507回目 大陸統一国家との戦い
「ともかく、どうにかしないと」
ヒライワツミ王国からの使者はそう言う。
「どうにかなりませんかね?」
「どうにかって言われてもなあ……」
要請を受けてもトモルは困ってしまう。
話を聞くに。
集めた情報を見るに。
原因はトモルのモンスターの巣・ダンジョン破壊にあるのは確かだ。
しかし、だからといって泣きつかれても、という思いもある。
どうにかしたいのは分かるのだが。
さりとてトモルにも妙案があるわけではない。
「撃退するしかないだろうな」
どう考えてもそういう結論になる。
勝てないわけではない。
ヒライワツミ王国の国境には、防衛陣地が築かれている。
要塞と言っても良いものだ。
そこに立てこもって迎撃を続ければ勝てるだろう。
だが、相手の規模が規模だ。
何せ、大陸をほとんど制圧してる国である。
そんなものを相手にしたら、かなり面倒な事になる。
最終的には勝つだろう。
負ける要素がない。
ヒライワツミ王国も更に発展している。
人口も産業も以前に比べれば拡大している。
科学力も進歩している。
トモルのところほどではないが、ヒライワツミ王国にも科学はある。
トモルのところをまねて、研究所などを作っている。
学者を養成し、科学の発展に尽力している。
その成果は決して小さなものではない。
今は産業革命期を超えて次の段階まで進んでる。
そんな国なので、戦って負ける事は無い。
ただ、消耗が激しいので、可能な限り戦争を避けたいと考えていた。
勝ち負けの問題なのではない。
経費に見合わないのが問題なのだ。
やってもいいが、経費をどうにかおさえたい。
それがヒライワツミ王国の、そしてトモルの考えだ。
とはいえ、それが難しいのも分かってる。
相手は退くつもりがない。
膨大な数の軍勢で襲いかかろうとしている。
その数が脅威だった。
「面倒な事になったな」
「誰のせいですか」
呆れた調子で使者は言う。
トモルは苦笑をするしかない。
「言うようになったな」
「父の言いつけ通りにしてるだけです」
そう言って使者────タカヤスの息子はため息を吐いた。
既にタカヤスは引退をして政務を息子に任せている。
本人はのんびり楽隠居としゃれ込んでいた。
その息子達は、父親に劣らず才覚を発揮している。
今も王国の実権と実務を担い、ヒライワツミ王国を切り盛りしている。
いい加減、国王に実権も実務も返上したいそうなのだが。
「面倒だから、お前がやってくれ」と言われてるそうな。
そんなタカヤス親子の苦労に「ご苦労様」と思ってしまう。
もっともそんな事を言おうものなら、「誰のせいですか」と言われるが。
色々と利用してる手前、トモルも大きく言い返せない。
仕方なく笑うしかなかった。
ただ、言ってるタカヤス親子も本気で言ってるわけではない。
冗談の範囲で口にしてるだけだ。
そこが両者の節度になっている。
「まあ、なんとかしてみるよ」
トモルはそう言ってため息を吐く。
「こっちからも軍隊を出す。
それでどうにかしのごう」
「お願いします」
タカヤスの息子はそう言って頭を下げた。
これで勝てる、そう思いながら。




