491回目 本格的な隣国との戦争 6
さて、隣国だが。
こちらの悲惨さは言うまでもない。
その様子もあえて語っていこう。
ヒライワツミ王国とも関係が少しはあるのだから。
国土の多くを失った隣国達は、すぐに窮乏に苦しむ事になる。
何せ、国土は大幅に減少。
産業もそれにあわせて縮小。
そのくせ、失った国土にいた生き残りを回収せねばならない。
かつての人口の多くは失われたが、残った領土で養うには多すぎる人数をだ。
何もかもが足りなくなるのは当然。
その為、隣国は国内で様々な争いが生まれる事になる。
残った数少ない物資。
あるいは土地。
その奪い合いが始まる。
それを取り締まりはするが、決して解決する事は無い。
何もかもが足りないのだから。
根本的な原因が解消されない限り、問題が無くなるわけが無い。
しかもヒライワツミ王国はあらゆる接触を拒否。
交渉など出来ない。
当然そこには交易も含まれる。
せめて食い物だけでも輸入できれば良いのだが、それも出来ない。
隣国は一気に貧困国となっていた。
これを見て、隣国人も動き出す。
ある者は、ヒライワツミ王国に潜入。
空き地を見つけて住み込もうとする。
そこを耕して、食い扶持を得るために。
あるいは、工房を建てて、何かを作り出したり。
そうして食い扶持を得ようとした。
しかし、科学と魔術の警戒をしいてるヒライワツミ王国である。
そういった者はすぐに発見、捕らえていく。
そして、隣国に送り返す。
処刑して殺すなんてしない。
そんな事をしたら、隣国の負担を減らす事になる。
少しでも騒動の種を残す。
その為に可能な限り生かして捕らえ、隣国に送り返す。
また、そうした捕獲も時期を見て行う。
例えば、農作物の収穫間近の時期などに。
自分たちの作った成果。
それを根こそぎ奪っていく。
やっていた事が全て徒労だと分からせる。
そうして隣国民は、費やした時間と労力を全て奪われていく。
隣国はこうして痩せ衰えていく。
国内では絶えず暴動が起こり、統治どころではない。
侵略を受けずとも、絶えず滅亡の危機にさらされ続けていく。
それでもヒライワツミ王国は、弱小化した隣国を直接滅ぼそうとはしなかった。
まだ隣国にもそれなりの価値があるからだ。
この大陸にある国は、ヒライワツミ王国と隣国だけではない。
隣国の向こう側には別の国がある。
それらと国境を直接接するのは都合が悪い。
間に緩衝地帯が欲しい。
隣国はその緩衝地帯・緩衝材に適している。
その役目があるから、殲滅はしない。
やろうと思えば出来るが、それによる損失の方が大きい。
かなり困窮してるので、もしかしたら自滅するかもしれない。
自然と衰退していって、消え去るかもしれない。
それなら仕方が無いが、存続してる間は利用価値がある。
だからヒライワツミ王国は隣国を攻め滅ばさない。
隣国の向こう側にある国からしても同じだ。
下手にヒライワツミ王国と事を構えたくない。
今回の戦争で大陸最大国になったのだ。
そんな国と国境を接したくない。
間に緩衝材があるなら、それを有効活用したい。
かくて周辺国の思惑によって、隣国達は生かされる事になる。
何の援助も与えられる事なく。
ヒライワツミ王国は支援する理由がない。
他国もわざわざ支援してヒライワツミ王国ににらまれたくない。
そんな思惑の狭間で、隣国達はすり減らされていく。
やがて餓死者を大量発生させ。
それによりどうにか養えるだけの人口に落ち着き。
そこでようやく隣国は平穏を取り戻し始めた。
多大なる犠牲を出して。




