55回目 ダンジョン前の町で出会った者達 2
経験値が入らなければレベルアップはない。
戦闘だけが経験値を手に入れる方法ではないけども。
ダンジョンに入って、様々な行動をしてれば、それで経験値も手に入る。
日常生活と同じで。
しかし、モンスターの戦闘ほど稼げはしない。
ダンジョン内を歩き回るので、探索や探知などの技術レベルも上がったりする。
しかし、基本的な能力値の上がる総合レベルの方はほぼ横ばいだ。
楽して稼げる代償と言えるが、これを問題視する者達もいた。
「やっぱり、自分達の手でモンスターを倒さないと駄目だ」
まともな者達はそういう結論に到達していく。
自分達が強くならなければ、結局稼げなくなるのだ。
だから、あらためて自分達でモンスターを倒しにいこうという者達も出てきていた。
それでも何人かは引き続きトモルについていった。
危険があっても経験値が手に入らなくても、それでもやむなくついていく者はいる。
余程の怠け者か、危機感をあまり抱かない性質なのか。
それか、それでも構わないというほど切羽詰まってるのか。
共通するのは、他に道がない者達がほとんどだったという事である。
トモルの所にやってくるのは、どうしてもそういった者達になりがちだった。
冒険者稼業の中で、体の一部を失ってしまった者。
貧民出身者で装備をまともに揃えられない者。
やむなき事情で、表立って行動出来ない者。
そういった者達が、トモルの所へとやってきた。
モンスターとの戦闘もままならず、さりとて他に稼げる道もない。
そういった者達が、トモルの後ろについてまわっていった。
危険を承知の上で。
彼等にもそれなりの損害は出ていった。
死んだ者も数知れずである。
だが、それでも今後も生きていく為に必死になってついていった。
そんな者達だから、自然と連帯行動をとるようになる。
助け合わなければ生き残れないからだ。
体の一部を失った者達は、自分達の経験を他の者達に伝え。
貧民や事情を抱えた者達はそんな彼等の智慧によって助けられ。
そして、体の動きがままならない彼等の代わりとなって働いていった。
その様子は冒険者の一行として理想的な姿と言えるものだった。
お互い足りない何かを補い合い、否応なく助け合いながらトモルについていった。
そうして生き残った者達が今もトモルに従っている。
それらがトモルに今も従ってついてきていた。
危険は大きいが、莫大なモンスターの核を手に入れる可能性があるのだ。
トモルの後を追っていくより他に道はない。
今のところ、他にこれより楽して稼げる手段はないのだ。
体を損なった者達は自分だけでは満足に戦闘も出来ない。
貧民達は装備を揃える為の金を稼がねばならない。
訳ありの者達は、共に行動出来る仲間が他では手に入らない。
そんなものだから、彼等は今も共に活動をしていた。
せざるえなかった。
また、理由はともあれ、それなりの人数が集まっている。
ここを抜けて他の所に移籍する理由もない。
そもそも、他の冒険者集団が受け入れるかどうかも分からない。
ならばここで頑張った方が良いと考えてもいた。
そんなわけでトモルに従う集団が出来上がっていった。
意図したものでは全く無かったが、こうしてトモルはダンジョンにおける手駒を手に入れつつあった。
本人にその自覚はほどんどないが。
ただ、最近は少しだけ考えが変わってきたのか、ダンジョンに入る前に彼等の所に寄るようにしている。
声をかけるためだ。
一生懸命頑張る彼等に多少は思い入れも出来ていたのもある。
この先どうなるかは分からないが、役に立つ事もあるかもしれないと思いもしていた。
(まあ、誰がどんな役に立つかわからないし)
そんな思惑も抱えつつ、トモルは顔なじみになりつつある面子と共にダンジョンへと向かっていった。
誤字脱字報告ありがたし。
報告のあった部分は修正済み。
また、感想もいただいてる。
これもあわせてこの場で感謝を。




