77回目 そうするつもりなら、こうしていくしかないでしょう 2
女子寄宿舎の舎監達は、トモルの質問に積極的に答えていった。
聞かれた事だけでなく、関連しそうな事も含めて何でも。
もちろんそれ以外にも重要な事なら何でも教えていった。
「隠し事したり、口にしないでいるのは許さないからね。
真相を黙ってる、隠蔽してるってのも嘘を吐いてるって事だから」
そう告げた事が、彼女らの積極性に関連していたのかもしれない。
それによって知り得たのは、頭を抱えたくなるような事だった。
「まいったな」
口調はつとめて軽くなるよう意識はした。
しかし、それと裏腹に頭も気分も重い。
同時に胸くそが悪くなり、おぞましさに胃袋の中身を吐き出しそうになった。
事前に聞いていた事の裏付けが目の前の舎監達によってなされてしまったからだ。
「本当にやってたのかよ、売春」
それがこの女子寄宿舎で行われていた事だった。
学校に通う年頃の女子。
この年代の娘が欲望の対象になる事は、残念ながら珍しい事ではない。
そういった需要は、ある程度存在するのは確かである。
そして、力のある者はこういった欲望を成就しようとする。
もちろん、そんな事は簡単にできる事ではない。
貴族が自分の領民に対してであっても、こういった行為の強要は戒められている。
そんな事をしていけば、民が国に見切りをつけるからだ。
最悪の場合は武力蜂起もありえる。
そうはならなくても、逃散という逃亡は簡単に起こる。
こんな事が続けば、国が土台からあやうくなる。
そういった統治側の都合による部分が多分にある。
しかし、利害が絡むからこそ、こうした行為は禁じられている。
これも含め、相手の意志を踏みにじった行為全般が。
発覚すれば貴族と言えども処罰対象になる。
こんな統治者に民が従うわけがないからだ。
そしてこういう事をやってる者が一人でもいれば、民は統治者全員の資質を疑う。
事はやらかした貴族だけでなく、統治側全体の信用問題になる。
なので、こういった事をしでかす場合には、反発が起こりにくい相手を選ばれる。
保護者のいないような者がこれにあたる。
身よりの無い者達は、こういった者達の餌食になりやすい。
忌むべき事だが、こういった事が実際に起こってしまっている。
だが、そこで満足出来る人間ばかりではない。
簡単にどうにかできる存在、見下してる対象ではおさまらなくなる者もいる。
出来れば同じような地位にいる、高貴な存在を求める輩も出てくる。
無駄に自分の地位を振りかざすような輩の中には、同じ貴族にしか興味が向かない者がいる。
そうした者達に餌を提供していたのが、この女子寄宿舎だった。
それを行なってるのが、高位の貴族だった。
それに連なる、学生だった。
より高い地位の貴族による脅しと強制がなされている。
逆らえば、家ごと踏みにじられるという事実。
それらが寄宿舎に集まる者達を、そこに娘を送ってしまった親と家を黙らせていった。
寄宿舎は、性欲のはけ口を逃がさない牢獄になっていった。
悲惨なのは、親が見返り目当てで娘を提供する場合もある事だった。
泣く泣く従わされてるなら同情の余地もある。
だが、地位や贈答品を求めて娘を提供する者もいる。
もちろん当事者の意志など全く考えずに。
そういう親は、娘に様々な事を言い含める。
決して逆らうな、言う事に従っておけと。
泣き脅しから威圧まで手段は様々だ。
共通してるのは、娘を道具として扱ってる事。
そこに胸の痛みなど決しておぼえない事。
それどころか、躍進の機会と喜ぶ事。
恐ろしい事に、こんな親も存在するのだ。
娘を栄達の為の道具にしてる親が。
そうして寄宿舎に入れられた娘は、売春をさせられていく。
学業が終わって寄宿舎に帰ってから、客の所に送られる。
安全のために、客が寄宿舎に来ることはほとんどない。
そんな危険を冒すような人間は少数であった。
通常、学業が終わってからや、休日に外に連れ出されるのが通例だった。
たまに、どうしても寄宿舎でと希望する者もいるらしいが。
どちらにせよ人目に付かないように注意がはらわれている。
そして客層がこれまた驚く事に、児童育成などに力を注いでると言われてる者達だったりする。
子供達を育てよう、害悪から守ろうという者達が率先して子供を食い物にしてるという。
他にも治安維持に携わる者達や統治の職務に就いてる者も顧客にいるという。
貴族の中でも要職にある者が、こんな事に耽溺してる。
むしろ、職権を利用して思うがままに動くために、こういった事をしている。
子供に接する機会を増やすために、それで捕らえられないように職権を濫用するために。
どうにも救いのない現実がここにはあった。




