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6回目 予想通りだが腹が立つ

「まあ、子供の事ですし」

「これもしょうがないという事で」

 トモルとタケジの親は、そう言って話を終えようとした。



 呼び出しというか、面倒が起こったのでやってきた。

 神社での出来事は既に聞いている。

 その上で今後どうするかという話になっていった。

 その結論がこれである。



「まあ、今回はうちのガキも悪かったようだし、あまり強くも言えんわな」

「こちらも少々手荒な事をしてしまったようですしね」

 そこに至る事情と、そこからどうなったかの顛末。

 すべての結果を聞いて、そこで折り合いをつけようという事になった。



 トモルのやった事は、子供にしてはかなりのものだ。

 普通であればそこまでやった事を叱り飛ばすべきだろう。

 多少のオシオキもありえる。



 だが、経緯が経緯なので、さすがにトモルを非難は出来なかった。

 事の原因はタケジにあるのだから。

 タケジの親も、これでは強くは出られない。



 そういう結論になったのも、子供達の証言があったからである。

 いつもだったら、タケジ有利な証言ばかりになる。

 それをもとにタケジの親も強く出ていた。

 タケジがどんな乱暴狼藉を働こうともだ。

 何せ、乱暴狼藉に至る経緯は、仕方のない理由があった事になってたのだから。

 それだけタケジに有利になるような話ばかりが今までは出ていた。



 それがタケジによる威圧の結果であるのは誰もが察していた。

 しかし、当事者である子供達が証言するのだからどうしようもない。

 タケジは悪くない、仕方ないと。

 タケジの親もそれを利用していた。

 利用して、非が向かってこないようにしていた。



 だが、今回は違う。

 どの子供達も正直に起こった事を話している。

 タケジから絡み、掴みかかったと。

 トモルはその反撃をしただけだと。

 そのために今までのように強く出られない。



 結果だけ見れば今回は、タケジが一方的にやられた被害者に見えるにもかかわらずだ。

 何せ、関節を極められて頭から地面に叩きつけられたのだ。

 気絶で済んでるから良いが、下手したら障害になりかねない。

 それでも、事情を考えれば、原因を作ったタケジの非を無視は出来ない。



(下手踏みやがって)

 タケジの親はそう考えていた。

 我が子のしでかした事については、正直なところ何とも思ってない。

 どんな悪さをしようと、それを覆すような状況を作れればそれで良い。

 むしろ、それを徹底的に利用する。



 タケジもそうだが、その親もこういった考えでやってきていた。

 それなりにアクドく生きてきた。

 だから、それが通じない今回の出来事は痛恨事であった。

 否応なく妥協を強いられる。

 それが気にくわなかった。



 そこに、タケジがやらかしてきた事への、親としての反省などはない。

 あくまで利害についての打算しかなかった。

 子供も子供だが、親も親である。

 子は親を映す鏡というところだろう。

「お互い様ってことで」

 とりあえずそこに持ち込む事にしていく。

 原因を作ったタケジの事を棚にあげて。

 なおかつ、これまでタケジがしでかしてきた事をうやむやにして。

 どうにか今回の件における非を無効に持ち込もうとしていた。



「何言ってるんだ」

 しかし、同席していたトモルが口を出す。



「タケジが無茶や無理を言ってるのが悪いんだろうが。

 人の都合も考えないで、自分勝手なこと言って。

 今日だって自分勝手な事言って、俺に掴みかかってきたじゃないか!」

 絶対に外せない、外してはいけない部分だった。



 原因を作ったのも、因縁をふっかけてきたのも。

 それを理由に喧嘩を仕掛けてきたのも、全部タケジである。

 喧嘩両成敗なんて馬鹿な事にはしない。

 問題があるのは一方的にタケジの方であり、トモルはそれに反撃しただけである。



「タケジがやらかしたからこんな事になったんだろ。

 なんで俺が悪い事になる!」

 正論である。

 何一つ間違ってない。

 だがそれを、

「まあ、子供だからわからんだろうがな」

と言ってタケジの親は抑え込もうとしてきた。

 嘘くさいほどの、実際演技であるが、優しい声と顔をつくって。



「嘘吐くな」

 あっさりとトモルは否定した。

「子供だ大人だなんて言って誤魔化すな。

 悪いのはお前のガキだ。

 タケジだ」

 そう言って庄屋を指す。



「そいつが馬鹿やったから、俺はやり返しただけだ」

「だから、そうやってやり返せば留まる事なく続くだろ。

 そこは大人になってだな……」

「やり返さずに叩きのめされろってのか」

 丸め込もうとしてきた庄屋に反発する。



「上等だ。

 あんたがそういう一方的に暴力振るうのを認めるような奴だって、よーく分かったよ」

 行儀が悪いのは分かってるが、相手の言ってる途中で声をかぶせた。

 悪さを肯定するような奴に、礼儀正しく振る舞う必要は無い。

 ルールを破ってるのは相手なのだから、ルールを守って対応するのは筋違いである。



「今度からタケジが何かやるとかやらないとか関係ない。

 一方的にやられてろってんなら、俺も一方的にタケジを叩きのめす」

 そう宣言してタケジとその親をにらみつけた。

 タケジは何も言えずに黙っている。

 親の方はその後も何か言い返してきたが、「黙れ」「だから?」「それで?」とだけトモルは言い返した。

 話を聞く価値もないと言わんばかりに。



「言いたい事は分かるがな」

 家に帰ってから、父に呼ばれてトモルは書斎で向かい合っていた。

 ありきたりなお説教である。

「正論だけじゃ上手くいかない事もある」とか、

「相手の事も考えて折り合いをつけて」とか、

「やり込めれば遺恨も残る」とか、

「皆で上手く調整をしながらやってるんだから」とか。

 どこかで聞いたような事のオンパレードであった。



 新しい事は何もない。

 前世でもよく聞いた言葉ばかりだ。

 良くも悪くも昔ながらの、ある意味洗練された言葉の羅列であった。

 言いたい事は分かる。

 だが、分かるからと言って、それが最善だと判断するわけでもない。



(こりゃ駄目だな)

 父親の言葉にトモルはそう思った。

(まあ、この年齢じゃ無理もないか)

 父親はトモルよりも年下だ。

 前世の分の年齢も合わせれば、トモルの方が人生経験は長い。

 だから分かってしまうのだ。

(こういう考えになっちゃうんだろうな)

 父親が様々な状況や状態を考えて言ってると。


 無理もない。

 曲がりなりにも領主なのだ。

 全体の事を考えねばならない。

 トモルとてそれくらいは分かる。

 父の言い分が間違いだらけというわけではないのは。



 ただ、それだけが全てではないとも思ってる。

(押し切れば押し倒せるんだけどね)

 無理を通せば道理が引っ込む。

 そういうやり方もあるのだ。

 今回、トモルがやったのはそれだ。

 力で相手をねじ伏せる、叩きのめす。

 そして、無理や無茶を通す。

 要望を飲ませる。



 あまりよいやり方はではないが、それが必要で有効な場面もある。

 今回はその絶好の機会だった。

 だから無茶や無理を通した。

 タケジに。

 タケジの親に。



 下手になあなあで済ませて、後に面倒を残すよりはと考えて。

 実際、すべての問題を解決するためには、こうするしかない時もある。

 むしろ、これが最善の手段になる事も。

 使わずに済むならその方がよい方法ではあるが



 とりあえず、父親はそういう方法は使いたくないようだった。

 それをトモルは察した。

(なら、こっちはこっちでやってくか)

 やむなくそういう結論に至っていく。

 父の話を聞きながら、トモルは今後の身の振り方について考えていった。



 ただ、このほどの件で訓練所への出入りが禁止されてしまった。

 相手に技を使って怪我を負わせたのが問題になってしまった。

「こればかりはね」

と兵士達からも苦い顔をされてしまう。



 事情が事情なので彼等も特にあれこれとは言ってこない。

 技を一般人に使ったことについては。

 危険な技なので無闇に使うことは忌避される。

 禁忌とまでいかなくても、やはり控えるべき事と考えられている。

 それが戦闘技術を持つ者の不文律となっている。

 相手と状況次第ではあるが。



(正当防衛以外は認めないってのと同じなのかな。

 ばかばかしい)

 相手を傷つけないよう配慮して、といったところなのだろう。

 では戦闘訓練を受けた者は、襲われたらサンドバックになるのか、という話である。



 タケジのように横暴に振る舞うならともかくだ。

 横暴をふるってきた奴への反撃の、何が悪いのか?

 理解に苦しんでしまう。

(まあ、それならそれで)

 かなり危険であるが、やりようはある。



 いずれはやろうと考えていた事でもある

 それを、早くも実行する事になりそうだった。


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