496回目 夢の引きこもり生活へ 4
嘆いても始まらない。
無いなら無いでいったんは諦める。
まずは、求めるものが出てくる土台を作っていくしかない。
その為に必要なのは、豊かな生活である。
とにかく全体的に余裕がなければいけない。
娯楽を楽しむ客がいなければいけない。
でなければ、産業として成り立たない。
産業になるから、食っていけるから制作側になろうという者も増える。
金にならない事に人生をかける者はそう多くはない。
その為にも娯楽に時間と金を払う人が増えねばならない。
客がいなければ産業は成り立たない。
となれば、労働時間が短くても済むようにしなくてはならない。
生産性をあげねばならない。
でなければ遊ぶ時間が無くなる。
それでいて金も稼げなくてはいけない。
時間があっても金がなければ遊ぶ事もままならない。
労働時間が短くても、十分な金が手に入らなくてはならない。
生活費だけ稼いでるのでは駄目なのだ。
そんな状態を作っていかねばならない。
それは分かってるが、そう簡単にはいかない。
生産性は、更に科学を発展させれば達成出来そうではある。
しかし、それには時間がかかる。
もっと単純に、人口が増大すれば、それだけで経済規模は大きくなる。
しかし、人が生まれて育つにも、やはり時間がかかる。
何よりトモルはベビーブームの時のような混乱を起こしたくない。
一気に増えた子供の世話に全てが費やされてしまう。
生命の誕生は喜ばしいものにしても、ものには限度がある。
また、出生率も落ち着いてきている。
ベビーブームの反省と、生活の向上と豊かさによって。
子供が死ぬことなく育つようになっているのも大きい。
それなら、子供が死ぬのを見越して多めに生む必要もない。
あえて子供の数を減らし、一人当たりに費やせる時間や手間や愛情や金を増やしたい。
そう考える者が多くなっている。
この結果、夫婦一組に子供は3人ほどに落ち着いている。
なので、急激な人口増加の危機は去っている。
それが今度は、人口による経済規模の拡大に歯止めをかけていた。
社会的に見れば喜ばしい事だ。
だが、娯楽の発展を望むトモルからすると困ってしまう。
自分の領地の自治州の発展からしても。
人口は今少し欲しい。
無理なく拡大出来る範囲で。
まだまだ広大なモンスター領域の制圧もしたい。
その為に戦力が欲しい。
その戦力も、土台となる人口が多くないとどうしようもない。
無人の戦闘兵器が作れれば話は変わってくるが。
それが開発出来るまで、まだ何十年かかかる。
上手くいけばもっと早く登場するかもしれないが。
とにかく、求めたものを手に入れるには、今少し発展が必要だった。
それが成し遂げられるのは、おそらく数十年後。
「さすがに俺の生きてるうちは無理か?」
そう思うと泣きたくなる。




