83回目 こういうのは潰しておくに限るよね
週末が来て、女子生徒が客の所に連れて行かれるようになる。
それを見てトモルも動き出す。
外にいく理由の大半が習い事やお稽古事である。
一番無難で妥当なものなのだろう。
ただ、本当にそんな理由で外出する者は少ない
実際には、もっと邪な理由で外に連れ出されている。
ただ、今週はそうでもない。
そもそも、外出する者がほとんどいない。
外出するのは、本当に正当な理由によるものだ。
そうでない者達は、ほとんどが寄宿舎に留まっている。
売春させられてる者達もだ。
客をとらされる予定はあったのだが、全部断っておいた。
体調不良あたりを理由にして。
もちろん、嘘である。
客からしたら残念なのだろうが、トモルの知った事ではない。
それに、もう二度と売春などをさせるつもりはない。
お楽しみはここで終わりにしていく。
それでも何人かは仕事に出した。
ただし、これにはそれなりの理由がある。
今回、あえて客をとったのは、比較的学校の近くにいる者に限った。
それも、トモルが行動可能な範囲だからだ。
そうした地域にいる客限定で、注文を受け取った。
捕まえて色々と工作をするためだ。
だったら、わざわざ女子を送りだす必要もない、となるが。
それだと相手が警戒する可能性がある。
そうなると、計画が崩れる。
なので、危険を承知で女子を送り出す事にした。
その分、トモルの責任は重大である。
さすがにこうして送り出すのだ。
トモルも無責任な事は出来ない。
普段は、実家が潰れようが、手下がくたばろうがどうでもいいと考えてるが。
しかし、自分の意思で誰かを動かしてるとなると、そうも言ってられない。
さすがにここで「俺、知ーらね」と言えるほど悪人にはなれなかった。
失敗は許されない。
女子生徒を守り、それでいて、客を確実に捕らえねばならない。
その為に事前の準備もした。
あとは状況次第となる。
全てが上手くいくとは思えないが、可能な限り成功させたかった。
その為にも、最初に出発した女子を追いかけていく。
そこにいる、本日最初の客を捕まえるために。
そうして外出する女子を尾行し。
彼女を乗せた馬車がとある建物に到着する。
人気がない場所にある建物だ。
外見は山小屋といったところか。
森林の近くにある所をみると、狩猟の時に使う小屋に思える。
客はそこに来ていた。
予定された時間まではまだ余裕があるのだが。
それなのに既に待ってるあたり、律儀な性格なのかもしれない。
遅れてやってくるのが普通の貴族としては珍しい。
あるいは、待ちきれなかっただけなのか。
(どっちでもいいか)
相手の事情など知った事ではない。
トモルに必要なのは、今現在の客の気持ちではない。
そいつが持ってる情報などだ。
それを手に入れる為に、小屋へと一気に近づいていく。




