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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第3章

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73回目 三流の悪役のように名前を出してくるのはどうなのかと

「まあ、いいわ」

 怒鳴り声をあげるのも大変なのか、途中でスミレは話を切り上げた。

「あんたがそういう態度なら、それで結構よ。

 身の程というものを思い知る事になるからね」

「ふーん」

 だから何だと思った。



 何をどうするつもりか知らないが、トモルにはどうでもいい。

 実家が潰されようが何だろうがだ。

 それで死ぬわけではない。

 生きてくだけなら冒険者でもやればいいと考えてる。

 それでも十分上手くやっていく自信があった。

 既に実績も出しているのだし。



 そういった態度を隠すことなく示したせいだろうか。

 スミレは更に怒りを募らせていった。

 だが、取り繕った表情と態度を示す。

 余裕ぶった顔を作り、本心を何とか隠す。

 そして、居丈高を態度を装いながら宣言をする。



「私、藤園カオリ様と懇意にさせてもらってますの」

 ワタシではなくワタクシと言いながら、自分の交友範囲を示す。

 それを聞いたトモルは、「誰だそれ?」と思った。

 だが、藤園という名字にはさすがにおぼえがある。



(公爵家か?)

 この国でその名字を名乗るのは、その一族しかいない。

 宮廷において広く勢力をのばし、なおかつ要職を歴任する家である。

(その家の誰かとつながりがあると?)

 だとすれば少しばかり面倒ではあった。



 例え末端であったとしても、藤園に連なるものならばバカには出来ない。

 それこそトモルの家など跡形もなく消し去る事くらいはやってのける。

 そういう力をこの国において持ってるのが藤園家である。

 公爵という爵位が示す権力と権勢は、伊達や酔狂ではないのだ。



「それで、それがどうかしたのか?」

 とりあえずトモルは話を進める。

 やんごとなきお方のお名前を出してきたのは分かるが、それが何を意味するのかが分からない。

 スミレは何故かやたらと調子にのってるが、何を根拠にそんな態度をとってるのか不明だった。

 そんなトモルにスミレは、「これだから田舎者は」と言ってくれた。



「藤園のカオリ様と懇意にさせてもらってる私にそんな態度でよろしいので?」

「だから何が言いたいんだ?

 こっちの想像力を試すような言い方してるけど、意味がないだろ。

 言いたい事があるなら、まずはっきり用件を示してくれ。

 とりあえず藤園カオリ様とやらが、どこのどなたなのかをまずはっきりと。

 そして、そのお方の名前を出して何をどうするのかを。

 そこが綺麗サッパリ抜けてるぞ」

「んまあ!」

 スミレ、更に怒りをこみ上げていく。



「あなた、これだけ言って何も分からないの?」

「俺は魔術師でもなんでもないから、他人の考えなんて言ってくれるまで分からないぞ。

 察しろとか言うなら、それこそそちらの考えとは全く違う、見当違いな事を思い浮かべるかもしれないし。

 それでもいいなら、そちらの考えとは全く違う適当いい加減な出鱈目を思い浮かべるが」

「これだから考えのない田舎者は」

 スミレはそう言って口元をおさえてオホホホと笑う。



 宮廷においてはわずかな言動から様々な事を察する事が求められる。

 表立ってあれこれ言うと面倒が発生する、責任問題にもなりかねないからだ。

 だが、はっきりと示さないから間違った方向に物事が進む事もある。

 そうならないように頭を使うのが貴族ではあるのだが。



 ただ、トモルはそれが無意味でばかばかしい習慣と思っていた。

 責任問題になるのが怖くて、言質をとられるのが怖くて何も言えないなら、指示を出す側になってはいけない。

 そもそも、これは発言の揚げ足を取ったり、言質をとる事に熱心な連中が悪いのだ。

 こんな事を続けていたら、何も言えなくなる。

 それこそ沈黙は美徳となり、あらゆる指示や指揮が出来なくなるだろう。



 スミレの言いたい事はそういった貴族の風習についてなのだろうとは思う。

 だが、顧みる価値のない馬鹿げた考えだと思った。

 それをトモルは何一つ尊重する気にはなれなかった。

 それに。



「田舎者はあんたもだろ」

 それこそ揚げ足をとってトモルは発言する。

「その田舎者を取り仕切ってる家なんだろ、あなたは。

 それが自分の下の家を田舎者と?

 なんだ、自分の家を貶す自虐か?」

 他人を貶すにしても、もう少し状況というか状態を確かめてから言ってもらいたかった。



 様々なしがらみに絡まれてる貴族である。

 それが面倒になる事もあれば、こうして飛ばした矢が自らに返ってくる事もある。

 スミレは自分の立場を忘れて、あるいは全く考えもせずに馬鹿な事をほざいていた。

「それとも森園家はうちと関係のない家だと?

 だったらそれはそれで構いませんが。

 一応家に連絡をとってみてもいいですかね?

 父上に、

『森園家のスミレ様が我が家を離縁すると仰ってた』

と報告しないといけないので」

「なんでそうなるの!」

 スミレがまた怒声をあげる。

 呆れつつトモルは答えてあげる。



「いや、だって、あなたが自分の家も含めて侮辱するのですから。

 これは我が領地を切り捨てるという事なのかと」

「そんなわけないでしょ!」

「では、森園家も田舎者という事になりますね、スミレ様の仰りようだと」

「どうしてそうなるの!」

「ご自身の発言を思い出していただければ多少はご理解が進むかと。

 あと、御父君にも同じ発言を伝えていただければ、直接森園の当主様が薫陶をたれてくれるかと」

 これ以上相手をするのも馬鹿馬鹿しいので自分で確かめろと言ってるのだ。

 それこそ、貴族なら察しろという話である。



 スミレがそれを理解したかどうかは分からない。

 だが、血相を変えてトモルを睨みつけるや、「ふん!」と言って去っていく。

「おぼえておきなさい!

 後悔させてさしあげますわ!」

 捨て台詞を残して。



 今更何を言ってんだと思った。

 立ち去っていくスミレの背中を見てそう思う。

 もしかしたら、今この瞬間からスミレはトモルとの喧嘩が始まったと思ってるのだろうかと。

(バカか)

 度し難い認識だった。

 とっくに喧嘩は、いや、戦争は始まってるというのに。



(認識が甘い、甘すぎる)

 トモルからすれば、森園家でスミレを叩きのめしたその日から、既に戦争は始まってるのだ。

 だからこそ、出来る範囲でではあるが頑張ってきた。

 何時どんな攻撃が来ても良いように。

 最低でも自分だけは生き残れるように。

 だが、スミレはそうではなかったようである。



(平和ボケって奴なのかな)

 だとすれば哀れだと思った。

 事態を正しく認識してないのだから。

 だが、それならそれで構わない。



 トモルもはっきりと状態がこうであると認識出来る。

 今まではトモルが一人そう考えてるだけであったのだが。

 これで互いにその意志アリという事になった。



(頑張って叩き潰しましょう)

 最低でも森園家だけでも。

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