66回目 冒険者強化、あるいは手下の育成開始 2
トモルの手引きで行ったモンスター退治。
その最初の一週間が終わる。
この時点で冒険者達が得た経験値は一人あたり6000点になっていた。
大半の者にとってありえないほどの増加率である。
来週も同じ調子でこなしていければ、レベル1の者はレベル2になれるだろう。
とはいえ、さすがにそこまでレベルの低い者はいない。
生きてるうちになんだかんだで経験値を得てレベルは上がる。
大半のものがレベル3は超えている。
なので即座にレベルが上がるという事はない。
だが、それでも同じように5週間ほど活動すればレベルが上がる事になる。
普通に活動してたらありえない速度だ。
それを見て冒険者達は今後もトモルと共に活動していく事を本気で考えていった。
休みを間に挟んで翌週も同じように活動していく。
得られる経験値は同じであったが、二週間で、約半月で合計1万2000点の経験値になる。
それは冒険者達にとってとてつもなく大きな成果になった。
一気にこれだけの経験値を得る事が出来たとあって、彼等の意欲は非常に高まった。
だが、それは続く次の週で一気にしぼむ事にもなった。
トモルには学校がある。
そのため、一ヶ月にせいぜい二週間しかダンジョンにこれない。
今までもそうだったので、これについては冒険者達も文句はない。
いないなら、その間は冒険者達だけでダンジョンに向かうだけである。
それも今まで通りであった。
なのだが、その翌週から冒険者達は自分達がいかに恵まれていたのかを実感する。
ダンジョンに潜るのは同じなのだが、トモルがいた時のようにモンスターを倒せない。
かといって彼等の能力が落ちたわけではない。
トモルがいない時の活動と同じ程度に戻っただけだ。
しかし、それで稼げる経験値を見て愕然とする。
人数がいるのでそれなりに戦闘は出来る。
金の方も食っていくには困らない程度には稼げる。
経験値だって、そこそこに手に入る。
なのだが、トモルがいる時と比べればどうしても劣る。
金も経験値も4割以下になってしまう。
さすがに3割を切る事はないが、それでも相当な差が出ている。
「こりゃあ、とんでもねえな」
トモルの支援の有無をあらためて感じて冒険者達は考える。
「あいつについていけばこの調子でいけるんだろ」
「けど、命令されるのはな」
「そんな無茶な事は言わないと思うけど」
「いや、何があるのか分からん」
そんな話が飛び交う。
得る物は大きいが代償に提供するものも大きい。
一応、命令については仕事に関わる部分だけとは聞いているのだが。
それが何処まで守られるのかが分からない。
冒険者達の意見は二つに分かれた。
試用期間の間だけトモルと一緒に行動して、そこで分かれるという者達。
そして、危険はあるが、トモルに従ってみようという者達。
どちらの判断も正しく、間違ってるとは言えない。
安全をとるか、可能性をとるかである。
だが、方針はこれである程度決まった。
また、試用期間が終わるまでは一緒である。
それまではこの場にいる者達で行動していく事になる。
それでトモルが納得するかは分からないが、そう伝えるつもりであった。
「まあ、今度来るまでは俺らだけで頑張らなくちゃならんがな」
先の事の為にも、まずは目の前の生活をどうにかしていかなくてはならない。
冒険者達はトモルがいない間の食い扶持稼ぎのために、明日もダンジョンへと向かう。




