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狭間堂ー時知らずー  作者: かつを
13/15

黒い太陽

 *黒い太陽


「なんじゃいこんな傷。大した事ないわい。ほんま大騒ぎしてからに」


 斎藤の診察を終えた後、ヤブ医者は一昨日見た時と何ら変わらない調子で言った。


「それにしてもやっぱりわしは名医やの。そっちの兄ちゃんもう治っとるがな」


 俺は肩を竦めヤブ医者に苦笑いを送った。


「そしたら後二時間ほど安静にしたら帰ってもええで。まさか今日も追われとるとは言わんやろ?」


「ああ、大丈夫だ」


 俺はそうヤブ医者に返す。ヤブ医者はそれを聞くと奥の部屋に消えて行った。そして暫く戻ってこない様子を見て、俺は斎藤に訊いた。


「なんで、俺の事助けに来てくれたんですか?」


 俺と斎藤の間に重い沈黙が落ち込む。俺は斎藤が口を開くまで待っていた。しばらくして、斎藤は覚悟を決めたように口を開く。


「思い出しちまったんだ。お前の事をよ」


 また斎藤は黙り込む。俺は口を挟まなかった。


「俺はな、お前の事前から知ってたんだ。――遠い昔の事だ。二十年以上も前だったかな? 俺がまだチンピラやってて、柳川会の下でちょろちょろしょうもない仕事を請け負ってた時の事だ。その日俺はある家の前で貼り込んでた。その家はバラック小屋みたいな家でよ、表札もかまぼこの板でできてたよ。そんでそこに油性マジックの汚い字で上沢って書いてたな」


 上沢と聞いて急に胸がざわつき始める。


 俺はその苗字を知っている。ひどく懐かしいような苦しいような気持ちになる。


「その日はめちゃくちゃ暑くてよ、十月に入ったってのに気温は三十度を超えてた。車のラジオで言ってたから間違いねえ。しかもそんな時に限って車のエアコンは壊れちまってる。ただでさえ怠い貼り込みの上にそんなクソみたいな状況が重なっちまったもんだから、俺はかなりイラついてたな」


 斎藤はポケットから煙草取り出すと火をつける。壁に貼ってある禁煙の貼り紙は煙草のヤニで黄ばんでいた。この診療所に来るような者達にとって、世の中の貼り紙の大半は道端の草や石ころと何ら変わらないものなのかも知れない。


「どんくらいそこにいたかな。貼り込んでる相手の奴は一向に帰って来やしねえ。車の灰皿は俺の吸った煙草の吸殻でパンク寸前だった。俺はそれを見て今の俺の気持ちみてえだなって思ったよ。それで今吸ってる煙草の箱が終わったら今日は帰るかって思ってた時だった。ゆらゆら陽炎で揺れてる道路の向こうからよ、呑気に歌唄いながら歩いて来る家族がいたんだ。俺はそれ見て平日の昼間っから呑気なもんだなんて思ってたな。よくよく考えりゃあわかりそうなもんなのにその時の俺は暑さで頭がおかしくなってたんだな。とにかくそう思ってた」


 斎藤の話は、なぜだか俺の胸をざわつかせる。俺にまつわる話だから当然なのだが、それでも聞きたくないような知りたくないようなそんな気持ちにさせる。知ってしまうと自分が自分でなくなる。俺は漠然とそう思った。


「するとそいつ等はよ、俺の張ってた家に笑いながら入って行っちまった。それを見た俺は気がついたらその家の中にいて、その家族の親父をぼこぼこにしてた。その家にいたのは親父と母親。それから……」


 急な耳鳴りがする。見えている景色が歪み時間の密度が濃ゆくなる。鼻を突く生温く粘っこい腐臭を思い出す。眩しい陽光を背にした黒い塊。黒く光る塊。……黒い太陽。……斎藤。


「俺の事を睨みつけて来るガキの頃のお前だった」


 幼い頃のあの日の記憶が蘇る。床に蹲る黒い塊。それは俺の親父。酒とギャンブルに溺れどうしようもなくどうしようもない親父。


 あの日親父が消えてから俺の苗字は上沢から母親の旧姓の水上に変わった。母親は親父について何も語らなかった。俺も母親に何も訊かなかった。俺はその日の事を全て暗い記憶として蓋をした。そしていつしか忘れ去ってしまった。碌でもない親父。俺にとってはどうでもいい存在だった。それでいいと思っていた。


「その時のガキの目を俺は忘れることができなかった。今思えばお前を始めて見た時わかってたのかも知れないな」


 俺も。俺も覚えていたのかも知れない。斎藤を夜の街で初めて見た時。黒い太陽だって思ったのは、夜の街に輝いていたからではなく、眩しく光る太陽を思わせる鮮やかなネオンを背にした黒い顔だったからだ。


「あの後な、俺はお前の親父を……」


「殺したんですか?」


 俺は斎藤の言葉尻を捉えた。


「あっ? 殺さねえよ。殺してたら今回お前の事も助けてねえよ。俺はお前の親父をマグロ漁船に載せたんだ。その時にお前にだけは手を出さないでくれってお前の親父に頼まれたんだ。守る義理はねえがそれでも俺は今回お前を殺そうとしちまった。あの時お前の目を見て思い出したんだ。ああこいつはあの時のガキだったんだってな。それでこのままお前を見殺しにするのは何かわからねえが違うって思っちまったんだ。だから俺がお前を助けたのはほんの気紛れだよ」


 斎藤は傷が痛むのか顔をしかめながら言った。


「じゃあ、マグロ漁船で親父は……」


「いや、死んでねえぞ。今生きてるかどうかは知らねえが、お前の親父は借金返した後お前等に見せる顔がねえって言ってそのまま海外に行っちまった。たしかカンボジアかどこかに行くって言ってたかな」


 親父が生きているだと? 俺は斎藤の言葉に耳を疑った。俺の胸の中にどうにも言い表せない感情が沸き起こる。親父が生きていた。親父が……。


「――カンボジアですか」


「ああ、思い出した。確かにカンボジアだって言ってた。なんでも、アンコールなんたらが見たいだかなんだか言ってたからな。あれのあるところはカンボジアだろ? 俺は映画で見たから覚えてる」


 カンボジアに親父がいる。


「――行きたいのか?」


 斎藤の言葉に俺は顔を上げた。しかし鳥居は俺の事を死んだ人間だと言っていた。パスポートを申請する事はできない。それに生きていると警察に届けたところで俺は犯罪者なのだ。どちらにしろパスポートは手に入らない。海外に渡るにはパスポートが必要だ。


「いや、俺はもうこの世にいない人間なんです。だから無理ですよ」


 俺は力なく笑った。俺はもう死んだ人間なのだ。身の証を立てる事はできない。ひっそりと日本の片隅で生きていくしかないのだ。


「ほれ。これ持って行けよ」


 斎藤が黒い巾着袋を俺に投げて寄越す。巾着袋は軽い音を立てて俺の手の中に収まった。金属の擦れる音も少し聞こえた。


「これは?」


「開けてみろよ」


 斎藤は顎で袋を示した。俺は袋を開け中に入っている物を取り出した。袋の中には見覚えのある車の鍵とパスポートそれから現金が入っていて、現金はざっと数えて五十万円ほどもあった。


「そのパスポートじゃ質が悪すぎて正規の出国は無理かも知れんが、海外で身の証くらいは立てられるだろう。一応戸籍も生きているしな。そいつ何があったか知らないが元自衛官らしいぞ?」


 パスポートのページをめくると藤井和博と書いてある。藤井。元自衛官の身に何があったのかは知らないが、戸籍を売るとはよほどの事があったに違いない。


「これ、どうして……。それにこれはプレジデントの鍵じゃないですか。金だってこんなに……」


 俺の頭は混乱していて何を言えばいいのかわからなかった。


「金は親父さんの借金の過払分て事にしとけ。それにお前パスポートも持たずにマカオに行くつもりだったのか?」


 斎藤は照れたように笑った。


「でも斎藤さん。初めから俺の事見捨てるつもりだったんじゃ……」


「馬鹿か。……俺とお前は義兄弟だろうが」


 斎藤の言葉に景色が歪む。そうだった。斎藤は鳥居の指示で動いていただけだったんだ。それを俺は忘れていた。斎藤は俺をマカオに本当に逃がせるつもりだったんだ。俺はなんて馬鹿なんだ。


「馬鹿野郎泣いてんじゃねえよ気持ち悪い! それに俺はお前を殺そうとした。それは確かだ。これでチャラになるかはわからねえがとりあえずこれで納めといてくれ」


 斎藤が俺の胸を殴る。斎藤の拳の痛みは以前の痛みと全く同じものだった。俺は「すみません」と応える事が精一杯だった。


「――もう行くのか?」


 斎藤の表情からは何の感情も伺えなかった。だが俺にはわかっていた。斎藤が俺の身を案じている事が。


「はい。川崎の大黒埠頭に鳥居の用意した船が待ってますから」


 俺は港に死体を送り届け死体を処理し、その後移植手術のためにマカオに行く予定だった。ならば俺をマカオに送る船がそこにはあるはずだ。


 鳥居は死体の処理業者に延長をかけると言っていた。いつまで待っているかはわからないが、鳥居は今キャンセルの連絡をする暇もないほどに忙しいはずだ。


「そうか。もし日本に帰って来たら挨拶くらい寄越せよ」


 俺は笑ってそれに返し、ヤブ医者の診療所を後にした。




 プレジデントは俺が以前乗り捨てたコインパーキングにそのまま停まっていた。


 駐車料金は五千四百円になっていて、一日の上限額を三度超えた計算になる。俺がこの騒動に巻き込まれて三日近くになるという事か。たった三日。その三日間の中で俺は、二度死にそしてその都度生き返り、加奈を喪い何人もの人間を殺し傷つけた。たった三日間の中でこれだけの事が起こった。あまりにも長い三日間だった。


 だがこれで終わりではない。俺にはまだやらなければならない事が山ほどある。親父に会わなければならない。会って一発殴りつけてやる。それから何より大事な事。加奈を死なせてしまった償いをしなければならない。償いと言っても具体的に何をすれば良いのか全くわからないが、とにかく俺はそれを一生をかけて償おう。そう自分で決めた。そしてこの身体の秘密。それも探らなければ……。


 そう言えばここはあの老人の店の近く。老人は俺に必ず戻って来いと言っていた。俺は時間を確認する。もう十一時を回っている。深夜と言っても差し支えない時間だ。老人はまだあの店にいるだろうか。




 明松は早朝の品川の街を走っていた。人ごみを掻き分け車にクラクションを鳴らされながら。


「そんな大事な事なんで早く言わないんだよ!」


『俺は何度も言おうとしたぞ。しかしお前が聞かなかったんじゃないか』


「あの状況で聞けるかよ!」


 息も絶え絶えに明松は叫ぶ。


 地下室を発見した後、坂崎と明松は目の回るような忙しさに見舞われた。状況説明と事情聴取、各種書類の作成。それらが終わり家に帰る頃には日付が変わり遠くの空が薄っすらと明るさを帯びてきていた。そして明松はそのまま俺の話を聞く余裕もなく倒れ込むように眠りに落ちた。


『そこを右だ。――そう、そのビルの二階にそのモグリの診療所はある』


 数日振りに見たヤブ医者のいるビルは相変わらずそこにあった。


「すみません! ここに斎藤ってヤクザと水上って名前のチンピラ来ませんでした?」


 明松は診療所に入るなり大声を上げた。


『チンピラとはなんだ』


「うるさい。お前なんかチンピラで十分だ!」


「なんじゃい騒がしい」


 相変わらずみすぼらしい格好のヤブ医者は珍しくカルテを見ていた。


「兄ちゃん。ここ一応病院やで? 個人情報晒す医者がどこにおんねん」


「俺は警察だ。早くしないと手遅れになるかも知れないんだ。頼む教えてくれないか?」


「……兄ちゃん警察かいな。そうは見えんなあ。でもまあ、警察やろうがなんやろうがわしには関係ないわな」


 俺は明松とヤブ医者の遣り取りを横目に本体が残したイメージを読み取る事に集中した。次々と沸き起こるイメージ……。斎藤……。黒い太陽……。親父……。カンボジア……。マカオ……。


『おい明松早くいかないとまずい! 俺の本体はマカオに向かってるぞ!』


「マカオだあ?」


「兄ちゃん。面白い力持っとるのう。ちょっと話聞いていかへんか?」


 ヤブ医者はさっきとは打って変わって興味深そうに明松を見ているが、今ヤブ医者の話を聞いている時間はない。


「なんだってマカオなんかに」


『俺の親父がカンボジアにいるらしい。俺の本体は親父に会って一発殴るつもりのようだ。とにかく行かないと』


「わかったよ!」


 明松はやけくそな声を上げる。それをヤブ医者は楽しそうなものを見物する目で見ていた。このヤブ医者にとって明松は異常な存在ではないようだ。そして診療所から出て行く明松の背中に向かって、「もし捜査で困った事があったら一回おいでえな」と軽い口調で言った。


 ヤブ医者と警察の捜査。これ等に何の繋がりがあるのかわからなかったが、今の俺達にはそれを考える時間も余裕もない。




 結局あの店に老人はいなかった。仕方なく俺はプレジデントに乗り込むと、カーナビの案内に沿って登録してあったポイントを目指した。そしてカーナビのポイントは、目の前の大黒埠頭海釣り公園を示している。それは間違いない。だが俺はここに到着して思った。本当にこんなところが死体の引き渡し場所なのかと。


 夜になり公園は閉園しているが、昼間ともなれば平和な一般客が沢山いる事だろう。おおよそ死体の受け渡しに選ぶ場所ではないはずだ。


 公園の入り口で立ち尽くしていると、どこからともなくふらりと男が現れた。服装はいかにも夜釣りに来たといった格好だが、男のまとう空気は、一般人のそれでない事はなんとなくわかる。


「あのプレジデントはあんたが乗って来たのか?」

 男の声には聞き覚えがあった。プレジデントの中で待っている時斎藤から渡された携帯電話にかかってきた声と同じものだ。あの携帯電話はいつの間にか失くしていた。多分老人の店で串刺しになった時落としたのだろう。


「ああそうだ」


「待ちくたびれたぜ。クライアントに連絡はつかないし運び屋のあんたにも連絡はつかない。てっきり中止になったかと思ったよ。で、例の物は?」


 例の物とは多分友部組長の遺体の事だろう。この男にとって死体は人間ではなく物なのか。


「計画が変わったんだ。物はない」


「は? じゃあなんでここに来たんだ」


 男の顔が明らかに不機嫌なものに変わる。


「俺はマカオに行きたいんだ。鳥居が言うには俺はここからマカオに行くらしいんだが聞いていないか?」


「それは俺の仕事じゃない。俺の仕事は例の物を安全且つ迅速に処理するだけだ。物がないのなら俺は帰るぞ。しかし前金でもらってた分はキャンセル料として戴いておく。クライアントにはそう伝えておけ」


 男はそう言うと来た時と同じようにふらりと闇に消えて行った。取り残された俺はどうしたら良いのだとその場に立ち尽くした。そして鳥居が言っていた事を思い出した。


 鳥居は手間が省けたと言っていた。その手間とは俺をマカオに送らなくて済むといったものではなかったか。だとすると鳥居は、俺をマカオに送る便をキャンセルしたのではないか。――いやそう考えるのが妥当だろう。そう思った俺はプレジデントに戻った。


「これからどうするかな……」


 俺は呟きながら車のエンジンをかけた。するとどういう仕掛けかわからないが、カーナビに新しい行き先の案内表示がされていた。


「ここに行けばいいのか?」


 独り言ちたところで返事などないとわかっていたが、それでも俺は不安から何か言わないではいられなかった。


 カーナビの指示に従い車を走らせる。時間にして十五分程度だろうか。着いた場所はコンテナや倉庫などが並ぶ港だった。見える範囲に人はいない。だが、少し神経を集中すると人のいる気配がする。


 微かな息遣い、衣擦れの音、通常なら聞き取れないほどのヒソヒソ声。人数にして十人程度だろうか。その中の一人が動く気配が聞こえる。続いて車の扉が閉まる音が聞こえた。俺は少し身構える。


 コンテナの裏から現れたのは頭が禿げ上がっていてずんぐりと太った身長の低い男だった。男の顔はどこか異国の顔立ちをしている。


「あんた水上さん? ああ、今は藤井さんだったか」


 俺は黙って頷く。男の口調にはどこか日本語とは違う微妙なアクセントが含まれている。やはりこの国の生まれではないようだ。恐らく東南アジア系の出身だろう。


「一応パスポート見せてくれる?」


 俺は男にパスポートを渡す。男はそれを暫く眺めた後「じゃああの船に乗ってもらえるかな?」と言った。


 男が示したのは、巨大なタンカーとタンカーの間に押し潰されそうになって停泊している小さな漁船だった。


「他にも行く人間がいるのか? 俺の他に何人か人間がいるようだが」


 男はなぜか少し驚いた顔をする。


「いや、あいつらは入国した奴等だ。あんたとは逆だよ。行くのはあんた一人だ。――しかしあいつら喋るなと言っていたのに声を出したのか」


 男の顔が苛立ちの色に変わる。俺はそれに不穏な空気を感じた。何度も見て来た暴力の兆候。入国した者とはすなわち密入国者達だろう。この男はその者達に危害を加えるに違いない。


「いや、俺は特別耳が良いんだ。奴等は喋っちゃいないよ」


 男の表情は変わらない。俺の言葉に効果はなかったようだ。俺は若干の罪悪感を胸に漁船に乗り込んだ。


 漁船の中には操舵室の下に船室が一つあり、その部屋は意外と広かったが汗と排泄物の臭い、そして食べ物の腐ったような臭いが充満していた。日本に運んで来た密入国者達をここに詰め込んでいたに違いない。


 俺はそこを出て甲板に立った。都会独特のヘドロのような海の生臭さが鼻を突くが、あの悪臭の満ちた船室に比べればここの空気は山深い森林の空気のようなものだ。


「そこに立っていると危ないぞ」


 声がするので振り返ると、そこには先ほどの男が操舵室に入って行くところだった。


 立っていると危ないのなら寝転んでやれ。俺は甲板に大の字に寝転んだ。


 冷んやりとした鉄の冷たさが体温を奪う。操舵室の方から盛大な溜息と「落ちても知らないぞ」と言う声が聞こえる。


 海に落ちたら俺は死ぬのだろうか。――多分死なない。俺は少しだけその事を考えて目を閉じた。そしてこの三日間にあった事を考えていると背中に船のエンジンが振動するのを感じた。どうやら出港の時間が来たようだ。


 この海の向こうに何が待っているのか俺は知らない。親父はまだ生きているのか。それ以前に見つける事ができるのか。それもわからない。だがなぜだか俺には不安も何もなかった。何があっても死なない身体を持つという事がそう思わせるのかも知れない。そんな事を考えていると俺はいつの間にか眠りに落ちていた。夢は見なかった。




 了

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