487回目 本格的な隣国との戦争 2
国内の掃除を進めていく。
それと同時に行なった事がある。
隣国への工作だ。
潜入工作の対応も必要不可欠である
だが、守ってばかりでは分が悪い。
対抗するためには、同じように攻め込まなくてはならない。
でなければ、相手に何一つ損害を与えられない。
それを考えてトモルは、隣国に工作員を送り込んでいく。
それらを動かして、ヒライワツミ王国がやられた事をやり返していく。
各施設の破壊。
有力者の懐柔、取り込み。
暴動の発生。
情報網の構築。
思いつく限り様々な事をしていく。
そうして敵国を引っかき回す。
誰かが死ぬことはほとんどないが、生産力を下げていく。
戦わずして、敵の国力を低下させていく。
自分たちの兵士を使わず、隣国民を扇動して武力行使をしていく。
時間はかかるが、隣国は次第に疲弊していった。
こうした事への対処に追われるようになった。
必然的にヒライワツミ王国への工作も滞る。
国内対策に予算も人も割り振らねばならないのだ。
対外工作にかまけてもいられない。
こうしてヒライワツミ王国は、国内問題の対応に集中できるようになった。
何せ、敵の攻勢が止まったのだ。
増援がなければ、敵の殲滅も出来る。
停滞していく隣国勢力は、少しずつであるが壊滅していく。
社会の裏側で行われる戦争は、このように推移していった。
表立って行われない、目に付く事は無い。
だが、その激しさは軍勢の衝突に劣るものではない。
後方攪乱はあちこちで行われていく。
「しかし、凄まじいものだな」
実質的に国を切り盛りしてるタカヤスはうなる。
各方面から上がってくる報告。
それらを見て眉を寄せる。
「これほどあちこちにはびこってるとは」
国内各所に作られた敵の拠点。
それに協力する者達。
それらの摘発と、得られた情報など。
その多さに頭を抱える。
「これをどう見る?」
そういって呼び出したトモルに尋ねる。
諜報戦の進言をしていらい、トモルはことあるごとに呼び出されていた。
やり方を知ってるのがトモルだけなのだから仕方が無い。
高い能力と、この為に身につけた技術はこういう時にも活用されていた。
そのトモルからしても、
「凄まじいもんです」
と言うしかなかった。
かなり熾烈な事になるとは思っていた。
きれい事など言ってられる状況ではない。
ありとあらゆる事を行なっている。
おかげで、えげつない結果が各所から出てきている。
「予想通りと言えば予想通りですが。
ここまで拡大するとは思いませんでした」
トモルをしてそう言わしめてしまう。
「でも、仕方ありません。
やらなければ、我々がやられます」
「そうだな」
タカヤスもそれは分かっている。
暗躍する敵勢力の動きは激しい。
それを放置していたら、国が傾く。
そうさせるわけにはいかなかった。
「もう戦争だな、これは」
「その通りです」
タカヤスの言葉にトモルは頷く。
「戦争です、これは。
もう戦争は始まってるんです」




