58回目 ハイエナのように後ろをついていけば良いわけではない 2
後について核を回収する者達も楽ではない。
トモルは回収する者達の事など全く気にも留めない。
平気で置き去りにしていく。
彼等を仲間にしてるわけでも何でもないから当たり前だ。
後について核を回収するのは認めてるだけである。
回収してる者達もトモルの庇護を求めてるわけではない。
そうしてくれればありがたいが、そんな事まで期待は出来なかった。
彼等とて、自分の都合で楽して儲けようとしてるのだから。
これ以上を求めるわけにはいかなかった。
実際、トモルの後についていって核を回収するのは結構な儲けになった。
トモルが一回ダンジョンに入れば、かなりの数のモンスターを倒していく。
それらを全て巡って核を回収すれば、一日の稼ぎとしては充分過ぎるほどになる。
今も数十匹の巨大バッタが倒れている。
これらの核を全て売り飛ばせば、銀貨10枚くらいにはなるはずだ。
参考までに、銀貨1枚は日本円でおおよそ1万円ほどになる。
これだけの稼ぎが、トモルの後を追えば簡単に手に入る。
それも、一日の成果としてではない。
一日に何度もある稼ぎの一つでこれだ。
無理してでもついていく価値があるのはこのためだった。
だが、回収作業も安全とは言えない。
中には討ち漏らしたものもある。
倒れてる巨大バッタの中には、まだ動きを止めてないものもいる。
それをまず確認して止めを刺していく。
この時、多少なりとも総合レベルの方の経験値を手に入れる事も出来た。
なので、止めをさすのは全員の持ち回りにしていた。
楽して経験値が手に入る絶好の機会だからだ。
なのだが、まれにほとんど無傷のまま残ってるモンスターもいる。
その為、気が抜けない作業にもなっていた。
それに、回収しながら追跡するのも大変である。
トモルは瞬時にモンスターを殲滅するから良いが。
解体しての回収作業はなかなかに手間がかかってしまう。
今現在、解体作業をしてるのは15人。
これらが一斉にとりかかっても、なかなか簡単にはいかない。
倒れてるモンスターを見つけるのにまず時間がかかる。
それらににナイフを突き刺して核を切り取るという手間もかかる。
今回の巨大バッタの場合、1人あたり3匹から4匹が作業割り当てになる。
たったそれだけと言える数ではあるが、それでも時間はどうしてもかかる。
トモルが戦闘にかけてる時間に比べれば、どうしても長引いてしまう。
このせいで、トモルとの距離がどんどん開いていく事になる。
なので、作業が終わって大八車に物を乗せるとすぐに走りだすことになる。
そうでなければ間に合わない。
道しるべの旗を見つけ、それを回収しながら追いかける。
そうして小型のモンスターがたくさん倒れてる所に出くわす。
確かめるまでもなく、トモルがやったものだ。
そこで核の回収をして、更に次へ。
途中、待機していたトモルの追跡をしていた者と合流をする。
トモルの移動は速く、彼等が持ってる旗だけでは足りなくなる事があるのだ。
その為、時折その場で待機して、回収されてくる旗を待つ事がある。
これが最も危険な状態だった。
回収してる者達が来るまで、ほとんどの場合一人で待つ事になる。
モンスターが襲ってきたらそれで終わりだ。
なのでトモルのすぐ後ろについていく者達は危険にさらされる。
旗を回収したらしたで、先に進んでる者達を追わねばならない。
それも、やはり危険になる。
さすがに旗係を一人か二人で行かせるわけにはいかないので、護衛として何人かがそれにつきそう。
しかし、それもそれで危険である事にかわりはない。
ダンジョンの奥地でわずか数人程度で行動するのだ。
充分なレベルになってるならともかく、核の回収をしてる彼らはそうではない。
ろくなレベルにも至れず、装備もたいして揃ってない。
そんな彼らがモンスターに襲われれば、間違いなく壊滅してしまう。
それを覚悟で旗係は動いている。
少しでも生存の可能性を上げる為に。
最悪の場合でも、全滅は避けられるように。
少なくとも、一人で行動するよりは複数でいた方が良い。
全員は無理でも、誰かが生き残る可能性が高いのだから。
とにもかくにも生き延びねばならない。
回収した旗を先頭を進んでる者達に渡さねばならない。
でなければ、後続の者達が道に迷い、壊滅する可能性があるからだ。
何にしてもこの場では決して気が抜けない。
生きて帰還して稼ぎを手に入れるためには、どうしても命がけにならねばならなかった。
戦闘はしなくて良いかもしれない。
しかし、危険地帯に踏み込まねばならない彼等は決して安全ではないのだ。




