504回目 ダンジョン潰しからはじまる動乱 3
トモルは今後の予想をヒライワツミ王国に伝えていた。
それを聞いたヒライワツミ王国は、即座に対応を始めた。
他の国への不干渉。
国境の封鎖。
中立という名の鎖国政策。
この準備に静かに取り組んでいった。
そもそもとして、ヒライワツミ王国に人口問題は存在しない。
獲得した巨大な領土があり、そこに人を割り振ったばかりである。
当面は食料や物資の不足に悩む必要は無い。
また、大陸の中では割と辺境なのも大きい。
大陸の中心地から見れば外れの方にある。
わざわざそこまで攻め込む物好きも少ない。
戦争には縁遠い場所にあった。
仮に攻め込まれたとしても、撃退するだけの力がある。
トモルは手を引いたが、十分に強力な武器を手にしている。
産業なども相応に発達している。
蒸気機関を当然のように使ってるのは、ヒライワツミ王国だけだ。
その強さは、かつての隣国との戦争で近隣にも伝わっている。
迂闊に手を出せない危険な国と思われてる。
そんな評判もあり、ヒライワツミ王国は中立を宣言する事が出来た。
それを犯す者を撃退できる実力がある。
他国が戦争を始める中。
ヒライワツミ王国は静観を続けた。
実際、特に他国と縁があるわけでもない。
戦争に参加する事も、物資を融通する必要もない。
第一、国内整備に忙しい。
戦争なぞしてる場合ではなかった。
そんなわけでヒライワツミ王国は国内の充実を進めていた。
新たに獲得した領地に社会基盤を設置。
各地の生活水準を上げていく。
産業革命期の水準を出る事はないが、その中で発展を遂げていく。
世界情勢が不穏な中で、唯一成長を続ける国になっていた。
戦争が長引くほど、他国との差は大きくなる。
目立った騒動もない。
戦争で誰かが死ぬ事もない。
教育も文化も医療も普及していく。
国内にモンスターの巣も少し残ってる。
ここに冒険者があつまり、失業問題もほとんどない。
とはいえ、冒険者の数そのものは落ち着いている。
モンスターの巣の数が限られてるので、そう多くの冒険者は必要ない。
それに、冒険者をやるくらいなら、空白地の開拓や開発に従事するというもの。
こんな状況なので、他国と逆に着実な成長を遂げていく。
それを聞いた者達が押し寄せるくらいに。
戦火にさいなまれる者達は、風の噂に聞くヒライワツミ王国を目指す。
戦争に巻き込まれず、豊かな実りを続けるという国を。
そこを目指して難民となる者達は、かすかな希望をそこに見いだしていた。
もちろん、ヒライワツミ王国がそれを受け入れるわけもない。
緩衝地帯である隣国に、それらの排除を命じていく。
絶対にこちらに人を入れるなと。
逆らう事が出来ない隣国は、押し寄せる難民を阻止する。
時に流血、そして多数の死者を出しながら。
こうして緩衝地帯の隣国と難民達の間で憎悪が生まれていく。
それがヒライワツミ王国周辺で発生する、ほぼ唯一の衝突だった。
BOOTHで小話とか置いてある
この下のリンクなどを参照のこと
クッションページ代わりのブログにとぶ




