こえ窓ガラスにヒビが入る。弾が当たっても割れないところを見ると防弾ガラスのようだ。


 俺は扉の隙間に手を挿し込み手の細胞で中の様子を伺う。建物の内部は幅二メートルほどの廊下が奥にまっすぐ伸びている。廊下の片側には扉が幾つかあり、その一番奥の扉が開いていて、廊下には拳銃を携えた四人の男と、開いた扉から顔を覗かせている男が一人いた。上に登る階段が見当たらない事から内階段かエレベーターにでもなっているのだろうと予想する。


 どちらにしろ中に入らなければ何も始まらない。しかし今中に入れば間違いなく男達の銃弾の餌食になる。撃たれても死にはしないが、それでも撃たれた時の衝撃と痛みは撃たれた者にしかわからない恐怖と苦しさがあった。


「ドアの横だ! 隠れてんぞ!」


 不意に頭上から怒号が降ってくる。上を見上げる暇もなく銃声が俺の頭上から降り注いだ。脹脛に焼けるような痛みを感じる。


 俺は扉を開け男の死体を踏みつけると中に転がり込んだ。その時男の口から蛙の鳴くような奇妙な音が漏れる。


 廊下の方から立て続けに銃声が聞こえる。俺は全身の神経に意識を集中させ身体を無茶苦茶に動かした。肩と脇腹に弾は当たったようだ。熱い痛みを感じる。


 俺は廊下の奥に向かって引金を弾いた。弾がなくなるまで。


 薬莢が吐き出され拳銃が震える。轟音と痛み、そして辺りに立ち込める煙で状況を一瞬見失うが、すぐに意識を集中し、廊下の状況を把握する。廊下に立っているのは俺と二人の男だけだった。男達は怯えた表情で俺を見ていた。


「お前……。何なんだよ。なんで死なないんだよ」


 男は拳銃を構えたまま震える声で言った。俺は銃を黒星に持ち替えると男達との間合いを詰める。二人の男は俺に向かって銃が弾切れを示す間抜けな音を立てるまで引金を弾いた。俺の身体には既に二十発を超える弾丸が埋め込まれていた。


「なんで死なねえんだろうな。俺も知りたいよ」


 口から血が滴るのもそのままに、俺は二人に黒星を向けそう言った。黒星から飛び出した弾は、二人の恐怖に歪んだ顔の中心に音もなく吸い込まれていった。


 男が顔を出して覗いていた奥の扉を開けると、中には二十畳ほどの部屋がありそこには誰もいなかった。どうやら一階部分はこの部屋だけのようだ。廊下に続く扉がこの部屋に全てある事からもそれはわかる。


 部屋の中には余計な物が殆どなく、必要な物だけが整然と並べられていて、廊下の惨状さえなければ、よくテレビなどで見るオフィスの一室と見間違えてしまいそうになるほど片づいていた。


 俺は無意識に斎藤の事務所と比較する。斎藤の事務所には所謂極道が好みそうな物が所狭しと置かれ、部屋全体で物々しい雰囲気を醸し出そうとしていた感があったが、この事務所ではそういった類の物が徹底的に排除され、寧ろ倦厭しているかのような雰囲気すらあった。


 同じような生業の者達でも主が違えばここまで部屋の中の雰囲気が変わるとは。二人の仲が悪い理由の一端を垣間見た気がした。


 部屋の一番奥まった場所には階段とエレベーターがあり、エレベーターは最上階の三階を示すランプが灯っている。扉から覗いていた男は、先ほどの騒ぎの最中にエレベーターで三階へと逃げたらしい。


 俺はその場で呼吸を整え、傷の治癒をしながら撃ち尽くした拳銃に弾を装填した。その時に体内に残る弾丸も細胞達を操作して体外に排出する。血で滑った弾丸は、床に落ちても跳ね返らずにそのまま転がった。それから胃の中に残った食料を全て消費し、エネルギーへと替えた。


 俺はそれからエレベーターのボタンを押すと籠が来るのを待たず、足音を忍ばせ階段を使ってできるだけ素早く上階を目指す。どこまで効果があるのか疑問だが俺なりに考えた陽動作戦だった。


 二階の踊り場につき部屋の中にそっと指を入れ確認すると、三人の男がエレベーターの前で銃を構え息を潜めていた。俺に気づいている様子はない。そこで俺は男達を背後から撃ち殺そうかと思ったが、無視して更に上の三階を目指す。斎藤もそうだったが偉そうな奴は大体最上階が好きだ。


 三階に着き俺は二階と同じように指先で室内を確認する。そこにはやはり二階と同じように四人の男達がエレベーターに向かって銃を構えていて、俺の到着を今か今かと待ち構えていた。ただ二階と違ったのは、別の二人の男達が階段の方にも注意を払っていた事だ。


 部屋の一番奥には、眼鏡をかけた一見サラリーマンにも見えそうな男が、神経質そうに部屋の中を行ったり来たりしている。あの男が鳥居か。


 さてどうするか。このまま飛び込んでもいいが残りのエネルギーを考えるとあまり無謀な真似はできない。


 その時階下から戸惑うようなざわめきと怒鳴り声が聞こえてきた。「なぜいない」「奴はどこに行った」その言葉の意味は考えずともわかる。俺が一階で動かしたエレベーターの籠が二階に到達した。それ以外にない。二階にいる者達が俺が階段を使った事に気づくのも時間の問題だ。間もなく二階にいる全員が三階に殺到するだろう。


 三階にいる男達が皆階段を見て訝しげな表情に変わる。考えている時間はない。銃に装填されている弾は二丁合わせて二十一発。ここにいる人間は三階と二階の者を合わせて全員で九人。三階と二階の人間に挟まれての泥試合は避けたい。


 俺は階段の踊り場から部屋の中に飛び込んだ。室内にいた男達の顔が驚きの表情に変わり動きを一瞬止める。充分だった。全身の細胞から必要な情報が脳内に送り込まれ、コンマ一秒の時間が凝縮され、無限とも思える一瞬に変わる。そのまま一番近くにいた二人に駆け寄りながら俺は黒星の引金を弾いた。


 一人は腹を押さえ、もう一人は足を押さえながら悲鳴と共に倒れる。エレベーターの前にいた男達の持つ拳銃が火を吹き弾が放たれる。弾は俺の体を掠めるがその動きを阻害するものではない。


 俺は勢いに任せそのままエレベーターに向かい走りだす。何発かの銃弾が体に食い込むのを感じる。それでも止まらない俺を見てか、男達の表情は今まで見てきた男達と同じ恐怖の色に染まる。


「脚狙え! 脚!」


 意識を向けると鳥居と思しき男が叫んでいた。それを聞いた男達は狂ったように俺の足元に弾を浴びせ始める。俺は飛んだ。轟音が室内に響き渡る。見る間に男達の顔が迫り俺は黒星を弾いた。宙空に於いても俺の体幹はぶれる事なく、黒星から放たれた弾丸は男達の身体に飲み込まれていく。そして俺が床に脚を着けた時には男達は床に倒れていた。


 突然鳴り止んだはずの轟音が室内に響き背中に衝撃と激痛を感じる。振り返ると二階にいた男達だろう。こちらに銃を構えていた。男達は俺を仕留めたと思ったのだろう。顔に嫌らしい笑みを貼りつけ銃を下げていた。


 ちょっとつき合ってやるか。心の中で呟いて、俺は痛みに顔をしかめながら前のめりに倒れるふりをする。男達から歓声が上がった。俺は身体が倒れ切る寸前に鳥居のいる方に向かって床を蹴った。


「馬鹿野郎! 油断するんじゃねえ!」


 鳥居が叫ぶ。しかし男達が再び銃を構える頃には俺は鳥居の頭に銃を突きつけていた。


「こいつの頭吹っ飛ばされたくなかったら、銃捨てろ」


「馬鹿が」


 耳元で鳥居が呟く。鳥居を見ると後から来た男達に侮蔑の目を向けていた。


 俺は鳥居の背後に回り肩を掴んで驚く。見た目からは想像できないが、スーツの下には無駄なく鍛えられた肉体が眠っている。そう思わせる弾力があった。


「なあ。あんたのその身体どうなっている。皮膚の下に鉄板でも仕込んでいるのか?」


 鳥居は頭に銃口を突きつけられているにも関わらず、顔色一つ変えずに言った。俺が想像していた男とは少し違うようだ。一流大学出のインテリ。暴力などとは縁遠く頭一つでのし上がってきた男。俺が思い描いていた鳥居とはそんな男だった。


 しかし実際にこうして真近で見ると、目の前で人が倒れても動じない精神力と鍛えられた肉体を持つ男だった。斎藤とは違う何か。それをこの男は持っている。俺はそれが何なのかを知りたくなった。


 鳥居の問いに答える代わりに、俺は腕についた銃瘡を見せる。そして意識をその傷に向け優先的に治癒して見せた。鳥居は驚愕の表情を浮かべる。


「おいおい反則だろそれは。どうなっているんだあんたの体は」


 鳥居は面白い玩具でも見つけたかのような顔で笑っていた。


「さあな。あんたらが俺を追い込んだせいでこうなった。それよりこれが恐くないのか?」


 頭に突きつけた黒星を、俺は少し傾ける。


「ああ。恐くないね。あんた銃は素人だろ?」


 鳥居の言葉の意味を俺は図り兼ねた。


 確かに銃を扱ったのは今日が始めてだが、全細胞に神経を通わせる事のできる今となっては黒星を身体の一部のように扱える。撃ち方などからそれを推測できるはずはない。何しろ身体の一部なのだから。


 俺は身体の一部である黒星を持つ手に意識を集中した。少し細くて持ち難いグリップは、多少扱い難いが慣れてしまえばそれほどでもない。初めこそ持て余していた手にかかるずっしりとした鉄の重みは、今はなぜか俺の心を落ち着かせ……る? 何かが違う。……なんだ。軽い?


 黒星に込められる弾は確か六発。このフロアにいたのは鳥居を含めて――七人。


「気がついたか? そのトカレフにもう弾は入っていない。そしてそれに気づかないお前は銃の素人だ。違うか?」


 鳥居は言い終わるか終わらないかのうちに身を捻ると俺の腕を取った。すると不意に自分の身体が宙に浮く不気味な感覚が襲い、抗う事のできない力を感じる。重心を失った俺は床に叩きつけられ、鳥居に上から抑え込まれた。


 喉と首に圧力を感じ顔が鬱血するのを感じる。こめかみが脈打ち視界が涙で歪む。身体を動かし鳥居から逃れようとするが身体がうまく動かない。それは神経を集中して全身の筋細胞を総動員しても同じことだった。


「なんだ。ベレッタ持っているんじゃないか。こっちを使っていればこんな事にならなかったのにな」


 俺の懐から丸川企画で手に入れた拳銃が転がり落ちる。この拳銃はベレッタと言うのか。そんなことを考えている内に、俺の意識は唐突に暗闇の中に転がり落ちていった。


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