63回目 冒険者への提案という強要による従属化は下僕への強要になるのだろうか?
その日。
ダンジョンにやってきたトモルは、いつもと違った。
まあ、ダンジョン内での行動はいつも通りだった。
いつも通りに冒険者達を置いて前に前にと進んでいった。
その姿を追いかけるので、同行者は大変な思いをした。
しかし、ダンジョンを出てからは少し違った。
ダンジョンから出て少し歩き、これから核を売却しにいこうという途中である。
そこで立ち止まったトモルは、同行者に声をかける。
「なあ」
「ん?」
「どうした?」
いぶかしげに応じる冒険者達。
そんな彼らに、
「ちょっと話があるんだが」
そう言って考えてる事を伝えていく。
「俺についてくるってんなら、レベルも上げてみるか?」
それを聞いて冒険者達は驚いた。
傍若無人に動き、自分達を顧みなかったトモルがだ。
何故か今日は魅力的な提案をしてくる。
悪いものでも食べたのかとすら思った。
「どういうつもりだ?」
とりあえず核の売却をすまし、適当な食堂に入る。
そこで冒険者達はあらためてトモルに尋ねた。
「今までそんな事全然言ってもこなかったくせに」
「そりゃそうだ。
さっきまで考えてもいなかったんだから」
「おいおい……」
冒険者達は呆れた。
今まで全く自分達の事を考えてなかったのかと。
だが、それでもトモルの話に耳を向けていく。
「けど、これからの事を考えるとね。
そっちがそれで良ければ、俺は皆のレベル上げに協力するつもりではいるけど」
たちまち冒険者達が顔を見合わせていく。
ざわめきが上がり、誰もが戸惑っていく。
それらは隣の者達とトモルの真意をはかろうとしてるものだった。
無意味な行動である。
目の前にいる本人に聞かねば分からぬ事なのだから。
それでも隣にいる仲間とあれこれ話しあってしまうのは、人としての性なのだろう。
一通りそうして話し合ってから、代表するように一人が尋ねる。
「それで、あんたは何を求めてるんだ?」
もっともな質問である。
対するトモルは、短く答える。
「あんたらに配下になってもらいたい」
「配下?」
戸惑った表情と声が出てくる。
「そうだ、配下だ。
仲間とかそんなもんじゃない。
俺が上で、あんたらが下で。
そんな関係でやっていく事になる」
「それが、俺らのレベル上げに付き合う条件か?」
「そうだ。
俺の指示や命令に従うなら、レベルを上げる。
当たり前だろ。
でなけりゃなんであんたらの成長に付き合う理由がない。
俺はそこまでお人好しじゃないよ」
はっきりとトモルは告げておいた。
隠し事をせずに堂々と。
下手な駆け引きはせずに、求めるところを正直に伝えた。
都合の悪いことは黙ってるという、情報を隠蔽する嘘も使わない。
嘘はこういうときに決して良い結果をもたらさないと思うからだ。
最終的にそれは敵を増やす事になる。
騙されて気分が良くなる人間はまずいない。
それが後々悪い結果を出すこともある。
だから正直に考えを伝えた。
それによって相手に断る可能性も覚悟して。
「それで、あんたの配下になるとして。
あんたは俺達にどんな命令を出すつもりなんだ?」
幸い、まだ話は続いている。
相手も詳しい条件がないと判断出来ないのだろう。
だからトモルは要求を伝えていく。
「俺の敵と戦ってもらう。
そういう状況になったらな」
「敵がいるのか?」
「分からない。
いるかもしれないし、いないかもしれない。
今はいないけど、この先出てくるかもしれない。
おそらく敵は一杯出てくるだろうとは思ってるけど」
「それと戦えと?」
「そうだ」
トモルは頷いた。
「だからレベルを上げてもらいたい。
その為に出来る事はするつもりだ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙が訪れた。
誰もがトモルの言葉に考えていく。
確かにレベルを上げる事が出来ればありがたい。
ただ、命令に従う、しかも敵と戦うというので躊躇いもした。
口ぶりからすれば、本当に戦闘になる可能性もありそうに思える。
その相手の規模がどの程度なのか、どのくらいの強さなのかも分からない。
ただ、戦闘という事だけでもかなり剣呑な話である。
そんな事にこれから突っ込む事になるのかと思うと気が引ける。
「その話をここで断ったらどうする?」
「別に。
レベル上げの協力はしない。
それだけだ。
あんたらが今まで通りにモンスターの死体をあさりたいなら好きにすればいい」
「そりゃあありがたいが……」
「ただ、俺は別の連中に話を持ちかけるだけだ。
そうなったら、一緒に来た連中に優先的に死骸を提供する。
核もな。
その残りをあんたらがどうするかは自由だが」
「なるほど……」
そりゃそうなるだろうなと冒険者は思った。
わざわざ配下になれとまで言ってきてるのだ。
同じ事を別の誰かに持ちかけるだろうし、誘いに乗った奴を優先もするだろう。
「選択肢はなさそうだな」
「そんな事はない。
あんたらはこれからも冒険者を続けていけばいい。
俺はそれを妨げる気はない。
敵に回らない限りな。
そして、俺は俺に従う者を優先する。
それだけだ」
極めてまっとうな言い分である。
冒険者達にとっても不利になってるわけではない。
ただ、今後は今までほど簡単に核が採れなくなるだけで。
ただそれだけだ。
今の冒険者達ならば、多少手こずるだろうし、収入も今までより減るだろうが、食ってはいける。
それだけの強さは身につけてきている。
無理してトモルに従う必要はない。
その上でだ。
トモルの出してきてる条件は、それほど悪いものではない。
それもまた確かだ。
決して悪い話ではない。
申し出を断ったとしても、それほど不利という事は無い。
だが、従った場合はどうなるのか?
そこも確かめていかねばならない。
「それじゃ、仮にあんたに従った場合。
そうしながら途中で逃げたりした場合はどうする?」
一番肝心になる部分について聞いていく。
配下になったあとの処遇について。
雇用条件が分からなければ、承諾も何もない。
誤字脱字の報告ありがとうございます。
メッセージで送ってもらった分は修正したはず。




