518回目 誰もやってくれないから、自分でニート生活を作ってるのだ
大軍で押し寄せたかつての敵。
その事についてトモルは心底どうでも良いと思っていた。
戦争を仕掛けてこなければかまわない。
下手に付き合ったりせず、知らんぷりが出来れば良い。
それだけで十分だった。
大事なのは自分の領地の発展。
その邪魔をしてこなければ、他がどうなろうと知った事ではなかった。
夢のニート生活、これが出来るならば。
極論すれば、ニート生活を保証してくれるなら、喜んで軍門に降る。
三食昼寝付き、娯楽を大量に用意してくれるなら。
自分の意思や自由を侵さないなら。
それが出来るなら、喜んで奴隷にでもなろうと考えてる。
それがそうもいかないから、わざわざ独立勢力を作ってるのだ。
でなければ、統治や発展の為に自ら動くなんて事は無い。
自堕落に、好き勝手に。
その為に経済基盤と、心身共に自由であらねばならない。
その為だけにひたすら頑張ってきた。
当初も目的や目標は違ったものだったかもしれないが。
今となってはどうでもいい。
「このまま女房といちゃつきながら過ごせれば……」
こぼれ落ちる本音が全てを語っている。
それを邪魔する全てが敵である。
目の前にいたそれが消えた。
当分は襲ってこない。
それだけで十分だった。
そこにいる誰かが苦しもうが知った事ではない。
(喧嘩なんか売ってくるなよ)
そんな事をしてくる奴が一番悪い。
かつての藤園にしても。
隣国にしても。
英雄王の国にしても。
面倒な事をしかけてきて、足を引っ張ろうとするのが悪い。
そんな事せず、互いに協力しあえれば良いのだが。
それが出来ないのが人間なのだろう。
そんな邪魔がなければ、もっと早く事を進められたかもしれない。
そう思うとやるせない。
今回も、軍を動かすために様々な物資を使った。
時間もとられた。
争いや妨害は全てを台無しにする。
発展を阻害する。
「誰だよ、闘争が発展を促すとか言ったのは」
争いは無駄を増やすだけ。
それをこの人生で本当に痛感した。
いや、今回だけではない。
前世においても同じだった。
無駄な争いによって手間も時間も浪費した。
それは何の益にもならない、本当に無駄でしかなかった。
そんなものをありがたがるのが不思議でしょうがない。
「平穏が一番だよ」
その中で技を競う。
ならば多少は競争に意味もあるかもしれない。
だが、一番良いのは、互いの智慧や経験を出し合う事だろう。
適切な対価と引き換えに。
それが出来ないから、この世界は争いに満ちている。
「悲惨なもんだ」
その一端を確実に担ってる分際で、トモルは悲しそうにほざいた。




