526回目 誰もやってくれないから、自分でニート生活を作ってるのだ 9
研究を重ねる日々。
その研究を手にして発展していくトモル領。
そこは既にトモルの前世の世界すら超えた発展を見せていた。
他の多くの国や地域が産業革命以前の段階にとどまってるのに。
宇宙開発は、既にこの世界の恒星系の惑星探査にまで進んでいた。
残念ながら人間が住める環境ではないので、他惑星への移住は不可能だが。
しかし、理論段階では既に恒星間宇宙飛行も進められている。
あとはそれを実現する技術を手に入れるだけになってきていた。
同時に魔術の方も研究が進んでいる。
こちらも霊魂や霊界のあり方が大分つかめてきた。
それらが存在する事は、既に確実視されている。
どのようなあり方なのかもだいぶ分かってきている。
そしてその二つが交差して、ある可能性を導き出している。
霊界への移住。
人々の霊界への転送。
これらが絵空事ではなく、実現可能な技術になりつつあった。
「これなら……」
ここにきてトモルは一つの可能性にたどり着く。
夢を叶えるための手段として。
「永遠に引きこもっていられる」
霊界への移住。
それによる、永遠のニート化。
トモルはそこに思い至った。
既にそれがあるのは分かってる。
永遠に存在し続けられる場所という事も。
そこに行く事が出来れば、永遠にニートでいられる。
「これか?
これなのか?」
ようやく見つけたかもしれない、理想の状態。
トモルは興奮をおぼえていった。
やり方は簡単だ。
幽体離脱の応用で出来る。
死んではいないが、死ぬに近い状態になる。
その状態で霊界の事はある程度把握している。
ただ、トモルが求めてるのは、死んであの世にいく事ではない。
それだと状態が不安定になる。
幽霊の状態になると、自分を保つ事が難しくなる。
霊魂は結構散逸しやすいのだ。
肉体があるからそれを阻止できる。
固形化された、密集した原子や分子の塊。
それは何かしら依り代になりうる。
これをどうにかして保ちたい。
そして、霊魂を散逸させずに済ませたい。
その為にも、肉体ごと霊魂化させていかねばならない。
この部分が難しい。
厳密に言えば、肉体も原子や分子で出来ている。
その集合体が肉体だ。
霊魂も原子や分子などの一種なので、作り替える事は出来る。
ただ、その方法がまだ完全には分かってない。
ここが解決出来れば、いわゆる霊界、つまり死後の世界に移動できる。
あとはそれをどうやってやるかだ。
ここで、科学と魔術の融合が行われる。
より物質寄りの研究を進める科学。
より霊魂寄りの研究を進める魔術。
この二つをすりあわせる事で、両者の境目を越える事が出来る。
トモルはそう考えていた。
そして様々な試行錯誤と実験。
その果てに、トモルは見つけた。
身体の組成を霊体的に変化させる方法を。
生きながらにして、霊界に移住する方法を。




